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トパスから感じる“スクールカースト”への異様な執着 『テラスハウス』第28話未公開映像

2020年01月17日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』(c)フジテレビ/イースト・エンタテインメント

 Netflixで配信されているリアリティーショー『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』。12月31日にYouTubeにアップされた未公開映像には、愛華のことが気になるトパスの姿が収められていた。


(関連:愛華がパニックに陥り、“素”をさらけ出す? 『テラスハウス』第22話未公開映像


「思い残し症候群みたいなものを回収しようとしてる」(リリー・フランキー/28TH WEEK本編)。


 新住人インタビューの時点で、愛華が気になると語っていたトパス。「愛華さんって綺麗だし、工業高校でいうとヤンキー……一軍の人と付き合ってたような方だと思うので。3・4軍の自分から見て、憧れだし、単純にどういう人か知りたいですね」。


 トパスは、26TH WEEKで快やビビと共にテラスハウスに入居してきた新メンバー。両親がフィリピン人で、日本に来たのは8歳のときだという。入居当初は変に礼儀正しすぎて、他のメンバーとはなかなか打ち解けられず、どこか距離がある印象だった。特に、女性メンバーとは目を合わすことすら避けていたように見える。それは、トパス自身が「いまいち、女性との接し方がわからない」と話していたように、自分に自信がないゆえの“守りの行為”のように思えた。


 おそらくトパスは、「女性と何を話したらいいんだろうか。相手の女性を楽しませられるか不安。無言で気まずくなったらどうしよう……。『つまらない』って思われたら傷つく……」などの思いから、女性と接することに緊張を覚え、自ら避けているのではないだろうか。


 そんなトパスだが、恋愛に積極的な一面もある。27TH WEEKでは、入居前から憧れていた愛華をプレイルームに誘い、厳かな雰囲気のなか、しれっとデートの約束を取り付けていた。その後、28TH WEEKでは、改めて愛華をランチデートに誘い、二人きりの時間を満喫。実に幸福そうだった。このまま順調に行くかと思いきや、酔っ払ったトパスは突如、自身の闇を大解放し始める。「俺は愛情に飢えてる。誰からも愛されたことがないから、人を愛することは難しい」。持論を述べながら、ひどくやさぐれるトパスだったが、それに対してビビは「違う。自分のことを愛せないと人のことを愛するのは難しいと思う」と冷静に反論。最終的にビビから背中を押されたトパスは、翌朝、愛華に「愛華ちゃんにはめちゃくちゃ興味ある」とはっきりと告げ、「映画いつ行く? いつ空いてる?」と次のデートの約束まで交わすことに成功していた。


 トパスは、恋愛の話題になると必ず「自分は4軍だったから」「1軍への憧れなのかもしれない」など、スクールカーストを引っ張り出してくる。28th WEEKの未公開映像“The First Line Communication”でも、テラスハウスでお酒を飲みながら花とビビと談笑していたトパスは、愛華への想いを尋ねられ、「わからない。ただ単純に4軍としての1軍への憧れなのか、(純粋に恋愛として)気になるっていう気持ちなのか」と答えていた。また28th WEEK本編でも、愛華とランチデートに向かう道中の車内で、トパスは「学生時代、4軍・5軍にいた」と自分語りを始め、「愛華ちゃんは1軍にいそうな……」と評している。続けて、「高校時代の俺に言ってやりたいよ! 『いまお前は4軍・5軍にいるけど、真面目に生きてたら、こんないい車に乗って、隣に(1軍の)可愛い子乗せて』って」と口にしていた。


 トパスからは、“スクールカースト”への異様な執着心を感じる。トパスにとって“スクールカースト”とは、負の思い出であると同時に自分自身を“守る武器”なのではないだろうか。ビビも指摘していたように、「私はかわいそう」ということを言い訳にし、あらゆることから逃げているように思える。誰かを真っ正面から愛して、もし拒絶されてしまった場合、自分のすべてが否定されたような気がして、二度と立ち直れなくなるかもしれない。間違いなく深い傷を負うことは確かだろう。だったら、初めから「俺はスクールカーストが下だったから」「恋心ではなく、1軍への憧れ」と言い訳を用意して、それを自分自身にも周囲にも言い聞かせていれば、もしこの恋がうまくいかなかったとしても、ダメージは最小限に抑えられるはず。周りには「よくよく考えてみたら、やっぱり憧れだった」と弁明できるし、惨めだと思われないですむ。と、どこかで考えているのではないだろうか。


 それが決して悪いことではない。人は弱い。だからこそ、誰しもどこかで必ず逃げ道を用意している。だが、トパスが心配なのは、師匠であるリリー・フランキーが忠告していたように、無意識のうちに「思い残し症候群みたいなものを回収しようとしてる」からだ。俺を4軍に位置付けた学校が悪い、俺を愛さなかったみんなが悪いと他人のせいにして、その過去を取り返すかのように、1軍に恋い焦がれる。どこかで「この子から愛されたら、俺も1軍になれる」と無邪気に信じている感じが、危ういのだ。過去を清算するために、1軍に手を伸ばし、恋愛か憧れかはわからないと言い訳を用意しながら追いかける。たとえ手に入ったとしても、トパスは心から満たされて幸せになれるのだろうか。自分の価値を自分で決められないことほど、苦しいことはない。


 もう一つの28th WEEKの未公開映像“School Caste”で、トパスは「(家族全員がフィリピン人だけど)家では日本語。8歳(小学3年生)のときに来て、日本語も喋れない状態だったからさ。普通の小学校に通ってて、みんなが日本人の中で、自分だけが外人で、全然大丈夫じゃなかった」と自身の過去を振り返っていた。この環境はきっと、想像できないほど、孤独で心細いものだったと思う。幼い頃の悲しい思い出や傷ついた心、辛い経験は、こびりついてなかなか離れてくれない。そして、他人から一方的に植え付けられた自分の価値も。だからこそ、トパスには人一倍スクールカーストの呪縛が強くかかっているのかもしれない。


 今後、愛華との関係がどう進展していくかはわからないが、トパスがテラスハウスで生活していく中で、少しずつ自身の過去から解放されて、“いまの自分”を愛せることを勝手に願ってしまう。(文=朝陽空)