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『10の秘密』向井理ら家族の過去がストーリー解明の鍵? 謎が謎を呼ぶ正統派サスペンスドラマに

2020年01月15日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『10の秘密』(c)カンテレ

 「秘密を抱えすぎた人間は、いつか秘密に殺される」という言葉(少し前の映画のキャッチコピーに似たようなフレーズがあった気がする)から幕を開けた、火曜ドラマ『10の秘密』(カンテレ・フジテレビ系)。14歳になる娘・瞳(山田杏奈)を懸命に育ててきたシングルファザーの主人公・圭太(向井理)のもとに、娘を助けたければ元妻の由貴子(仲間由紀恵)を探せという一本の脅迫電話が届くことから始まり、セレブ暮らしをしているはずの元妻や娘の秘密などが次々と明らかにされていく。14日に放送された第1話を観る限りでは、ここ最近では珍しい正統派なサスペンスドラマといった印象を受ける。


参考:仲間由紀恵の登場シーンはこちらから


 シングルファザーで娘を育てる主人公が、音楽を習っている娘がいなくなり、彼女のSNSから交友関係などの秘密を知るという序盤のプロットだけを見ると、一昨年日本でも公開された映画『search/サーチ』を想起せずにはいられない。ところが中盤からは由貴子が虚栄を張りつづけた結果セレブ生活から転落してしまったという事実と、それによって行方をくらました彼女を圭太が捜すプロットへとシフトチェンジする。どちらもよくある話ではあるが、“誘拐”と“失踪”、サスペンスないしは不在ミステリーの定番を程よいバランスで組み合わせた点は見逃せない。しかも、警察がほとんど関与せずに一端のサラリーマンである主人公が2人を捜しつづけるというのも、地味でありながらなかなか高度なドラマ性、ストーリーテリングを必要とする脚本といえよう。


 それだけに、主人公が捜索の過程で出会う人物たちは何やら秘密を抱えているような人物ばかりという典型的なスタイルが見受けられるのもすんなり許容できる。由貴子の恋人だという宇都宮(渡部篤郎)しかり、圭太に協力して瞳を探してくれる幼なじみで保育士の菜七子(仲里依紗)も、単純なキャラクターではなさそうな憂いを帯びた表情を時折垣間見せる。また、しっかりとは登場していない音大生ピアニストの翼(松村北斗)も同様だ。


 そしてさらに、圭太自身にも隠している大きな秘密があるということが終盤で明らかにされる。しかもそれは元妻の由貴子と共有し、瞳のために隠し通そうとした秘密であるというのだ。ところが由貴子はそれをネタに誰かから脅迫されており、瞳は何らかの形で(おそらく秘密があるということだけを)知り、圭太に不信感を抱き始める。その秘密が何かということが、このドラマの大きな鍵となるわけだろう。もっとも、第1話の時点でロッジのようなものが燃え盛るシーンや、離婚前の圭太と由貴子と幼い頃の瞳がロッジの傍でバーベキューをしているシーンが圭太の回想として登場しており、いくらか推測は立てやすい。


 そうしたことを踏まえると、この『10の秘密』というタイトルは、単純に秘密が10あるということではなく、“10年前の秘密”ということや、もっとたくさんの秘密があるということを示唆するなど、様々な意味合いを持っているのだろう。いずれにしても、このまま不在のまま事が運ぶのかと思われた由貴子という存在が圭太の前に姿を表した第1話のラストシーン。西新宿の道路の高低差を活かしたこの対面シーンは、どことなく古風なサスペンスドラマのにおいが漂う印象的な場面ではなかっただろうか。 (文=久保田和馬)