佐賀県労働組合総連合(佐賀労連)は12月、若者が佐賀市内で"普通の暮らし"をするためには「時給1600円以上が必要」とする調査結果を発表した。現在の最低賃金790円の2倍以上だ。
調査は昨年4~9月にアンケート形式で初めて実施。回答を得た805人のうち、10~30代の計111人の分析データを元に、佐賀市内に住む25歳単身者を対象モデルとして生計費を算定した。
家賃は3万円台だが、移動に必須の自家用車の維持費がネックに
食費や生活必需品の費用を積み上げたところ、男性で月額24万1972円、女性で同24万2732円が必要なことが分かった。主な内訳は、25平米ワンルームの家賃に3万4500円。また、佐賀では自動車が必須品だ。7年落ちの中古軽乗用車に乗ることを仮定した交通経費を3万1948円としている。
このほかの主な出費項目では、1日の必要カロリーを元に算出した「食費」(男性:3万8025円、女性:2万9274円)や、ノートパソコン代やインターネット接続料を含めた「教養娯楽費用」(同2万5964円、2万5976円)、社会保険料や住民税といった「非消費支出」(いずれも4万6045円)などを含んでいる。
持ち物調査については、調査対象の所持率が原則7割を超えるものを"生活必需品"と判断した。また、所持(消費)数については、全体所持数の下から3割を目安に決定しているという。
同組合は、最低生計費の算出モデルになった25歳単身者の「普通の生活」について、
「家電は量販店の最低価格帯のもの」
「朝晩は家でしっかりと食べ、昼食は、男性はコンビニなどでお弁当を買い、女性は昼食代を節約するために月の半分は弁当を持参」
「休日は家で休養していることが多い」
などと定義している。
生活に必要なお金は福岡を上回るが、最低賃金は福岡以下
試算の月額を賃金収入で得ようとした場合、時給換算すると男性で1392円、女性で1397円が必要なことになる(中央最低賃金審議会で用いる労働時間=月173.8時間で除算した場合)。しかし、これはあくまで盆や正月も休まずに働いたケースだ。同組合は、より現実的な月150時間で計算し直し、男性で1613円、女性で1618円が必要と結論づけた。
厚生労働省の地域別最低賃金の一覧表を確認すると、佐賀県の最低賃金790円は、全国でも最低レベル。最高額の東京都との差は223円にものぼる。
東京地方労働組合評議会らが昨年発表した、都内で単身者が暮らすのに必要な生計費は、最も生活費を抑えた北区モデルで「24万6362円」だった。佐賀県の調査モデルと比較しても、大きく変わらないことが分かる。
佐賀労連の稲富公一事務局長は、近県の都市部と比較して「まず、生計費が福岡県より高いのは意外だった」と印象を語る。諸税金を差し引いて比較した場合、佐賀県の最低生計費が「19万4827円」だった一方、福岡県では「17万7760円」(2017年調査)となっている。
佐賀県の最低生計費が福岡県を上回った理由については、主に2つが挙げられた。まず、佐賀県内では「自動車の所有」が必須なのに対し、交通網が充実した福岡県では算定モデルに含める必要がなかったこと。加えて「家賃相場の差」が大きく開かなかったことも後押しした。
さらに驚くことに、福岡県の最低賃金は841円で、佐賀県を上回っているのだ。つまり、佐賀県は最低賃金が低水準であるにも関わらず、生活に必要なお金は多いということになる。稲富事務局長は
「佐賀の若者は就職の時期になると、賃金水準が低い県内を出て、福岡に流れていく傾向がある」
と嘆き、今回の調査でも県内で一人暮らししている若者を探すのに苦労したという。確かに、福岡県のほうが賃金水準が高く、なおかつ生活にお金がかからないなら、若者が移住を選ぶのは論理的と言える。
さらに、稲富事務局長は佐賀県の窮状をこう訴えた。
「組合員の中には最低賃金で働く人も多く、月収にして12~13万円ほどにしかならない。自動車の需要のほかにも、地方で暮らすほうが深刻な側面は多いと感じる」
その上で「東京だけの問題にとどめず、組合として広く実態の周知に努めていく」と力を込めた。