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会社推奨の「スキルアップ研修」なのに有休消化しないとダメ?

2020年01月12日 09:52  弁護士ドットコム

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「スキルアップ研修を受けるために有休を使わなければならないのでしょうか?」。こんな質問が弁護士ドットコムニュースのLINEに寄せられました。


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情報を寄せた人によると、外部のスキルアップ研修に行くことを会社は推奨しています。しかし、平日に有給休暇を取得するか、休日に行くかの選択肢しかないそうです。



「業務のスキルアップ研修なので、本来ならば勤務時間内に設定するものだと思うのですが…」と相談者は疑問を感じています。



業務に必要なスキルアップ研修に参加するために、有休を使わなければならないのでしょうか。佐藤正知弁護士に聞きました。



●業務命令として受講した場合、研修時間は「労働時間」になる

「まずはじめに、スキルアップ研修が業務命令だったか否かについて、考える必要があります。業務命令として研修を受講する場合には、使用者の指揮命令下にあるため、研修時間も労働時間となるからです。



この場合、所定の労働日・時間内に受講したのであれば、有給休暇を使う必要はありませんし、所定労働時間外や休日に受講したのであれば、時間外労働手当や休日労働手当が発生します」



ーー情報提供者によると、会社がスキルアップ研修の受講を推奨していたようです。このように直接受講を命じられていない場合は「労働時間」となるのでしょうか



「『推奨』の程度によります。また、研修の受講を直接命じられていない場合であっても、担当業務と密接に関係していたり、研修の受講やそれによる資格取得が人事考課の対象となっていたり、研修受講状況を使用者が把握していたりするなどの事情があるときは、使用者の指揮命令下にあると評価されます。



つまり、直接命じられていなくても、研修時間が労働時間であると評価される可能性があります」



●労働時間にあたるかは客観的に判断される

ーーもし、スキルアップ研修が「業務に必要」とまではいえない場合はどうでしょうか



「業務に関連する研修であっても、受講しなくても人事考課で不利益に評価されることもなく、受講が完全に任意であるような場合には、これを使用者の指揮命令下にある労働時間であると考えることは難しいでしょう。



その場合には、所定労働日(平日)に受講する際には、有給休暇を使う必要があります」



ーー使用者の指揮命令下にある労働時間にあたるか否かはどのように判断されるのでしょうか



「判例上、使用者の指揮命令下にある労働時間に該当するか否かは、労働者と使用者との合意などによらずに客観的に定まるものとされています。



このため、事前に、『研修を受ける場合には所定労働日に有給休暇を取得しなければならない』と説明されていた場合であっても、研修の受講が使用者の指揮命令下にある労働時間であると評価されるときは、有給休暇を使う必要はありません」




【取材協力弁護士】
佐藤 正知(さとう・まさとも)弁護士
神奈川県弁護士会所属。2017年度神奈川県弁護士会副会長。労働者側の労働事件を中心に取り扱う。日本労働弁護団常任幹事。神奈川過労死対策弁護団幹事長。過労死等防止対策推進全国センター幹事。著書「会社で起きている事の7割は法律違反」(共著・朝日新聞出版)等。
事務所名:横浜法律事務所
事務所URL:https://yokohamalawoffice.com/