トップへ

トラブル続出で「外国人の参拝禁止」を決めた神社が話題…「一律対応」に懸念も

2020年01月10日 20:02  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

外国人の参拝は全面的にお断りーー。そんな対応をとることにしたという長崎県対馬市の神社がネットで話題となっている。


【関連記事:「チリンチリンじゃねぇよ」歩道でベルを鳴らす自転車に怒りの声】



神職が1月8日、ツイッター上で「外国人の参入については、全面的に受け入れを無期限停止させていただきます」とつぶやいた。いったい何があったのだろうか。



●神職「韓国人観光客による不敬行為があった」

ツイートによると、この神社では、韓国人ガイドの暴言・暴力、韓国人観光客によるお守りの窃盗事件などを受けて、韓国からの団体旅行については改善策が示されるまでの間、境内の参入を断っていたという。



そんな中、2019年12月28日に韓国人ユーチューバーが神社で隠し撮りをし、神社および個人の人権を侵害する映像を配信したとして、ついに外国人の参入については全面的に断ることにしたという。



ただし、弁護士ドットコムニュースの電話取材に対して、神社側は具体的な内容を明かさなかった。



神社および個人の人権を侵害する行為はあってはならないが、外国人の参拝を全面的に禁止することに法的な問題はないのだろうか。作花知志弁護士に聞いた。



●今回の件と類似した事件が裁判例として存在する

外国人の参拝を全面的に禁止することに問題はないのか。



「あくまでもツイッターで公表されているものを拝見した上での個人的な感想を申しますと、このように外国人の参入を全面的に許さないとした措置は、法律上許されないとされる可能性があると思います。



今回の件に類似した事件は過去にもありました。



たとえば、日本国籍を有しない者はゴルフ場のクラブ会員となることはできないとしたゴルフ場の取り扱いについて、東京地裁平成7年3月23日判決は、『(そのような)取り扱いは、憲法14条の趣旨に照らし、社会的に許容し得る限界を超え、違法である』と判示しました。



また、公衆浴場が外国人客の入浴を一律拒否した取り扱いについて、札幌地裁平成14年11月11日判決は、『公衆浴場における入浴マナーに関連して行われた外国人一律入浴拒否は、(憲法14条、国際人権B規約等及び人種差別撤廃条約に照らし)違法である』と判示しています」



●信教の自由に対する必要以上の制限なのではないか

今回の件では、主にどのような点が法的に問題となるのか。



「神社への参拝という行為は、憲法20条で保障されている信教の自由という基本的人権に関わるものです。



基本的人権とは、人が人として生まれたことで当然に有する権利であり、国によって与えられた権利でも、憲法によって与えられた権利でもありません。憲法はその存在を確認している規範です。



外国人が何らかの問題行為を行ったとしても、それはその問題行為を行った人の問題です。何らかの問題行動があった場合には、その問題行動を行った者に対して事後的に民事法や刑事法に基づいて法的な対応を行うことが可能です。



にもかかわらず、問題行動を行っていない者に対してまで一律に参拝を禁止することは、基本的人権に対する必要以上の制限として、基本的人権が保障されている趣旨を失わせるものではないかと思います。



また、そのように考えることが、憲法の理念である「個人の尊厳(1人1人を尊重する)」に合致すると思います」



そのほかにも法的に問題はあるか。



「日本は、国際人権B規約や人種差別撤廃条約に批准し、基本的人権の国際的な保障を批准国相互に約束しています。



上でお話ししましたように、基本的人権は人が人として生まれたことで当然に有する権利なのですから、それが世界中のどの国においても同じように保障されるべき存在であることは明白です。



すると、そのような国際的な人権保障の観点からしても、外国人について一律に参拝を禁止することは、やはり基本的人権に対して必要以上の制限を課しているのではないか、と思います」



ツイートを前提にすると、神社側に同情すべき部分もあるが、「一律禁止」というのは難しい部分もありそうだ。




【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/