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東京オリンピックに花を添える、「夢の島」の“デカすぎ注意”な植物たち

2020年02月01日 11:00  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

マイナスイオンたっぷり!?常夏の「夢の島」 撮影/渡邉智裕

「夢の島」といえば、昭和を生きたミドル世代には“埋め立て地”として記憶に残る。もとは飛行場の建設地として'39年から埋め立てが始まるも、戦争の影響により、'40年に開催予定だった「東京オリンピック」とともに中止となった歴史がある。

夢の島は常夏の島だった

 そして“幻のオリンピック”から80年、'20年東京五輪・パラリンピックのアーチェリー競技会場に選ばれた夢の島。その世界が注目する熱~い舞台から目と鼻の先にあるのが、ビニールハウスのようなドーム型の建物が特徴的な「夢の島熱帯植物館」だ。

 世間の懐が温かかったバブル時代に開館('88年)した、マリーナも近いことからデートスポットとしても人気を集めた熱帯植物館。そんなホットな時代を過ごしたミドル世代記者が、久々に熱帯植物館を直撃する!

 北風と海風が交差して一層寒さで身が凍えそうな日、ぶるぶると震えながらドーム内に入ると、あ、暖か~い♪ そして、うるうるの湿度が乾燥お肌に浸透していく気分。

「世界の熱帯・亜熱帯地方の植物を展示しているため、大温室は冬でも20度~25度を保つように管理しています。正確な湿度の調整は行っていませんが、定期的に水まきをしているため現地に近い気候を再現しています」

 とは、案内をしてくれた館長の高橋将さん。湿度計が示すのは65%。ムシムシするわけでもなく、上着を脱いでちょうど快適に感じるくらい。外気に比べれば極楽だ。

デカすぎる熱帯植物たち

 3つのドームに分けられた館内において、まずは「木生シダと水辺の景観」がテーマのAドームを行く。植物の緑がパッと広がる原生林に、室内とは思えない滝が映える。非日常空間に気分が高まる。

 順路をたどり、生い茂る草花の中でまず目についたのが、概念を覆す太すぎる竹。

「ゾウタケといって、主に東南アジアで栽培される世界でいちばん太い竹です。現地では直径30センチメートルになるものもあります」(高橋館長、以下同)

 地域環境に応じて、やたらと巨大化する傾向があるのも熱帯植物の特徴のひとつ。

 中央にヤシの木群が生えるBドームは、その名も「ヤシと人里の景観」。10階建てマンションに相当する、高さ約28メートルの天井に届くほどのヤシに、これ以上成長したらドームが……、と勝手に心配してしまう。またところどころでなるヤシの実がと心配が絶えないが、落ちるのは無人の場所なので大丈夫だそう。

 そして「小笠原の植物とオウギバショウ」のCドームでは、扇を広げたような「オウギバショウ」に圧倒される。

 東京都でありながら“秘境”とも呼ばれる小笠原諸島は、火山島であるため独自の進化を遂げた島。そこで育った貴重な植物の数々を堪能できるのも、同館ならでは。

 もちろん、世界各地で咲く色とりどりの花や、珍しい形態の植物も見逃せない。各植物には、名前とともに説明書きも添えられているので、ただ見るだけでなく背景も知ることができる。

「“見ごろの花”も毎月ご紹介しています。1~2月はキンカチャという、ツバキ科の黄色い大きな花が咲きます。またバレンタインデーがあるので、“夢の島カカオ&チョコレート展”(2月4日~24日)と題して、生産地の様子やチョコレートができるまでの工程を展示で紹介します。もちろん、植物館にもカカオの実がなっていますよ」

やがてはお花たちもレガシーに

 “チョコレート”と聞いたら、なんとな~くお腹がすいたな。ご安心あれ。植物館には、大きな窓の向こうに植物と水辺が広がる、南国リゾートのような「夢の島カフェ」も併設されているのだ。見て、学んで、嗅いで、食べて、温まる、お手軽南国旅行を満喫できる施設だった。

 これは来る7月の東京五輪・パラリンピック時には、世界中の観光客が植物館、並びに夢の島に押し寄せそう。

「残念ながらセキュリティーの問題から、開催時の約2か月間は休館になります(苦笑)。ただわれわれは植物に携わっていますから、これまでも大会に向けた、真夏に強い草花を植える『夏花プロジェクト』やアーチェリー体験会などのイベントも開催してきました。現在は調整中ですが、大会終了後には夢の島公園を花で彩り、五輪のレガシー(遺産)として遺していければと思っております」

「夢の祭典」に夢の島、熱帯植物館も花を添えそうだ。

■夢の島ならではのエコ施設 冬でも暖かいわけは「ゴミ」
 
真冬でも「夢の島熱帯植物館」が暖かいのは、同じく夢の島にある「新江東清掃工場」で、ゴミを焼却した際に生じる熱源を利用しているからだった。その仕組みを高橋将館長に聞く。「一般的に温室を暖めるのはボイラーですが、植物館は清掃工場でつくられる125度、5.5気圧の高温水を熱源として利用しています。通常、水は100度を超えると水蒸気となってしまいますが、こちらでは加工液体を使用しているので蒸発しないのです」
 そのままでは熱くなりすぎるため、植物館の熱交換機で適温にされた70℃の温水を、館内に張り巡らされた配管を通すことで暖房として館内を暖めているのだ。また、夏場に使用する冷房も、清掃工場の熱源を再利用している。「夏場は、温室の中が必要以上に高温になってしまうので、窓の開閉や冷房を使って調整します。冷房の場合は、吸収式冷凍機で清掃工場の高温水のエネルギーを取り出し、気化熱を利用して冷風をつくって館内に送っています」。環境にやさしい、とってもエコな植物館なのだ。

夢の島公園 夢の島熱帯植物館
東京都江東区夢の島2-1-2 ○9:30~17:00(入館は16:00まで)休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)12月29日~1月3日 料金:一般/250円 65歳以上/120円 中学生/100円 ※小学生以下、および都内在住・在学の中学生は無料 ほか詳細は http://www.yumenoshima.jp/

取材・文/山崎ますみ