2020年01月22日 14:31 弁護士ドットコム
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告人による国外逃亡の直前、本人にインタビューしていた元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士が1月22日、都内の日本外国特派員協会(FCCJ)で会見した。「日産は2~3年以内に倒産するだろう」などゴーン氏の発言を明らかにし、見解を語った。検察改革・刑事司法改革を標榜する郷原弁護士は司法制度の問題点を改めて提示。見直されなければ、日本の司法制度が海外から信頼されることはないと訴えた。
【関連記事:妻に不倫された夫が「もう一度、ホテルへ行って来て」と言った理由】
郷原弁護士はゴーン事件を書籍にまとめるため、2019年11月中旬~12月27日まで、保釈中のゴーン被告人と5回面会し、計10時間以上のインタビューを行った。国外逃亡によって出版計画は白紙となり、インタビュー内容の取り扱いも宙に浮いていたが、1月13日にレバノンのゴーン被告人とのテレビ電話により公にする許可を得られた。その電話の中でゴーン被告人がリスクを冒してまで「出国を決意した理由」を郷原弁護士に語ったという。
特別背任事件の公判開始は当初2020年9月と予定されていたが、検察の意向で2021年か2022年まで大幅に遅れる見込みだ。公判は上告審まで含めると10年程度費やされることが予想される。「妻と息子とは(長期間にわたって)会えないことがはっきりした」(ゴーン被告人)
郷原弁護士は、国外逃亡こそ「犯罪行為」とする一方、検察による逮捕・起訴は「経産省や日本政府が関与したクーデター」であり、逮捕事実は刑事事件にならないものだったとするゴーン被告人の考えを支持した。
従前言われるように「身体拘束の長期化」、「取り調べの弁護士の同席不許可」、「家族との接触ができない」ことなど刑事司法制度には様々な問題がある。とりわけ、郷原弁護士は「日本には推定有罪の原則がある」と強く批判した。
森まさこ法務大臣の「法廷で無罪証明すべき発言」(後に訂正)を引き合いに、「無罪を証明せよと言うのは、ある意味で正しいわけです。日本には推定有罪の原則が働いている」と述べた。検察官が起訴した場合の有罪確率は99%超であり、「検察官が判断を誤って起訴した場合、裁判での救済は困難を極めます」と不利な状況に置かれたゴーン被告人の密出国に一定の理解を示す。
郷原弁護士によれば、なかでも最大の問題は「検察官に権限が集中していること」。検察官は全知全能の神ではなく「人間だから誤ることもある。ゴーン事件は誤りだと思う」と語り、国内外のプレスの前で「事件を契機に、日本の司法制度を見直す必要があるし、そうしなければ海外から日本の司法制度は信頼されることはないと思う」と訴えた。
また、検察と日産が結託していたと主張するゴーン被告人は、郷原弁護士との会話の中で「日産は2~3年以内に倒産するだろう」と話したそうだ。
裁判が開かれる見込みがない今、ゴーン被告人の逮捕や起訴が相当だったかの検証方法も模索される。「取り調べの録音・録画の記録を公開するのは、法律的にはなかなか難しいと思う。ゴーン氏の裁判が開かれないということになれば(さらに)難しい。逆に、検察の判断があれば公開はできると思う。法務省が国益上、必要と判断して検察に公開させるしかないと思う」(郷原弁護士)。