バブル崩壊後の景気後退により、1990年代半ばから2000年代前半にかけて、就職難に直面した就職氷河期世代も現在は40歳前後になっている。転職を繰り返した、長く不正規雇用に従事した、などの理由から、平均年収がバブル世代より約50万円低いという指摘もある。
政府は昨年、『就職氷河期世代支援プログラム』を決定。3年間で計650億円超の予算を計上し、就職氷河期世代の正規雇用者を30万人程度増やすという目標を立てた。これを受け、原則禁止となっているハローワーク、民間の就職サイト、企業が手掛ける募集対象の年齢限定が緩和される方針が出されている。(文:ふじいりょう)
宝塚市の採用試験は408倍 自治体採用枠は最大で「10人ほど」
また、兵庫、愛知、和歌山の3県や、兵庫県宝塚市、岡山県岡山市、千葉県鎌ケ谷市などの自治体が、対象を就職氷河期世代に限定した正規職員の募集を実施。中央官庁でも内閣府や厚生労働省が採用応募の受け付けを開始しており、国家公務員の統一試験実施も決まっている。
宝塚市の採用試験では、1635人もの応募があり、当初の予定より多い4人が合格。競争率は408倍にのぼった。また、鎌ケ谷市の場合は、採用枠が7人で、職種は土木、保育士、保健師となっており、保育士や保健師には資格を持っていることが条件になる。兵庫県、岡山市などでは10人程度の採用になるとされている。
内閣府の募集では、氷河期世代のうち、高卒以上の学力を持っている人が対象。選考過程では、書類や論文、面接を課すことになっている。厚労省は、過去1年間に正規雇用の実績がなく、過去5年間で正規雇用の期間が通算1年以下の同世代を対象に設定しており、一般行政事務の係員として10人を採用する予定だ。
このように、各省庁や自治体の採用枠は、多くても10人ほどにとどまっている。これには「採用人数が少なすぎる」「合格できる人は普通に転職しても通用するのでは?」といった疑問が上がるのも無理はないだろう。
採用された場合の給与は? 内閣府「学歴、経験年数等を勘案して算定」
さらに、実際の給料がいくらになるのか、という問題もある。人事院によると、国家公務員(行政職)で大卒一般職の場合の初任給は平均17万9200円。総務省の『平成29年地方公務員給与実態調査』では、都道府県大卒一般行政職が18万3554円。市役所が18万0637円となっている。
このほか、赴任地の物価によって変動する地域手当、住宅手当、扶養手当や、ボーナスが加わる。前述の内閣府の募集では
「一般職の職員の給与に関する法律に基づき支給されます。給与額は、学歴、経験年数等を勘案して算定します」
との記載がある。経験年数など仕方ない部分もあるが、40代前半の平均年収とされる約460万円にどれほど近付くことができるのか注目したい。
政府は民間企業でも同様の施策を促しているが、そもそもの方針が3年後に30万人の正規雇用採用を目指すとされており、100万人いるとされる氷河期世代の残りはどうなるのか、という点や、23年度以降の計画には言及していない。
確かに、今回の支援策で救われる人は存在するし、実施することには一定の評価ができる。だが、現状の世代間格差に加えて、同じ氷河期世代の中でもチャンスを得た人と得なかった人の間に格差が発生する可能性もあるだろう。ネット上などで多くの就職氷河期世代から冷ややかな声が上がっているのは、こうした理由から一連の支援策が抜本的な解決につながらないと考えているからではないだろうか。