2020年01月22日 20:02 弁護士ドットコム
楽天が3月18日から始める「送料無料サービス」の中止を求めて、出店事業者でつくる「楽天ユニオン」は1月22日、公正取引委員会に対して、排除措置命令を求める措置請求書を提出した。
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送料無料サービスは、楽天市場で3980円以上の買い物をした場合、原則として送料を無料とするもので、楽天は利用者にとってメリットがあるだけでなく、店側の売上増も見込めると説明している。
しかし、楽天側は送料を一切負担せず、店側が全額負担することになっているといい、楽天ユニオンは「一方的な負担の押しつけである」と訴えている。
楽天ユニオン代表の勝又勇輝さんは「楽天にいくら質問してみても『回答なし』の一点張り。あまりに一方的であり、話し合いすらできていない現状のまま、サービスを導入することには到底納得できない」と話す。
楽天ユニオンが公取委に対する措置請求をするにあたって主張したのが、「優越的地位の濫用(独禁法2条9項5号)」だ。
「優越的地位の濫用」は、取引上の地位が優越している側が、その地位を利用して、不当に不利益を与える行為であり、不公正な取引方法として独禁法で禁止されている。
楽天ユニオンは、以下の内容などが、楽天による「優越的地位の濫用」に当たるとして、送料無料サービスの排除措置を求めている。
・ホームページ上に「送料無料」と表示させ、送料を店舗に負担させること
・送料無料サービスによって楽天の主張する売上増加が実現したとしても、店側は利益以上に不利益が生じること
・販売方法と密接にかかわる送料は店側で決めるべきであるところ、楽天が一方的に決めたこと
会見に出席した出店者の男性(通販事業歴25年)は、自店を例に挙げて、送料無料サービスの問題点を語った。
男性の店では、現在1万1000円以上の買い物をすれば送料無料の設定をしているところ、平均客単価が約1万1000円だという。
3980円以上は送料無料ということになれば、まとめて買っていた利用者も回数を分けて買うようになり、客単価は3980円に限りなく近づくとして、配送料負担が大きくなると指摘した。
2019年12月の通販費用(宅配料金・倉庫費用・決済手数料など)は一件あたり約1600円だったとした上で、小売りの利益率を40%と仮定した場合、粗利(3980円×40%)から通販費用(1600円)と楽天手数料を引いた収支は赤字になると主張した。
男性は「売れば売るほど赤字が増えてしまう。『送料無料』という言葉は、『タダ働き(しろ)』という風に聞こえる。消費者には、送料無料サービスが始まっても、店側は大丈夫だと誤解して欲しくない」と訴えた。
楽天ユニオンは、今後、差止請求などの訴訟も含めた法的措置も検討はしているが、そう簡単には法的措置に踏み切れない事情があるという。
楽天ユニオンの顧問弁護士である川上資人弁護士は「訴訟などの手段をとれば、被告となる楽天に原告である出店者の名前を把握され、契約解除等の不利益を被るおそれがある。そのリスクを前に、声を上げることに二の足を踏んでいる出店者は少なくない」と話す。
巨大プラットフォーマーである楽天と楽天市場で事業を営んでいる人たちとの間には、経済的な格差、立場上の力の不均衡があるのが実情だ。
川上弁護士は「巨大プラットフォーマーをめぐる現代的な問題については、公正な市場をどう実現していくのか、社会的に議論をする必要がある」と語った。
楽天は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、以下の回答を行った。
「意見書をご提出されたということ、会見があったことは報道等を通じて認識しておりますが、内容については、弊社へ直接いただいているものではありません。
弊社としては、個別の団体のご意見だけでなく、これまで様々な機会を通じて直接多くの店舗の皆様からご意見を頂戴しております。
今後も、店舗様それぞれで状況も異なるため、多様な店舗様のご意見に真摯に耳を傾け、いただいたお声を、消費者の皆様・店舗様の双方にとってより良い施策となるよう生かし、店舗様の中長期的な成長への寄与を目指してまいります」
【UPDATE】楽天のコメントを追記しました(2020年1月23日12時40分)。