2020年01月11日 08:41 弁護士ドットコム
「知人の車を借りて運転していたところ、事故を起こしてしまいました」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。
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相談者によると、事故の原因は「私がほぼ悪いと思います」とのこと。しかし、知り合いの任意保険は運転者の家族限定となっており、相談者は任意保険に入っていない。
「私には貯金もなく、借りる相手もいません。相手に払えといわれた場合はどうすればよいのでしょうか」と相談者は不安を抱いている。
知り合いの車を借りて事故を起こし、保険に入っていない場合、どうすればよいのだろうか。山岡嗣也弁護士に聞いた。
ーー今回のように知人の車を借りて事故を起こし、無保険の場合はどう対応すればよいのか
「自分の過失で交通事故を起こした場合、事故の相手方の損害を賠償する義務があります。無保険の場合は、当然ながら保険を使用できないため、全てご自身で対応しなければなりません」
ーー相談者のように実費で支払うことができない場合はどうすればよいのだろうか
「賠償するのに十分な資力がなく、一括での賠償ができない場合には、相手方に減額や分割払いをお願いすることになります。分割での支払もできないとなると、破産などの法的な整理を検討することになります」
ーーもし加害者が「賠償できない」となった場合、被害者を救済するための制度などはあるのだろうか
「今回のケースのように知人の車を借りて運転し、被害者が事故によって負傷(または死亡)した場合、『自動車損害賠償保障法』によって、車の所有者である知人も被害者の負傷(または死亡)に対する損害賠償責任を負います。
このため、被害者は車の所有者に対して、負傷(または死亡)に対する損害賠償請求をおこなうことができます」
ーーつまり、車を貸した側にも責任が生じるということだろうか
「はい。上記のとおり、貸した側である車の所有者も被害者の負傷(または死亡)に対する損害賠償責任を負います」
ーー被害者はほかにどのような救済を受けることができるだろうか
「被害者は、負傷(または死亡)の損害について、車の所有者の自賠責保険に被害者請求をすることができます。万が一、車の所有者が自賠責保険に加入していない場合(自動車損害賠償保障法に違反しています)には、政府の自動車損害賠償保障事業を用いて、損害のてん補を受けることができます。
ただし、自賠責保険あるいは政府の自動車損害賠償保障事業で支払われる金額には限度額があります。そのため、この限度額を超える損害は加害者に請求せざるを得ません。
また、被害者は自己の任意保険の無保険車傷害保険や人身傷害保険を用いて、一定の補償を受けることもできます」
【取材協力弁護士】
山岡 嗣也(やまおか・つぐや)弁護士
関西大学法学部卒。平成18年弁護士登録。広島弁護士会。
広島県呉市の弁護士。主な著作(共著)は、「Q&A会社のトラブル解決の手引」(新日本法規出版)、「談合被告事件・副市長の職を奪った冤罪事件」(季刊刑事弁護2009年60号)
事務所名:山岡法律事務所
事務所URL:http://www.yamaoka-law.jp/