2020年01月21日 10:11 弁護士ドットコム
あのブラック企業はどうなったのか。昨年12月23日に開催された「ブラック企業大賞」の発表・授賞式で、過去の受賞企業の「ビフォー・アフター」を紹介するコーナーがあった。そこでは、自動販売機オペレーションの「ジャパンビバレッジ東京」の「大変身」が取り上げられた。
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ジャパンビバレッジ東京は、自販機オペレーション大手「ジャパンビバレッジグループ」の子会社だ。
同社の足立支店は2017年12月、ルートセールス社員に違法な時間外労働をさせていたとして、足立労働基準監督署から是正勧告を受けた。この社員の残業時間は、過労死ラインを超える「月100時間」以上だったとされる。
また、同社のJR東京駅支店では、支店長が出したクイズに全問正解したら、有給休暇がとれる「有給チャンス」と呼ばれるパワーハラスメントの存在もあった。
駅ごとの自販機売上のランキングをすべて正解したら、有給がとれるというクイズなのだが、出題に間違いがあって、はじめから全問正解できないものだったという。
もちろん、こんなクイズに正解しなくても、有給がとれないのはおかしいのだが、こうした理由で、同社は2018年のブラック企業大賞で「有給ちゃんと取らせま賞」を受賞した。
それから1年後のブラック企業大賞「ビフォー・アフター」で、同社の従業員が複数加入している労働組合「総合サポートユニオン」の坂倉昇平さんは「(組合員は)定時に帰れるようになった。休憩もとれるようになった」と紹介した。
足立支店でルートセールスを担当している男性Aが振り返る。
ざっくり言うと、ルートセールスとは、路上や建物内の自動販売機まで飲料を運んで、補充する仕事だ。同社では、「事業外みなし労働時間制」が悪用されていた。
外回りのルートセールス社員の労働時間は算定しづらいところがあるため、あらかじめ「1日7時間45分」働いているとみなして、給料を支払っていたのだ。
ところが、実際はその時間で終わらない量の仕事があり、休憩もとれないような状況だった。「だいたい12時間以上も外回りしていました」(男性A)
その後、是正勧告もあり、「事業外みなし労働時間制」は廃止された。男性Aはそれまで支払われていなかった残業代や休憩を手に入れた。しかし、今でも定時に帰れず、サービス残業している社員が少なくないという。
「結局のところ、組合員の労働環境しか改善されていません。社員一人ひとりが、おかしいことは、おかしいと声をあげていないといけませんが、声をあげられない人たちは長時間労働になっています」(男性A)
「有給チャンス」のあったJR東京駅支店につとめていた男性Bは「支店長のパワハラがひどかった」「正直、仕事にいきたくなかった」と話す。
仕事のミスをしたら、ダンボールでこずかれたり、傘でお尻を叩かれたり、蹴り上げられたりしたという。さらに根拠もなく、「お前、クビだ」「諸悪の根源だ」と人前で吊し上げられることもあったという。
「現在、私は別の支店で働いていますが、全社的にパワハラは少なくなったと思います。ただ、過去のパワハラに対する謝罪は、会社からも元支店長からもありません。団体交渉で、パワハラの謝罪と補償を要求しています」
自販機の飲料補充は、社会にとって欠かせない仕事の一つだ。「重労働なので、待遇を上げて、人を増やしていけば、もっと良い会社になると思います。しかし、現在のところ、会社からはそういう姿勢は見えません」(男性B)