2020年02月01日 10:22 弁護士ドットコム
結婚が視野に入ってきた女性Aさん。しかし、後ろめたいことがあり、不安が募るようになってきたという。実は数百万円の借金があるものの、交際相手には打ち明けていないのだそうだ。
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借金といっても、散財したわけではなく、家庭の事情によるものだという。ただし、自身の収入だけでは完済が難しいという。
結婚前の自己破産も検討しているが、自己破産歴のある自分と結婚するとパートナーに迷惑がかかるのではないかと心配して、弁護士ドットコムに相談を寄せた。
結婚が視野に入ってきたとき、返しきれない額の借金をどのように扱うのが良いのだろうか。河野晃弁護士に聞いた。
借金を抱えた人と結婚したら、配偶者にも返済義務が発生するのだろうか。
「法的には、配偶者に返済義務はありません。ただ、借金のある人と結婚した共働きの家庭で、夫婦が協力して借金を返済していっていることはあります」
事情を打ち明けて、パートナーと力を合わせて返済するというのも1つの考え方だろう。一方で、配偶者には返済義務がないのだから、相談者のように返済が難しいなら自己破産という考え方もある。
「自己破産は選択肢の一つとして大いにあり得ます。その人それぞれの状況に応じてどういう選択肢を取るのが最適か、ということを一緒に考えて解決に導くのが弁護士の仕事だと思います」
仮に自己破産するとしても、「借りたものは返せ」という意見もあるだろう。この辺りをどう考えたら良いのか。
「まず私は、『借りたものはちゃんと返せ』という考え方を否定するつもりはありません。
その前提で敢えて答えると、破産という手続が法律として認められていて、その目的の一つとして、『債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る』ということが挙げられています。
債権者の目線で考えれば、借金を踏み倒されて腹立たしいという思いも分かります。一方で、返しきれない借金を一生抱えさせ続けることに果たしてどれだけの意味があるのか、という考えもあります。
破産手続きを取ったところで誰もが借金をチャラに出来る(免責を受けられる)というわけではありません。そのあたりのバランスをとった法律が破産法ですので、その手続きを取ること自体、何も悪いことをしているわけではないよね、と言いますかね…」
借金を苦に自殺したり、人生を棒にふったりする人もいる。免責になるかは裁判所が判断するのだから、制度の活用自体は悪いことではない。
では、仮に自己破産できるとして、パートナーへの影響はあるのだろうか。
「『パートナーにもたらす実害』と言われるとパートナーのいない私にとってはなかなか想像が難しいところですが…。
一般論として免責決定(裁判所から借金をチャラにしてもらう決定)を得られると、5~10年くらいはクレジットカードが作りにくくなったり、ローンが通りにくくなったりするといわれています。
仮に、カードを持っていないことを怪しまれた場合、『わたし、現金主義なの!!』で押し通すしかないでしょう」
ほかに自己破産したことを悟られる可能性はあるだろうか。
「実は破産をした場合、官報という国の機関誌に氏名や住所が記載されてしまいます。ですので、『100%バレません』とは言い難いところではあります。
ただ、この記事をご覧の方で官報を実際にご覧になった方がどれくらいいるでしょうか。おそらく、ほとんどいないと思います。官報はそれくらいマニアックなものです。
ですので、パートナーが無類の官報マニアであるといった特異なケースでない限り、バレるということは想定しにくいといえます」
【取材協力弁護士】
河野 晃(こうの・あきら)弁護士
兵庫県弁護士会所属。2010年弁護士登録。民事事件(中小企業法務・交通事故等)、家事事件(離婚・相続)、刑事事件など、多種多彩な業務を行う。趣味はゴルフ、野球など。日本一話しやすい弁護士を目指す。
事務所名:水田法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/hyogo/a_28201/l_137891/