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「私は、性暴力被害者です」 フラワーデモに救われ、経験を語った女性が今思うこと

2020年01月26日 09:22  弁護士ドットコム

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2019年12月11日。イチョウが舞う東京駅前の行幸通りの一角で、性暴力の撲滅を訴える「フラワーデモ」が行われた。この日、花を持った人々の前に立ち、初めて自らの経験を語り始めた女性がいた。


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「こんばんは。私は、性暴力被害者です。この一言をいうのにとても勇気がいります。言うとどんな冷たい反応が返ってくるかわからないからです」



そう切り出すと、職場の上司から強制わいせつを受けたこと、警察から「成人した男女が二人きりになれば好意があるとみなされても仕方ない」と言われたこと、被害後PTSDに苦しんでいることを打ち明けた。



どんな思いで、あの場に立ったのか。女性に後日尋ねると、「このままじゃいけない、これ以上同じ思いをする人を生み出したくない」と話すことを決めたという。



●警察に相談するも「事件にするのは難しい」

佐藤ゆいさん(仮名・30代)が被害にあったのは約3年前。会社の飲み会終わりに、上司から抱きつかれ無理やりキスをされた。会社からは「口外しないように」と口止めされ、「なかったことにしよう」と思うようにした。



その後、会社を離れたが、別の上司が「なんとかしてやる」と近づいて来た。信用して相談していたが、ある時、無理やりホテルに連れていかれた。



後日、弁護士を通じて「嫌がっていることは知っていた。でも調子に乗ってやってしまった」という軽い言葉が返って来た。



加害者からは、口外禁止という条件つきで20万円の和解案が提示されたが、「されたことについて、話すこともできなくなる」と断った。一方で相談した警察からは「証拠が残っていないため事件にするのは難しい」と言われた。



「こんなことがまかり通って許されるのか」と悔しさだけが残った。でも、これ以上どうしていいのか、何ができるのかが分からず途方にくれた。



●フラワーデモ「同じ思いをした人がこんなに現実にいるんだ」

そんな頃、2019年4月11日に初めて「フラワーデモ」が開催されるという情報がツイッターで流れてきた。とっさに「行かなきゃ」と思ったが、「人が少なくて、冷ややかな目で見られたらどうしよう」と想像もした。



これまで被害を訴えた会社や警察、弁護士や男性の知人からの言葉は冷たかった。世間が性暴力の問題に無関心であることを思い知らされ、またも悲しい思いをするのではないかと不安がよぎった。



2019年4月11日。「やっぱりやめようかな」と迷いながら1時間ほど遅れて東京駅の行幸通りに向かうと、一角に人だかりができているのを見つけた。「あそこだ」。涙があふれた。



「被害にあったことは隠して仕事しているけど、それがつらくて。同じ思いをした人がこんなに現実にいるんだ、居ていい場所なんだと色んな思いがあふれてきました」



それまでデモにはなんとなく怖いイメージがあったが、「フラワーデモ」は温かくて優しい集まりだと感じた。「皆がウンウンと聞き入って、次々と飛び入りで話し始める人がいた。なんて優しい空間なんだろう」。はじめて一人じゃないと実感した瞬間だった。



●スピーチに立ち「壁を一つ打ち破れたような気がしている」

12月11日にスピーチに立ったのは、2019年のうちに一歩踏み出したいという思いがあったからだ。被害の苦しさから進めていない状況にやるせなさを感じていた。



「自分の中で区切りをつけたかった。まだ実感がないけれども、やらなかったよりもスッキリしている自分がいる。壁を一つ打ち破れたような気がしている」



友達にも「重いかな」と気を遣い、被害にあったことを言えなかった。怒りや悔しさをずっと封印していたが、本当は声をあげたくて仕方なかった。「なかったことにされるのが悔しくてたまらなかった。『フラワーデモ』が始まったことは救いになっている」と話す。



今は仕事を再開し、週に1度クリニックに通いながら日常生活を取り戻そうとしている。取材に応じるのは「ひとえに性暴力を取り巻く現状への悔しさが原動力」だという。



今後、加害者に対して何か法的手段をとれないか考えるつもりだ。ただ、「私にとっての回復は、裁判をして勝って慰謝料をもらったら終わりとは思っていない」という。



「性暴力を取り巻くこうした現状があると知ってしまった以上、この状況を変えるために、何か私にできることはなんでもしようと思った。自分の回復だけがゴールと思っていない。まずは、現状を知ってほしい」