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低収入で豊かに暮らす女性YouTuberが人気拡大中 世相を反映した現象か?

2020年02月03日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

動画サムネイルより

 人気YouTuberが、その活躍に見合った高収入を得ていることは、近年で広く知られるようになった。地上波でもトップYouTuber・ヒカキンの高級マンション住まいが度々取り上げられ、またヒカルやラファエルなど“金持ちYouTuber”の羽振りのいい動画にも注目が集まっている。


(参考:YouTuberの動画時間、なぜ年々長くなる? 人気チャンネル5組の動画より考察


 しかしそんな中で、YouTuberのなかには「低収入の暮らし」にフォーカスして人気を博しているクリエイターがいることをご存じだろうか。たとえ収入は少なくとも、日々の暮らしを工夫して豊かに生活しようとする姿勢があらわれた彼ら、彼女らの動画は、視聴者に生活のヒントを与え、不思議と元気や笑顔をもたらすものになっている。今回は、赤裸々に自身の生活をさらけ出して話題を呼んでいる女性YouTuberを三名ご紹介しよう。


・あきちゃんねる
 動画投稿本数は51本、チャンネル登録者数は1.8万人とまだ“大手”とは言えないものの、一番人気の動画「モーニングルーティン 平日/仕事のある日」が60万回再生を超えるなど、このジャンルで検索をかけたときに真っ先に目に入るのが「あきちゃんねる」だ。


 この動画では、「手取り12万円女子の朝」として、彼女自身のモーニングルーティンを紹介している。コメント欄を覗くと、サムネイルに書かれた「手取り12万円」という言葉に衝撃を受けている人も見受けられる。ただ、実際に動画を再生してみると、節約できるところは節約しつつ、必要なものにはきちんとお金をかける……と、彼女が自分の生活にきちんと向き合い、工夫していることがわかる。


 何より印象に残るのが、動画全体に漂うやさしい雰囲気だ。一歩間違えると苦労自慢にも見えてしまいかねない題材だが、のんびりとしたBGMや全編を通してシックな色合いの動画、シンプルながら丁寧な言葉遣いで綴られたテロップなど、全体的にやわらかな雰囲気の漂うこの動画は、どこか毒気を抜かれてしまうようなあたたかさを感じる。サムネイルに書かれた「手取り12万円」の言葉に面食らってしまった人にこそ、彼女の「やさしい」動画を見てもらいたい。


・よめ子
 次に紹介するのは夫の手取りが15万円だった、と赤裸々に夫婦の懐事情を明かしている女性YouTuber、よめ子。


 最も人気のある動画は「【夫手取り15万】1週間食費3500円肉盛りがっつり献立生活その1【料理下手が挑戦する】」というもの。この動画では「料理下手」を自称する彼女が料理上手になるための記録をかねて、自身の料理風景を撮影している。再生回数は213万回にも上る人気動画だ。


 動画コメントには、「この嫁についていけばなんとかなりそう」「貧困大学生の献立に良い」など、彼女の考える献立への称賛の声が多く見らる。動画に添えられたよめ子自身のコメントも「よめ子が料理をサボらないようにする監視」や「成長応援システムを導入していますので、いろんなコメントいただけるとうれしいです」といったどこかくすっと笑ってしまうようなゆるさにあふれている。ほっこりできる料理動画としても楽しめるため、未視聴の方には是非おすすめしたい。


・月収10万円女子もち
 最後に紹介するのはズバリ「月収10万円女子もち」だ。名前は今回紹介した三名のYouTuberの中で最もわかりやすく、かつ初めて目にした人が驚いてしまうようなインパクトを持っている。「手取り月収10万円&アラサー独身女」だという彼女は、節約料理や生活費の内訳、株運用やダイエットといった自身の暮らしについて紹介する様々な動画を投稿している。


 一番人気の動画は「食費1万5千円生活~初日~」で、動画の前半では冷蔵庫の中身や家にある食材を紹介しながら食費計算をし、動画の後半では実際のもちの節約食生活や買い出しの結果を記録している。企画のルールを決めたうえで「楽しく!ゆるく!生活」することを目的としているもちは、本人の「この動画は、いかに切り詰めて食費を抑えるか?ではありません」という言葉からも分かるように、限られた収入の中でいかに楽しく過ごすか、ということをモットーにしている。シンプルながら分かりやすい編集、嫌味のないテロップ、「ズボラ」を自称する彼女の性格に、親近感を覚える視聴者も多いだろう。楽しく視聴しながら生活に役立つ情報も得られる動画を多く投稿しているYouTuberだ。


 今回扱った動画には、日々生活するうえでの工夫が詰まっている。何かとお金に対して不安を持ってしまうことも多い現代では、節約を重ね、工夫して生活することはただ「貧しい」ことではなく、むしろ注目を集めるコンテンツになっているようだ。しかも、彼女たちの動画からはどこか余裕すら感じられる。嫌味がなく、それでいて赤裸々に自身の生活を発信した点が、彼女たちが人気を集める理由のひとつなのだろう。


 一方で、彼女たちの収入が少ないことを心配する声も動画のコメント欄には溢れている。私たちが彼女たちの参考になる、くすっと笑える、元気をもらえる動画を視聴することで、少しでも彼女たちの生活の足しになればこれほど視聴者とYouTuberの双方にとってプラスとなる関係はないだろう。


 YouTubeが一大メディアとなった現在、これからは今回紹介した女性YouTuberたちのような、世相を表したYouTubeチャンネルが増えていくかもしれない。ひとりひとりがメディアとなる時代、YouTubeに反映される「いま」に注目して動画を見てみるとこれまでとはまた違った楽しみ方ができそうだ。


(堀田愛美)