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一世を風靡したグループから輝かしい転身 2019年版、 元アイドル女優の勢力図

2019年12月30日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

サッポロビール「第96回箱根駅伝用オリジナルCM」に登場する西野七瀬

 AKB48を皮切りに、その派生グループから公式ライバル、他にも同じ事務所の若手女優たちで結成されたグループがあったり、テレビ番組の企画から誕生したり、地下アイドルであったりと、とにかく様々なアイドルグループが乱立した2010年代。一時は“アイドル戦国時代”とまで謳われたが、現在では少しその勢いもひと段落しただろうか。しかしそれに合わせて、近年ではそれぞれのグループで一時代を築き上げたフロントメンバーがグループを卒業し、女優業へと転身するケースが目立ち始めた。


 必然的に、すでに女優業一本で歩んできた者や、モデル出身者など、様々なバックグラウンドを持つ者たちで群雄割拠となっている若手女優界に大きな風穴を開ける存在となっていることは言うまでもない。既存のネームバリューや大所帯のグループで磨き上げてきた存在感。これらが彼女たち“元アイドル女優”の最大の強みといえるだろう。今回は、2010年代に一世を風靡したグループから女優へと転身を遂げ、この2019年にひときわの輝きを放った若手女優をピックアップしてみたい。


【写真】『あな番』で一世を風靡した西野七瀬


■国民的アイドルグループから“国民的女優”へ


 まずは2年連続で日本レコード大賞に輝き、かつての“AKB48の公式ライバル”との位置づけから、すっかり逆転して“国民的アイドルグループ”としての地位を確立した乃木坂46から。同グループではここ3年ほどで、結成当初に加入した1期生の卒業が相次ぎ、世代交代の時期に差し掛かっていると見えるが、そうした中で一番の注目株はやはり、昨年末に卒業した西野七瀬で間違いない。2019年に本格的に女優として始動し、いきなり大きな飛躍を見せたわけだ。


 4月から半年にわたり放送され、年末の「新語・流行語大賞」にノミネートされるほどの大反響を巻き起こした『あなたの番です』(日本テレビ系)で、(いまさらネタバレも何もないとは思うが念のため……)物語上の極めて重要なキャラクターである黒島沙和役を演じた西野。放送開始序盤から彼女が黒幕ではないかという様々な憶測が飛び交い、終盤にはその一挙手一動足に注目が注がれることとなった。その後も3年ぶりにアニメ声優に挑戦した『コルボッコロ』で主役を務めるなど、活躍の場を拡大。乃木坂46時代に出演した『あさひなぐ』や『初森ベマーズ』の頃より確実に演技の質もグレードアップしているだけに、来年もさらに進化していくに違いない。


 そして2016年に卒業した深川麻衣は、現時点での乃木坂46卒業女優のトップを走り続ける存在と言っていいだろう。昨年公開された『パンとバスと2度目のハツコイ』につづいての今泉力哉監督作への出演となった『愛がなんだ』に、人気ドラマの続編『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)など、ラブストーリーやコメディ要素が強い作品が続いているだけに、別路線の演技も見ておきたいところだ。また『潤一』(カンテレ)でイメージを覆す演技を披露した伊藤万理華、年明けから出演映画が立て続けに公開される若月佑美も注目しておきたいところだ。


■勢いづく“公式ライバル”を迎え撃つ「48グループ」


 現在の“元アイドル女優”の勢力図で、トップの地位に立っているのは前田敦子ではないだろうか。AKB48を国民的人気グループにのし上げた立役者でもあり、卒業後も出演作が後を絶たない。もはや“元アイドル女優”というレッテルからも卒業しようという勢いだ。この2019年には公私ともに充実した1年だったであろう前田は、黒沢清監督の国際共同制作作品『旅のおわり世界のはじまり』で主役を務めたほか、5本の映画に出演。第11回TAMA映画賞の最優秀女優賞も受賞し、年明け以降に続々発表される各映画賞でもセンターを飾る可能性が充分であろう。


 他にも元AKB48グループ組では、『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(日本テレビ系)や大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)、さらにはアニメ映画『きみと、波にのれたら』と上半期に出演作が続き、結婚と出産も発表する充実一途の川栄李奈。ブレイクの登竜門である朝の連続テレビ小説『なつぞら』(NHK総合)でヒロインの同僚を演じた渡辺麻友、そして2018年春にNGT48を卒業し、卒業後初の主演映画『映画 としまえん』が公開された北原里英と、黄金時代のAKB48を支えたメンバーが徐々に女優としての頭角を現しはじめているのは見逃せないところだ。


■「乃木坂46」「AKB48」、二大グループに挑むのは……


 前述した2つの大きな勢力に真っ向から立ち向かうのは、やはり乃木坂46と同じ「坂道シリーズ」でありながらも一線を画す欅坂46だろうか。まだ卒業メンバーは多くない中で、昨年秋に同グループを卒業後、舞台やモデルなど様々なフィールドで着々と積み上げてきた今泉佑唯が、このところ急激に勢いを増している印象を受ける。10月クールには深夜枠ながらも2本の連続ドラマに出演。年明けには出演映画『酔うと化け物になる父がつらい』が公開され、主演舞台『あずみ~戦国編~』も控えている。2020年に確実に大化けする逸材ではなかろうか。


 他にも“元アイドル女優”といえば、ご当地アイドルグループRev. from DVLの解散とともに女優として急成長した橋本環奈も2019年には本格化し、元ももいろクローバーの早見あかりも2021年公開の『シン・ウルトラマン』への出演が決定。元SUPER☆GIRLSの浅川梨奈は2019年だけで9本の出演映画が公開されるほどの引っ張りだこな状態となっており、同グループ出身者では舞台をメインに活躍つづけている前島亜美も気になるところだ。


 また、女優と並行してアイドル活動を行っていた経歴を持つ葵わかなも、2019年にはミュージカルに挑戦。来年には『アナスタシア』で主演を飾り、映画化される『キャッツ』の日本語吹替え版も務めるなど同年代の若手女優では群を抜いてそのマルチな才能を発揮している。そして元さくら学院のメンバーだった三吉彩花も、主演映画『ダンスウィズミー』が海外の映画祭で高評価を獲得し、2020年にはホラーヒロインを務める『犬鳴村』が待機。今後ますます増え続けていくであろう“元アイドル女優”は2020年以降に熾烈を極め、この界隈だけで戦国時代に突入することだろう。


(久保田和馬)