東京商工リサーチは、2019年に早期退職を募集した上場企業は延べ36件で、2018年の3倍に上ったことを発表した。対象人数は1万1351人で、件数、人数共に過去5年間で最多だった。
最も人数が多かったのは富士通の2850人。次いで、ルネサスエレクトロニクスの約1500人で、子会社の売却や事業の選択・集中を進める東芝が1410人、経営再建中のジャパンディスプレイの1200人だった。
調査は、2019年1月以降に希望・早期退職者募集を実施し、具体的な内容を確認できた上場企業とその子会社を対象に抽出。早期・希望退職者の募集予定を発表したが実施に至っていない企業は除外した。募集人数が判明しない、募集枠を設けていないケースは応募人数をカウントしている。
退職者募集の一方で、製造業はデータ解析領域での人員確保に躍起
2020年以降は、すでに9社、計1550人の早期・希望退職の募集が予定されている。9社のうち、直近決算で最終赤字、減収減益はそれぞれ1社で、他の7社は業績が堅調な業界大手が占める。
食料品や消費材、小売業などの業界大手でも、少子高齢化による消費の低迷や、既存事業の見直しなど、先立つ国内市場の環境の変化に対応しようと事業と人員の構造改革を進めている。
三越伊勢丹HDでは、3月に閉店を予定している新潟三越の従業員らを対象にした希望退職支援制度に約67億円の特別損失を計上した。今後も、店舗の撤退や再編が続く小売業などで同様の動きがみられる可能性もある。
製造業では、データ解析やマーケティングなどの領域で不足する人材の確保を急ぐ。キリンホールディングスでは、2019年10月から11月にかけ、営業に携わる社員やコーポレート関連の部署の社員を対象に退職者を募った。一方で、人数は非開示であるものの、退職した社員と同等の規模の中途採用者を新たに募るという。