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YouTubeで急増中の「ボイスコミック」とは? 若者の漫画需要拡大に新たな可能性

2020年02月04日 07:21  リアルサウンド

リアルサウンド

動画『【ボイスコミック】「キョーダイなんかじゃいられない!」第1話 《前編》』サムネイルより

 YouTubeで「ボイスコミック」というジャンルが今、ちょっとしたブームになっているのをご存じだろうか?


(参考:声優・花江夏樹、YouTubeで見せる素顔とは? 小野賢章&江口拓也参戦の【闇のゲーム】シリーズの面白さ


 「ボイスコミック」とは、マンガに声優が声をあてた動画コンテンツのこと。ラジオなどで聴ける朗読劇と違って「絵」がある一方、アニメとは異なり絵が活動しない。静止画のみだ。


 ボイスコミック自体は、とくだん、真新しい施策ではない。古くは2007年11月、集英社がかつて運営していたサイト「s-cast.net」で、“VOMIC”の名称で配信されており、同サイトでは、『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』の一部などが配信されていた。


 YouTube上で流行りだしたのは、2018年ごろ。小学館の『ちゃお』、集英社の『りぼん』『別冊マーガレット』といった大手出版社が刊行する少女雑誌のYouTubeチャンネルにコンテンツがアップされるようになり、広まっていった。取り扱われる作品の種類としては、会話劇中心のラブコメが圧倒的に多い。


 なぜ、ボイスコミックは少年漫画ではなく、少女漫画が多いのだろうか? また、どうしてラブコメの会話劇ばかりなのだろうか?


 その理由としては、バトル漫画、冒険漫画にありがちなマニアックな設定があまりないことが挙げられる。たとえば、『ちゃお』で連載されている『キョーダイなんかじゃいられない!』のボイスコミックは、仮に「第1話 《前編》」ではなく、「第1話 《後編》」から見たとしても、冒頭で「イケメン双子が私の兄弟!? 『キョーダイなんかじゃいられない!』第1話後編!」と説明してくれるので、なんとなく話の筋はわかったりするのだ。


 また、KADOKAWAの公式チャンネルで視聴できるWEB漫画『ヤンキー君と白杖ガール』のボイスコミックは、最恐ヤンキーと弱視の女子高生によるラブコメというほんの少し特殊なラブコメではあるものの、最初にしっかり2人の人物像を説明してくれる。それに、2人の会話とナレーションが中心であるため、話を追いかけやすい。


 さらに、ラブコメ劇であれば、ターゲットとなる若年層の女子にとって、イケボ声優の演技を気軽に楽しめるというメリットもあるだろう。仮に、ある特定の声優のファンであれば、YouTubeでその声優の動画を漁っているうちにボイスコミックの存在を知り、試しに視聴してみたら、その漫画作品のファンになる……ということも考えられそうだ。


 加えて、ほとんどの動画が数分程度でまとまっているのも魅力と言えよう。Twitterでバズる素人の漫画もそうだが、スマホデバイスでコンテンツをチェックすることが多い若年層にとって、電車の乗車時間や何かの待ち時間などに気軽に見られる「短くまとまったコンテンツ」はウケやすい。


 以上のことからラブコメの会話劇は、ボイスコミックと相性ばっちりの素材なのだ。中には数十万再生を記録する軽いバズを起こしている動画もあるので、気になる方は試しに目を通してみると良いだろう。


(こじへい)