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大津・園児死傷事故、異例の展開に テレビ取材で「裁判と違う主張」、判決に影響する?

2020年01月21日 09:51  弁護士ドットコム

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大津市で園児ら16人が死傷した事故の刑事裁判で、被告人の女性がテレビインタビューに対し、法廷で話したこととは違う主張をしたために、判決言い渡しの前に弁論が再開される異例の事態になりました。


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京都新聞(1月16日)によると、被告人は全ての審理が終わった後、テレビインタビューで「不運が不運を呼んだ」などと発言。16日には判決言い渡しが予定されていましたが、大津地検は法廷での主張と食い違っているとして弁論再開を申し立て、裁判所も認めました。



刑事裁判の被告人が、外で裁判とは違う主張をしたら、どんな問題になるのでしょうか。本間久雄弁護士に聞きました。



●被告人は偽りのことを述べても偽証罪には問われない

--今回、弁論再開が認められたことは異例なのでしょうか。



検察官・弁護人双方の立証が終了し、論告・弁論が終われば事件は結審し、判決を待つのみとなります。示談が成立した、新証拠が発見されたなどの事情がなければ弁論が再開されることは通常ありません。



法廷外のテレビインタビューが公判での被告人の主張と食い違うという理由で弁論が再開されるのは確かに異例だと思います。



--刑事裁判では、証人の場合、尋問に先立って「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」と宣誓をします。被告人は嘘をついても良いのでしょうか。



証人の場合、宣誓をしているので、嘘をつくと偽証罪に問われます。被告人の場合、黙秘権が保障されていることとの兼ね合いから、宣誓義務はなく、偽りのことを述べたとしても偽証罪には問われません。ただ、嘘をついても良いかと言われると、罪に問われないというだけであって、たとえ被告人であったとしても好ましくないでしょう。



●裁判外の報道・発言について質問されることがある

--テレビインタビューをきっかけに、検察側が弁論再開を申し立てました。裁判外での発言は、裁判の行方に影響するのでしょうか。



事実認定及び量刑については、公判に現れた証拠に基づきなされます。裁判外の報道・発言に基づいて事実認定及び量刑がなされることはありません。



ただ、証人尋問ないし被告人質問のときに、裁判外で行われた事件関係者の発言を持ち出されて質問がなされる場合があります。その意味で法廷外の発言は法廷での証言、ひいては判決に影響することになります。



●思うところがあれば、公判で述べるのが筋

--弁護人としては、法廷外での言動について、何か留意すべきことを伝えることはあるのでしょうか。



示談等の場面では、被害者に対して、事件のことについて思うところを真摯に話し、心からの謝罪の気持ちを話すべきですが、それ以外の場面では、原則として、弁護人・被告人ともに法廷外で事件について語らないという姿勢を貫いた方がいいでしょう。事件について話した言葉が一人歩きし、収拾がつかなくなる可能性があるからです。



--裁判長は法廷で「審理を続行せざるを得ないが、裁判所としても残念」と述べたそうです。



幼い貴重な命が亡くなったという非常に重たい事案ですので、ご遺族のお気持ちを考えるとやはりインタビューに応じて一方的な主張をするべきではなかったと思います。



罪状認否・被告人質問・最終意見陳述の際に被告人の主張・意見を述べる機会は十分に与えられていたはずですから、思うところがあれば、弁護人と相談の上で、公判で述べるのが筋だったと思います。




【取材協力弁護士】
本間 久雄(ほんま・ひさお)弁護士
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。
事務所名:横浜関内法律事務所
事務所URL:http://jiinhoumu.com/