就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の景気後退に巻き込まれ、厳しい就職活動を強いられた世代を指す。だが、彼らの受難は就活にとどまらない。2008年にリーマンショックが発生すると、世界的な不況のあおりを受け、日本では派遣社員の雇い止めが頻発。企業の倒産も相次いだ。
就職氷河期世代が経験してきた苦難の歴史について、当事者である筆者の経験も交えて振り返ってみたい。(文:ふじいりょう)
非正規の就職氷河期世代が多数失職
リーマンショックのあおりを受けた不況は、日本では08年11月に本格化した。当時、自動車・電機メーカーの派遣切りによって、40万人が失職するという試算も出されたほどだ。
実際に09年の『労働力調査』を紐解くと、非正規の職員・従業員は前年より39万人減少している。うち、31万人を占めるのは15~34歳。正社員になれなかった就職氷河期世代が、このタイミングで失職するケースが多かったことがうかがえる。同年7月には失業率が5.6%まで悪化した。
企業倒産も相次いだ。08年には1万5646件で、そのほとんどを中小企業が占める。影響は長引き、その後13年までは倒産件数が1万件を超えた。こうした業績の悪化により、苦労の末にようやく正社員の座を得たにも関わらず、失職した就職氷河期世代も多かっただろう。
企業が嫌がるのは「転職歴の多い」「経歴がバラバラ」「年齢が高い」
筆者が33歳だった10年3月、当時働いていた広告企画会社から会社都合での退職を強いられ、その後2年にわたって転職活動をした苦い経験がある。この期間に正社員と契約社員の求人を合わせて318社にエントリー、もしくは履歴書を送付したが、面接にこぎ着けたのは半数に満たない130社。内定に至った件数はゼロだった。
同年に刊行されたキャリアカウンセラー、蟹沢孝夫氏の『ブラック企業、世にはばかる』 (光文社新書)では、企業が嫌がる人材として「転職歴の多い人」「経歴がバラバラな人」「経歴はいいが年齢の高い人」などが挙げられている。
筆者は、飲食店バイト、通信会社の派遣社員、出版社、IT系ベンチャー、広告企画会社と渡り歩いており、見事なまでに経歴が"汚れ"ていた。まさに、前述の「転職歴が多い人」であり「経歴がバラバラな人」であったわけだ。
その後、副業だったライターを本業にしたため何とか食べることはできており、幸いにも同世代の中では恵まれている方と言えるだろう。
就職氷河期世代は、3年以内での離職率が高いというのも有名な話。不況の影響で賃金が抑えられたり、就職を強いられたブラック企業での過酷な労働などが原因として考えられるが、とりわけリーマンショックから11年の東日本大震災前後までの期間には、厳しい転職活動を強いられた人も多いだろう。
その後の景気の回復によって、新卒採用も転職採用も「売り手市場」になったのが現在だ。19年11月の失業率は2.2%。リーマンショック時と比較すると約3分の1にまで下がった。
だが、転職を繰り返した就職氷河期世代は「簡単な業務しか任されなかったため、スキルが身につかなかった」という声も多くある。政府は最近になってようやく就職氷河期世代の就業支援をはじめたが、本来職能を積むはずだった時間は戻ってこないのだ。