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『カイジ』『るろうに剣心』 大作映画の人気シリーズ、ついに終幕の2020年

2020年01月02日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 こと日本において、世の中が大きな動きを見せそうな2020年。この年に、『カイジ』シリーズ(2009~)、そして『るろうに剣心』シリーズ(2012~)が、どちらもついに幕を閉じることになる。両作とも人気マンガの実写化作品で、いわゆる“大作映画”に分類されるものだ。


【写真】『るろうに剣心』クランクアップの現場


 『カイジ』といえば主演の藤原竜也にとって、『バトル・ロワイアル』シリーズ(2000-2003)、そして『デスノート』シリーズ(2006-2016)に並ぶ代表作の一つとして挙げられるものだろう。特にタイトル・ロールであるカイジ役は、そのキャラクター性と藤原の演技が見事な融合、化学反応を起こし、“藤原竜也=カイジ”と見る向きも多い。実際に筆者の周りにも、藤原のことを“カイジ”と呼んでいる者さえいるくらいだ。それほどまでに『カイジ』という映画、ひいてはカイジというキャラクターは強烈なインパクトを放ち、国民的キャラクターとまでなっているのである。これが足枷にならないのが、やはり藤原が平成の演劇界に登場した天才だといわれたゆえんでもある。映画では毎作品、熱量の高い役どころに配され、オーバーな演技アプローチを繰り返してはいるものの(これは周囲が彼に求めているものでもある)、だからといって、藤原を見て「またカイジだ!」となっていないのは周知の事実。ここから分かるのが、やはりカイジが藤原にとって最大のハマり役なのだということだ。


 一方の『るろうに剣心』シリーズで主演を務めているのは佐藤健。彼が演じたのも『カイジ』の藤原と同じく、タイトル・ロールだ。アクションが売りの本作以前にも、佐藤は自身の身体能力の高さを披露してはいたが、どちらかといえば線が細い青年といった印象の方が強かった。だが本作で、その俊敏かつ豪快な“アクション俳優”としての一面を開花させた。といっても、本作はアクションばかりが見どころではない。派手なアクションが繰り広げられるに至るには、もちろん土台となるドラマが展開される。ここで佐藤は演じる役の複雑な内面をその言葉と所作に乗せることで、いち俳優として底しれぬポテンシャルを秘めていることを世に知らしめた。シリーズ開始からまだ7年しか経っていないが、いまでは佐藤が硬軟自在なトップ俳優の一人であることを疑う余地はないだろう。


 さて、シリーズ2作品とも前作の公開から大きく期間を空けているが(『カイジ』は9年、『るろうに剣心』は6年)、きたる2020年に幕を閉じるというのはどういうことなのか。『カイジ』シリーズ最新作『カイジ ファイナルゲーム』が公開されるのは年明け間も無くのことで、他方『るろうに剣心 最終章 The Final』と『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が公開されるのは夏だ。それも後者は、2014年公開の前作『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』と同様に、2作連続での公開となる。シリーズ開始からこれまでの時代の流れの中で、それぞれの作品の顔となる二人の俳優が大きな変化を経てきたのは先述したとおりだ。来年は“2020年代”という新たなタームが始まり、東京オリンピックが開催。話題作となること必至の作品をあてることで、記念すべき一年を祝祭的に飾ろうという狙いがあるのかもしれない。


 しかしだ、『カイジ ファイナルゲーム』で描かれるのは、2020年・東京オリンピック後の、景気が最低に落ち込んだ荒廃した東京とそこに息づく人々の姿。なんとも忌々しい設定ではあるが、先行きが不透明な私たちの世界の、一つの姿を示しているのかもしれない。だが、これを映画で描くからこそ、エンターテインメントの力というものを感じられるのも確かだ。


 2020年は、やはり大きな変化を迎える年となるのだろう。それは分かりきっていることだが、二人の俳優も自身の分身とも言えるであろう役の“人生”から降りることになるわけで、現在の日本映画界を牽引する彼らにとっても節目の年となりそうである。そんな彼らの集大成である作品が、どうにも不安な2020年をエンターテインメントの力で盛り上げてくれることを楽しみに歩んでいきたい。


(折田侑駿)