2020年01月26日 10:32 弁護士ドットコム
交際相手との間の子どもを妊娠したところ、相手の母親が出てきて、「中絶するしかないでしょ」「引きずってでも病院に連れて行って中絶手術を受けさせる」などと脅された女性から、犯罪ではないのかと弁護士ドットコムに相談が寄せられた。
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相談者の女性はこの母親から出産を反対される中、ずっと恐怖に怯えながらも無事出産に至ったそうだ。
「中絶しかないでしょ」などの発言で中絶を迫ることは犯罪ではないのか。長瀬佑志弁護士に聞いた。
「中絶をする意思がない女性に対して中絶を迫ることは、強要罪に該当する可能性があります(刑法223条)。強要罪は、生命、身体、自由等に対して害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせた場合に成立します(刑法223条1項)。
無理矢理にでも中絶させるかのような発言を繰り返すことは、生命や身体等に対する害悪の告知をして、法的義務がないにもかかわらず中絶させるよう仕向ける行為であり、強要罪の構成要件に該当しうるといえます。
なお、『脅迫』として告知される害悪の内容は、相手方の性質(性別、年齡など)及び周囲の状況から判断して、一般に人を畏怖させるに足りる程度のものであることを要します。
具体的な状況にもよりますが、今回のケースでは、相手方の発言内容や、相談者の女性がずっと恐怖に怯えていたということからすれば、『脅迫』にあたる可能性はあります。
ただ今回、相談者の女性は、無事に出産に至ったとのことですから、強要未遂に留まるといえます(刑法223条3項)。
なお、強要罪に該当しないとしても、相手方の言動を捉えて、脅迫罪に該当すると判断される可能性もあります(刑法222条)」
【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『弁護士経営ノート 法律事務所のための報酬獲得力の強化書』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所水戸支所
事務所URL:https://nagasesogo.com