就職支援事業などを行うクロスキャリアが前科者・受刑者専用の就職サポートをスタートする。現在、各業界で人手不足が叫ばれている一方で、就業意欲や専門技能が高いにも関わらず就労先を見つけられない前科者がいる。
法務省の統計によると、刑務所に再入所した人のうち再犯時に無職だった人が約7割。仕事に就いていない人の再犯率は、就いている人の約3倍にのぼる。
同社は1月に設立されたばかり。鈴木将吾代表(24)は、
「前科のある求職者と、深刻な人手不足に悩む中小企業をつなぐプラットフォームを提供し、双方の問題を解決したいと考えています。仕事・住居がないため再犯をしてしまう人も少なくないため、前科者の就職の定着・職域拡大を行うことで、再犯率低下に繋げられたらと思っています」
と説明する。
「親からの愛情受けられないなど、環境に恵まれずに犯罪に走る人も少なくない」
鈴木代表自身も16歳から2年間少年院に入っていた。収容期間中に日記を書いて過去を振り返り、「周囲の人に迷惑をかけていた」と再認識。そこから一念発起して中学1年生の内容から勉強し直し、高卒認定試験や漢検準一級などに合格した。
退所後は法政大学に入学したが中退し、LGグループで海外営業などに従事。その後、外資系スタートアップや人材ベンチャーでさらなる経験を積み、今月7日に同社を創業した。
前科者の就職支援サービスを行うきっかけは、少年院時代感じた"環境格差"にあるという。
「私は幸い両親もいて恵まれた環境で育ちましたが、教育や親からの愛情が受けられないなど環境に恵まれず犯罪に走ってしまう人も少なくないということを知りました。それでも何かきっかけがあれば変われるのでは、と思いました」
求人は営業や不動産、建設、飲食がメイン 1年で200人の雇用創出を目指す
会社は設立したばかりではあるが鈴木代表は以前から前科者にヒアリングをしていた。現在、窃盗や詐欺、軽犯罪などの前科を持つ約30人の就職支援を行っており、すでに建設業に就職先が決まった20代男性もいる。
求職者の利用料は無料で、面談を行った上で、自己分析、履歴書作成、面接対策などをサポートする。対象者は原則最終学歴が高卒以上かつ29歳までとなっているが、これに該当しない人にも対応している。
現在、求人は営業職や不動産業、建設業、飲食業が多い。鈴木代表は「企業にお話をする時、やはり前科者ということでビックリされる方もいますが、しっかり説明をしています。特に営業・建設系は『そうなんだ』というくらいの企業が多い印象です」という。
「なぜ前科者の就職支援が必要なのか、どのようなキャリアサポートをしているかをお伝えしています。また出所者を雇用すると年間最大72万円の助成金が支払われることも説明しています」
年内に200人の雇用創出を目標にしており、今後はIT技術を生かしたエンジニア育成サービス等も提供していく予定だ。