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Facebook四半期決算で明らかになった前年比26%増収 語られる「Oculus Quest」の可能性

2020年02月01日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

Oculus Quest公式サイトより

 アメリカ現地時間の1月29日、Facebookは2019年第4四半期の決算報告会を行なった。同社経営陣は財務上の数値だけではなく、各事業に対する見解も明らかにしており、同社が昨年リリースした“あの製品”に未来を見ていることがわかってきた。


(参考:Facebook、独自AIアシスタントを開発中と判明 Oculus製品にも実装か?


・クリスマスに「外れ値」を記録
 Facebookの2019年第4四半期決算報告に合わせて、同社会長兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は29日、自身のFacebookに同社の決算と今後の展望に関して投稿した。その投稿のなかでは、同社のVR/AR事業に言及した箇所がある。同氏はこの事業を「ソーシャル体験における聖杯」と表現し、その重要性を強調している。


 VR事業の決算内容に関しては、昨年のクリスマスに同社が運営するVRコンテンツストアOculus Storeにおいて、ほぼ500万ドル(約5億4,000万円)のコンテンツが購入された、とのこと。この数値は、同ストアの1日の売上としては異例とも言える「外れ値」であった。


 2019年第4四半期には、昨年リリースされたスタンドアロン型VRヘッドセットOculus Questがハンドトラッキングをサポートした。このことについて、ザッカーバーグ氏は「Oculus Questで実現できるとは誰も思っていなかった」と述べ、大きな前進であったという見解を逆説的に表現している。


 AR事業に関しては長期的なハードウェアとOSの開発に取り組んでいると述べ、ARグラス開発の継続を示唆した。さらにカメラエフェクトを自作できる開発環境「Spark AR」は世界でもっとも広く使われているARプラットフォームであり、毎月何億人ものユーザがエフェクトを作っていると語り、AR市場におけるFacebookの動向を伝えた。


・26%増の「その他」カテゴリーの収益源
 以上の決算報告会におけるザッカーバーグ氏以外の幹部については、VRニュース専門メディア『Upload VR』が30日、同社の最高財務責任者であるDavid Wehner氏の発言を報じた記事を公開した。


 同氏によると2019年第4四半期における同社の「その他の売上」カテゴリーは前年比26%増の3億4,600万ドル(約50億円)であり、このカテゴリーの収益源は『Oculus Quest』の販売によるものであった。もっとも、同社の売上の98%近くを占めるのはFacebookに表示するターゲット広告から得られる広告収入であり、「その他の売上」カテゴリー自体は同社の売上のほんのわずかを占めているに過ぎない。しかし、そんなわずかな収益源についてCFOが言及したこと自体、同社が『Oculus Quest』を決して軽視していないことを物語っている。


 『Upload VR』の記事は、Wehner氏の『Oculus Quest』に関する発言を2018年にリリースされた廉価なスタンドアロン型VRヘッドセット『Oculus Go』のそれと比較している。2018年第4四半期の決算報告会では、『Oculus Go』が同社の成長に「貢献」している、と述べていた。対して今回の決算報告会では、『Oculus Quest』は同社の成長を「駆動」していると表現している。この表現から、『Oculus Quest』の販売は『Oculus Go』のそれより好調なことがうかがえる。


 同メディアの記事は、『Oculus Go』ではマーケティングにコストがかさんだと報告されたのに対し、『Oculus Quest』ではマーケティングのコストに関して特に言及がなかった、とも伝えている。


・PC VRの行方
 Oculus Questが好調な一方で、一部のVR市場関係者は(PCベースで動作するVRヘッドセットである)「PC VR」市場は死んでしまうのではないか、と危惧している。Android製品専門ニュースメディア『android central』は30日、PC VRに対する危惧について考察した記事を公開した。その記事では、まず調査会社SuperDataが発表したPC VR市場の売上推移を引用している。2019年の同市場は、前年比で8%減少した。この数字だけ見れば、同市場が縮小する傾向にあると言えるかも知れない。しかし、同記事はこの数字だけからは結論できないとして、ゲームプラットフォーム『Steam』のVRヘッドセットのシェア推移を引用する。


 『Steam』が発表しているVRヘッドセットのシェア推移を調べると、VRゲームのコアなファンは数年前にリリースされた『Oculus Rift CV1』や『HTC Vive』から最近のPC VRヘッドセットである『Oculus Rift S』や『Valve Index』に買い替えたことが推測される。こうした推測から、PC VR市場からユーザが大量に離脱したわけではないことがわかる。


 PC VR市場が急速に衰微しているわけではないにしても、ゲーム環境を構築するのに多額の費用がいらないスタンドアロン型VRヘッドセット、なかでも『Oculus Quest』にこそVRの未来がある、とandroid centralの記事は見ている。こう述べたうえで、今後のPC VR市場はコアなVRファンが支えるよりニッチなものになるだろう、とまとめた。


 Facebookの決算報告の内容やメディアの考察を総合すると、VR市場のメインストリームはスタンドアロン型VRヘッドセット、とりわけ『Oculus Quest』になると言えそうだ。そして、次世代PSVRがリリースされるようなことがあれば、VR市場に新規ユーザが参入してくるかも知れない。


(吉本幸記)