2020年01月18日 10:02 弁護士ドットコム
一方的に好意を抱いた少女の耳をなめたとして、会社員の男性が1月上旬、強制わいせつの疑いで、福岡県警に逮捕された。
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報道によると、男性は昨年11月5日夜遅く、福岡市の路上で、アルバイト少女(当時18歳)に後ろから抱きついて、耳をなめるなどした疑いが持たれている。
少女と面識はなかったが、前に偶然見かけて一方的に好意を抱いたそうだ。そもそも、耳をなめるのは「わいせつ行為」にあたるのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。
「態様(ありさま)や程度によりますが、耳をなめる行為が強制わいせつ罪として処罰された事例はときどき見かけます。
ただし、『わいせつ行為』(刑法176条)の定義は、そもそも判例上定まっていません。
『わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう』(名古屋高裁金沢支部昭和36年5月2日)という定義が有名ですが、最高裁判例はありません。
強制わいせつ罪の成立には、『必ずしも性的意図は必要ではない』とした最高裁判決(大法廷平成29年11月29日)も、定義は示していません。
また、担当調査官の解説(馬渡香津子「時の判例」ジュリスト1517号85頁)で定義不要とされたために、高裁レベルでも判断がまちまちになっています」
「乳房をもむ、陰部を弄ぶ、という典型的な行為については、判例も集積されているので『わいせつ行為』と評価されると思います。
しかし、裁判例で稀に見かける次のような新態様については、上級審の判例もなく、わいせつと言えるのかは微妙です。
・耳をなめる行為
・陰毛を抜く行為
・膝裏を撫でる行為
・トイレのドアを開いて用便中の女性の姿態を凝視する行為
・女性の足裏をなめる行為
・女性に顔面を踏んでもらう行為
・女性に裸体画像を撮影・送信してもらう行為
これらの行為については、先ほどの大法廷判決から『わいせつ行為』とされる可能性がある、ということになるでしょう。
なお、強制わいせつ罪が成立しないときには、暴行罪が考えられます。今回のように、公共の場所でおこなわれている場合には、『卑わいな言動』(迷惑防止条例違反)も検討されると思います」
【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/