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「1000円カットは身なりがどうでもいい人のもの」投稿に反発相次ぐ 「散髪に何千円も使うほうが苦痛」「女性も利用してる」

2020年01月19日 08:30  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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通称「1000円カット」と呼ばれる低価格の理美容室は、90年代の終わりごろから出現した。当時20代の筆者はその安さに驚いたものだ。はてな匿名ダイアリーには1月上旬、「大人で1000円カットを使う人間がいると知ったのは衝撃だった。」というエントリがあった。投稿者の年齢や性別は不明だが、

「ああいうのって子供とかもう身なりなんてどうでもいい老人が行くものだと思ってた」

とだけ書いてある。"普通に働いている大人は、身だしなみにも気を使いそれなりにお金をかけるもの"という前提の発言だろう。「ああいうの」という言葉から、素朴な驚きを表現しているようでいて、はっきり見下していることも見て取れる。1000円カットで働く理容師さん、美容師さんはもちろん、子どもと高齢者にも失礼な話である。(文:okei)

「顔そりも洗髪もいらないんで千円カット重宝してます」

短い投稿だったが反響は意外に大きく、ブックマークは400以上ついた。「都心では平日の夜はサラリーマンの行列できてるよ」「最近おばさんも結構来てる」など、1000円カットは大人も当たり前に行くというツッコミや、1000円カットを擁護する声が多数上がっている。

「顔そりも洗髪もいらないんで千円カット重宝してます」
「割とどうでもいい雑談に小一時間つき合わされた上、頼んでもないのに髪を洗われ、髭も剃られ、それで何千円も支払う方がよほど苦痛なんだよなあ」

といった床屋嫌いあるあるも散見されていた。昼休みや仕事帰りに短時間で済ませられる上、技術力はバカにしたものではなく、「当たり外れがあるのは高い美容室でも同じ」といった意見も多かった。

一番のメリットは「安い」ということで、安価でマメに行ったほうが清潔感を保てるという声も目立ち、"いやむしろ1000円カットがベスト"という人が非常に多いことがうかがえた。

一方で、「行かない」派も一定数いて、理由が二極化していた。技術面や接客サービスに納得がいかず、「美容室一択」という人と、1000円すら惜しいので「自分で切っている」という人だ。筆者の夫などは「1000円カットですら店員とのやり取りが面倒」などの理由でこの10年バリカンで自ら散髪している。私は後頭部を担当し、最初のうちは嫌だったがもう慣れた。身だしなみにお金をかける価値観は人それぞれなので、他人がどうこう言う問題でもないだろう。

1000円カットの隆盛は日本の低賃金化の象徴?

1000円カットと言えば、全国に563店舗を展開するQBハウス(キュービーネットホールディングス)は、1996年の1号店オープンから業績は右肩上がり。2007年には来客者数1000万人を突破し、2019年は1840万人を超えた。とても子どもとお年寄りだけを相手にしていて叩きだせる数字ではない。

2019年2月に税込1200円に値上げし話題となったが、それでも低価格であることは確かだ。他にもカットファクトリー(2000年創業)やサンキューカット(2001年創業)など、1000円~1200円で「早い・安い・技術力」を売りに展開する理美容室は数多ある。

これだけ1000円カットが利用される背景には、床屋嫌いもあるだろうが、個人的には「使えるお金が少ない」という理由も大きいような気がする。OECDの統計によれば、2018年時点での日本人の1時間あたりの賃金は1997年に比べ8.2%減少しており、先進国中で唯一マイナスとなっている。消費増税で負担も増していった。

この賃金低下の時期は、1000円カット業界が成長してきた時期とほぼ重なる。つまり収入が少ないので理美容代にまでお金をかけられない人が増えた、という状況を感じてしまうのだ。もちろん1000円カットが悪いわけではないが、投稿者の皮肉めいた書き込みは、そうした閉塞感や低所得にあえぐ人たちの神経を逆なでし、注目を集めた面があるのではないだろうか。