2020年01月13日 09:51 弁護士ドットコム
「なんで自転車に乗るときに、ヘルメットをかぶらないといけないの?!」。
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神奈川県在住の主婦・モモカさん(加名・30代女性)は、息子のユウキくん(小学2年生)にこう言われ、戸惑っている。
ユウキくんは、「まわりにヘルメットをかぶっている子どもはいないし、まわりに『ヘルメットかぶってるなんて』とバカにされた。そもそも、おじいちゃんもヘルメットをかぶっていない。なぜ、自分だけがかぶらなければいけないのか」と怒っているようだ。
モモカさんは「安全のため」と答えたが、法律上、ヘルメットをかぶらなかった場合は罰則はあるのだろうか。西村裕一弁護士に聞いた。
ーー自転車に乗るときにヘルメットをかぶることは義務なのだろうか
「バイクや原付バイクについては、ヘルメットの着用が義務となっています(道路交通法71条の4第1項2項)。しかしながら、自転車でのヘルメット着用については、現時点では法律で義務づけられてはいません。
ただし、道路交通法では、児童または幼児を自転車に乗車させるときは、乗用車ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならないと定めています(同法63条の11)」
ーー「努めなければならない」とは、どういう意味なのか
「法律上『しなければならない』と『努めなければならない』とは意味が違います。『努めなければならない』というのは、できるだけそのようにするよう推奨するという意味です。
したがって、児童または幼児が自転車に乗るときは、ヘルメットをできるだけ着用させるようにしてください。『児童又は幼児』とは、13歳未満のお子さんをさします。
現時点では努力義務にとどまりますので、ヘルメットを着用しなかったとしても罰則はありません」
ーーユウキくんは「大人はなぜヘルメットをかぶらないのか。まわりの子どももかぶっていない」と怒っている。実際に大人もかぶった方がよいという意見もあるが…
「現行の法律では、自転車のヘルメットは13歳未満のお子さんに関してのみ着用が望ましいとなっていますが、各自治体が条例で自転車保険の加入と合わせてヘルメットの着用についても定める動きがあります。
特に、お子さんに関しては、ヘルメットを着用することで、頭部のけがの衝撃を少しでも軽減することができますので、着用が望ましいとは考えます」
西村弁護士が指摘するように、自治体による動きも始まっている。
自転車乗車時のヘルメット着用を努力義務とする条例を定める都道府県や市町村は増えている。中には、18歳未満や高齢者のヘルメット着用について定めた条例もある。
たとえば、「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」では、交通事故の防止・被害の軽減のために、大人を含む自転車利用者にヘルメットなどを利用するよう努めるものとされている(同条例19条)。
また、保護者は18歳未満の児童に乗車用ヘルメットを着用させるなどの必要な対策を行うよう努めなければならない(同条例15条)ほか、65歳以上の高齢者の親族や同居者は当該高齢者に対し、ヘルメットの着用などを助言するよう努めなければならない(同条例15条2項)とされている。
【取材協力弁護士】
西村 裕一(にしむら・ゆういち)弁護士
福岡県内2カ所(博多、北九州)にオフィスをもつ弁護士法人デイライト法律事務所の北九州オフィス所長弁護士。自転車事故も含め、年間100件以上の交通事故に関する依頼を受けており、交通事故問題を専門的に取り扱っている。
事務所名:弁護士法人デイライト法律事務所北九州オフィス
事務所URL:http://www.koutsujiko-law.com/