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三浦友和×広瀬アリスが語る、『AI崩壊』で感じた“いまの日本映画”の新たな可能性

2020年01月31日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(左から)三浦友和、広瀬アリス(撮影:伊藤惇(commono inc.))

 映画『AI崩壊』が1月31日に公開された。『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』の入江悠監督がAIをテーマにオリジナル脚本で挑む本作は、AIが人間の生活に欠かせない存在となった10年後の日本を舞台に、突如暴走してしまったAIが、人間の“生きる価値”を選別して殺戮を開始する模様を描いたサスペンスだ。


参考:広瀬アリスが語る、女優としてのスタンス 「イメージを崩して、壊して、作り上げての繰り返し」


 今回リアルサウンド映画部では、主演の大沢たかお演じる天才科学者・桐生を追う刑事・合田京一役の三浦友和と奥瀬久未役の広瀬アリスにインタビュー。お互いの印象や映画のテーマでもあるテクノロジーの発展について語ってもらった。


ーー今回お2人は初共演となりましたが、お互いの印象はどうでしたか?


三浦友和(以下、三浦):最初、衣装合わせの時は髪がロングだったよね?


広瀬アリス(以下、広瀬):あ、そうです!


三浦:だから、「ロングヘアの綺麗なお姉さんだな」と思っていたんだけど、クランクインの日にすごくショートになっていて。


広瀬:(笑)。25センチくらいバッサリ切りました。


三浦:それで印象がすごく変わったんです。でも、ズケズケと入り込むんじゃなくて、もう何年も共演していたような感覚で接してくれたので、すごくやりやすかったですね。


広瀬:ありがとうございます。私が何をやっても三浦さんは優しく受け止めてくださいました(笑)。


ーー緊張はしなかったですか?


広瀬:もちろんずっと緊張はしてたんですけど、それよりも楽しい感覚の方が強かったですね。


ーー1月から放送がスタートしたドラマ『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(日本テレビ系)で早くも再共演が実現しました。


広瀬:毎日一緒なんです。安心感は半端ないですね。


三浦:広瀬さんは女優さんとして面白いんですよね。すごく才能がある人だと思っているんです。だから、もうちょっと心を入れ替えると良いかもしれない。


広瀬:(笑)。


三浦:余計なお世話でもそういう話をしたくなる、レアな人です。「本当にすごく良い資質があるから、将来的にもすごい大女優さんになるだろうと思っているけど、あとはここかな」みたいなことをお話ししたんですよね。


広瀬:本当にありがたいです! ドラマで再会した時に、一番最初に「あの時とは違いますよ」って報告させていただきました(笑)。


ーー今回の『AI崩壊』は入江悠監督の完全オリジナルとなります。脚本を読んでどんな印象を受けましたか?


三浦:脚本は最初、準備稿の段階で読ませてもらいました。全体的に面白かったので、もちろんやらせていただきますというお返事をしたんですけど、細かい部分は僕の方からも監督に意見を言わせてもらったり、いろいろディスカッションをしました。


ーーディスカッションというのは具体的にどのようなことを?


三浦:アクションやCGで派手に見せるのももちろんいいけれど、もっと人間をキャラクターとしてきちんと成立させることができれば、より面白くなるのではないかという話をしました。それが日本映画の良さだと思いますから。


広瀬:私は脚本を読んだだけではちょっと想像しにくい内容だなと思いました。いつもはいろんなことをイメージしながら読んだりするんですけど、今回は「どうなるんだろう……」と。逆に期待値が上がって、撮影がすごく楽しみになりました。


ーー完成した作品を観ていかがでしたか?


広瀬:スケールの大きさに圧倒されました。自分が参加していないシーンで、「これどうやって撮影してるんだろう?」と思うシーンとかもあったりして。


三浦:どのシーン?


広瀬:のぞみのシーンです。普通にお客さん感覚で観てしまいました。映画が終わった後もずっと余韻に浸ってしまうぐらいでした。


三浦:僕は素直に「10年後ってこんな感じなのかな」と。進む部分と進まない部分ってはっきりしてるじゃないですか。10年前を振り返ると、今とそんなに変わっていないこともたくさんありますし、大幅に変わったこともたくさんある。スマホなんてすごく進化していますよね。そういうことの違和感がなかったので、とても楽しく観ることができました。


ーーお2人は刑事として、大沢たかおさんを演じる桐生を追う役目を果たします。移動シーンも多かったと思いますが、撮影で大変だったことはありますか?


三浦:とにかくいろんな場所へ行きました。僕らもそうでしたけど、道を走るシーンを撮るだけで岡山へ行ったりしましたから。本当にきめ細かいなと思いました。普通はそんなことしませんからね。制作側は「何とか近郊で済ませる手はないか」と考えるわけですから。ここまでこだわるんだというのが、久しぶりで嬉しかったですね。


ーー近年の日本映画でも珍しいですか?


三浦:そうですね。昔は本当にそういうところをこだわる監督が多かったんですけど、最近はCGに頼るという一番悪いところが出てるかな。「後で何とかできる」という考え方が当たり前になっていたり、「予算がこれだけしかないからここはこうしよう」という逃げ方が多くなっているように感じます。もちろん昔もそういうことはありましたが、僕はそこにこだわる監督さんとやらせていただく機会が多かったので、そういうことを久々に感じることができました。


広瀬:巨大貨物船を1日貸し切って撮影したりもしましたよね。あと、昼間に高速のシーンを撮って、朝4時に朝焼けのシーンを撮ったり。それも車から出てくる2カットだけ撮影して、30分足らずで終わって、始発で帰るみたいな(笑)。ある意味、贅沢な撮影の仕方ですよね。本当に1シーン、1カット、時間をかけてじっくり撮るというか。私もそういう経験はなかなかなかったので、すごく贅沢だなと思いながら撮影に臨んでいました。


ーーAIやテクノロジーの発展はこの作品において一つの大きなトピックになります。映画でも描かれているように、良い面も悪い面もあるかと思いますが、そのあたりはどう考えていますか?


三浦:僕はアナログ的なものや考え方が好きなんです。そういうものって、無理やり残そうとしなくても、自然に残っていくものだと思うんですよ。今、キャンプがちょっと話題になっていますけど、ああいうことですよね。無意識的に自然が好きだったりすることって、いくらテクノロジーが発展しても変わらないと思うんです。そういう感覚って、AIの中にはたぶんないので、人間である限り、きっとアナログなものはなくならないでしょうね。僕はそこを求めていくと思います。


広瀬:私も本当にそう思います。生活をする上で、AIがなんでもかんでもやってくれたらすごく便利だと思いますけど、頼りきってしまうのはやっぱり危険ですよね。少しの手助けになる分には良いですが、三浦さんがおっしゃったように残ってほしいものもありますし、ちょこっとだけ便利になるくらいがちょうどいいのかなと思います。


三浦:それは映画やドラマにも言えることですよね。スマホで映画が撮れたり、パソコンやスマホで作品を観ることができる時代ですけど、どこかで自然回帰というか、人としての既存本能みたいなものがあって、戻っていく部分もあるんじゃないかなって。どこかで両立していくと思っているので、基本的には何も心配していません。コンピューターは情報を全部入れますが、人間って“忘れる”じゃないですか。必要じゃないものは自然と忘れていくことができる。その時点で、人間は圧倒的にAIに勝っているわけですから。(取材・文=宮川翔)