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『CES 2020』注目浴びたソニーの次世代自動車とトヨタの「スマートシティ」、海外メディアはどう報じた?

2020年01月11日 07:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 米国最大の消費者向け電子機器の見本市『CES』(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)が、1月7日~10日に米国ネバダ州ラスベガスで開催され、各社の発表は、センセーショナルな内容が目白押しだ。


(参考:Google「トロント・スマートシティ計画」が物議 “未来のユートピア”か、それとも“実験場”か?


・ソニーのコンセプトカーは衝撃的
 ソニーは、センサーやインフォテインメント・システム等のテストを兼ねて、コンセプトカー「Vision-S」をつくり、展示。開発を進めている車内のエンタメ環境から、自動運転技術を支える高解像度センサーまで、様々なプロダクトを紹介している。


 すべての座席には、独自の音響セットがあり、各ヘッドレストにスピーカーが組み込まれている。ソニーは「360 Reality Audio」と呼んでおり、乗客を音で包み込み、没入感のあるエクスペリエンスを演出する。これは、音響を得意とするソニーらしい仕掛けだ。


 運転席に座ると、ダッシュボードが端から端まで、フラットパネルLCDスクリーンになっている。安全確保のため、走行中は、運転手の目線からは、暗くなるか動画ではないものが表示されるという工夫が見られる。


 『ExtremeTech』は「CES 2020の衝撃は、ソニーのコンセプトカー」といった見出しで、「ソニーは自動車のテクノロジーサプライヤーとして、勢いを取り戻すことになるだろう」と報じている(参考:https://www.extremetech.com/extreme/304337-ces-2020-shocker-sonys-concept-car-showcases-sony-of-course-tech)。


・トヨタのスマートシティ計画、海外メディアはGoogleと比較
 ソニーが車まわりの技術やサービスを開発する一方で、自動車メーカーのトヨタも興味深い取り組みを紹介している。


 富士山のふもとにある175エーカーの自動車工場跡地に、トヨタ社員やその家族等、2000人が暮らすスマートシティ、その名も「Woven City」をつくる構想で、2021年末に起工予定だという。設計には、デンマークの著名建築家ビャルケ・インゲルス氏が携わっているとのこと。


 トヨタがモビリティ事業を行うのは非常に自然な成り行きだが、今回の発表は、そこから更に一歩踏み込んだ内容だ。スマートモビリティは、スマートシティとも密接につながっており、トヨタは、大資本を投入し、思い切って都市インフラの側にも本格参入するということが鮮明になった。


 『The Verge』は、トヨタの「Woven City」について、Googleが2017年に発表した、トロントのスマートシティ「Sidewalk Labs」プロジェクトとの比較も行なっている。トロントでは、テクノロジー企業によるデータ収集、住民監視、それに伴う収益化に地元住民の反対運動も起こり、Googleの当初の予定通りに進んでいない部分もある(参考:https://www.theverge.com/2020/1/6/21052324/toyota-woven-city-japan-bjarke-ingels-ces-2020)。


 一方で、トヨタの「Woven City」は、誰もいない場所にトヨタ社員中心の街をつくるということで、反対運動が起こることはまず考えられない。トヨタ自動車の豊田章男社長は、「研究者、エンジニア、科学者たちが、自動運転やモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)、ロボット、スマートホームコネクティッド技術、人工知能などのテクノロジーを自由に試すことが出来る。それもリアルな実証環境において」と自負する。


 これらの例を見ていくと、元々は音響メーカーのソニー、自動車メーカーのトヨタ、検索エンジンのGoogleといった大手企業が、様々な事業に参入し切磋琢磨していることがわかる。3社をはじめとしたこのような展開は、2020年代のAIやIoTによりもたらされる大きな変革期に際して産業の垣根を越える、2020年代における大手企業のあり方を示しているのかもしれない。


(Nagata Tombo)