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「バチがあたるで」神社境内に「さい銭箱」無断設置…法的に問題ないの?

2020年02月01日 10:22  弁護士ドットコム

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中国地方の由緒ある神社で、何者かによって、「さい銭箱」が無断設置されていることがわかった。


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弁護士ドットコムニュースが、ある参拝客に聞いたところ、1月中旬ごろ境内に、さい銭箱が設置されていたという。ただ、網が被せられて、さい銭できなくなっていた。



さい銭箱の横には、看板が置かれており、神社からの「お参りするみなさまに大変失礼です」「非常に迷惑している」という警告が書かれていたという。



「違和感がないので、看板がなければ、さい銭を入れてしまうと思う。知らない誰かにお金が使われると思うと、いい気分はしない」(別の参拝客)



SNSによると、さい銭箱は1月11日ごろにはすでに設置されていたようだ。「バチがあたるで」などのコメントもあがっている。



立て看板によると、神社側は警察に相談しており、期限を定めて撤去するとしているが、弁護士ドットコムニュースの取材には「メディアの取材は断っている」とした。



そもそも、さい銭箱の無断設置は、法的にどんな問題があるのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。



●原則として、さい銭箱の所有権しか撤去できない

「無断設置は法的に問題があります。



まず、神社の土地を不法占拠していることになります。さい銭箱に入った金銭を自分のものにしようという意図であれば、詐欺罪にあたる可能性もあります。



次に、神社が、無断で置かれたさい銭箱を撤去してよいのか、という点です。



無断でさい銭箱を置かれるというのは、迷惑千万なことではあるのですが、さい銭箱の所有権そのものは神社ではなく設置者にあります。



原則として、撤去や処分はさい銭箱の所有権を持つ設置者にしかできないので、神社が自由に撤去できるわけではありません」



●所有権を取得すれば撤去できる

「では、撤去する方法がないのかというと、方法はあります。



まず、『他人の置き去った物』(準遺失物)として、遺失物法の規定にしたがって、『公告』(掲示)します。



期間内に所有者が判明しない場合には、民法240条にしたがって、神社が所有権を取得したうえで撤去、廃棄処分する方法があります。これが一番たしかな方法でしょう。



または、立て看板などで、所有者が名乗り出ること、名乗り出る者がいなければ、撤去することを表示して、それでも誰も名乗り出ない場合には所有権が放棄されたものと考えて、民法239条に定める『無主物』として神社が所有権を取得したうえで、撤去、廃棄処分することも考えられます」




【取材協力弁護士】
村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、企業顧問業務、不動産問題、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。
事務所名:神戸シーサイド法律事務所
事務所URL:http://www.kobeseaside-lawoffice.com/