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日向坂46が紅白初出場。“キュン”で体現する「ハッピーオーラ」

2019年12月26日 19:31  CINRA.NET

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日向坂46
今年の3月にシングル『キュン』でデビューした日向坂46(ひなたざかふぉーてぃーしっくす)が12月31日放送の『NHK紅白歌合戦』に初出場する。デビュー以降、現時点までにリリースされた3枚のシングルは全てオリコン週間シングルランキング初登場1位、初週40万枚超えを記録し、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナといった会場でのライブや、テレビ、舞台、ラジオ、CM、雑誌など様々なフィールドで活動しているが、3月にデビュー、と言っても日向坂46は、今年になって彗星のごとく現れたわけではない。ここではすでに始まっている年末の歌番組で初めて見る、見た、あるいは名前は聞いたことあるけれど……、という人に向けて日向坂46がどのようなグループであるかを、その歩みと共に振り返ってみたい。

■欅坂46の「アンダーグループ」として誕生。けやき坂46から日向坂46へ

乃木坂46、欅坂46に続く「坂道シリーズ」のグループとしてデビューした日向坂46は、日向坂46となる以前は、けやき坂46として活動していた。

このけやき坂46というのは、2015年8月に誕生した欅坂46に長濱ねるが途中加入したことをきっかけに、当初、欅坂46の「アンダーグループ」として(https://www.keyakizaka46.com/s/k46o/news/detail/462089)同年11月に長濱ねるひとりで結成されたグループであり、「新しく長濱ねるの仲間を集めよう」ということで集まったオーディション合格者11人と長濱ねるの12人で2016年5月にそのキャリアを本格的に始動させた。

「漢字欅」の欅坂46に対して「ひらがなけやき」と呼ばれたけやき坂46が初めて音源に参加したのは、欅坂46の2ndシングル『世界には愛しかない』(2016年8月発売)のカップリング曲“ひらがなけやき”であった。つまり、2016年4月にシングル『サイレントマジョリティー』でデビューした欅坂46と音楽活動の開始時期自体はそれほど変わらないことになるが、「アンダーグループ」とは言っても欅坂46に昇格するメンバーがいたわけでもなく、2017年9月にはグループの創始者とも言える長濱ねるがけやき坂46の兼任を解除され、欅坂46専任になるなど、「自分たちの存在意義が分からなかった時」もあったという彼女らは、2016年5月から数えて東京・三田の日向坂(ひゅうがざか)に由来する日向坂46と改名するまでのおよそ3年の間に、2期生、3期生の加入や、欅坂46の代打として急遽、1日公演から3日公演を行なうことになった日本武道館公演、オードリーをMCに迎えた冠番組『ひらがな推し』(現『日向坂で会いましょう』)の放送開始、けやき坂46名義でのデビューアルバム『走り出す瞬間』のリリース、舞台やドラマ出演など様々な出来事を経て、現在、活動休止中の影山優佳、濱岸ひより、井口眞緒を含む20人で活動している。

■変わったことと、変わらないこと。ファンダム名称「おひさま」の命名で生まれた共生性と、受け継がれる「ハッピーオーラ」

改名にあたってグループカラーが「緑色」から「空色」に変更されたことに加えて、メンバー自身の発案によりファンは「おひさま」と呼ばれることになった。とりわけ後者の点はメンバー発信によるファンの総称を持たない乃木坂46、欅坂46とは大きく異なる点である。

ファンを「おひさま」と呼ぶことで日向坂46は、「おひさま」が存在するから「日向」が存在するという「共生性」をより明確に打ち出しており、その「共生性」は、たとえばキャプテンの佐々木久美が「おひさまにお願いがあります『My god』のサビで『マイガッ』という声があるのですが、そこをみんなで一緒に言ってもらいたいです!」と呼びかけたり 、「おひさま」の考案により“JOYFUL LOVE”のパフォーマンス時に、メンバーがそれぞれ着ている衣装の色に合わせて会場をペンライトで「虹色」に染めたりすることなどにも現れている。

だが、変わったことばかりではない。日向坂46がモットーとして掲げる「ハッピーオーラ」は、欅坂46の7thシングル『アンビバレント』(2018年8月発売)に“ハッピーオーラ”という楽曲が収録されているように、けやき坂46時代から受け継がれたものであり、その「ハッピーオーラ」を全面に押し出したのが、『NHK紅白歌合戦』で披露されるデビュー曲“キュン”である。

では「ハッピーオーラ」とはなにか。それはたとえば<キュンキュンキュンキュン>と繰り返されるフレーズと共に「君」に恋に落ちた瞬間の「僕」の心境を歌った“キュン”のPVで、<かわいい>と囁くセンターの小坂菜緒のカメラ目線から目を逸らさず、その瞳を直視し続けたあとに(見る者のうちに)そよぐ「風」のようなものであり、グループカラーの「空色」を基調とした衣装をまとったメンバーたちが、「おひさま」の光が窓に差し込む教室から、「空色」が広がる校庭へと移動するにつれて徐々に光度が増してゆくPVの構成も「ハッピーオーラ」の醸成に寄与している。

続いて7月にリリースされた2ndシングルのタイトル曲“ドレミソラシド”でも、<ドレミドレミドレミ>と耳に残りやすいフレーズと共に、<友達だって 油断してた>ら<いつの間に ドレミの矢に射抜かれた>、「僕」と「君」の関係が歌われている。PVでも西日や、教室の白いカーテンを揺らめかす風、「空色」のプールを照らす光などポカリスエットのような清涼感を感じさせ、“キュン”の延長線上にある。

■日向坂46が示す表現の振れ幅。一色に限定されない「空色」の多彩さ

同系統の楽曲を矢継ぎ早に発表することで日向坂46の方向性はある程度、決定づけられたと言えるが、10月にリリースされた3rdシングルのタイトル曲“こんなに好きになっちゃっていいの?”では、「僕」から「君」への恋心を描いた“キュン”“ドレミソラシド”の雰囲気とは一転して、「私」から「あなた」への恋の切なさが歌われており、オーケストラを従えたPVでは、これまでの「空色」の衣装から、それぞれ異なる衣装、異なるドレスに着替えて、“キュン”“ドレミソラシド”をはじめ日向坂46の振付を数多く担当するCRE8BOYが手掛けたダンスを披露するなど、日向坂46の表現の振れ幅の大きさを示している。

ときに「僕」となり、ときに「私」となって色とりどりの「ハッピーオーラ」を振りまく日向坂46の表現の幅の広さは、言い換えると、現実の「空色」というものが青色系統の色を基本としながらも時間帯や季節、天候、地域により様々に変化するものであるように、日向坂46のグループカラーである「空色」が一色に限定されず、多彩であること(variety)を物語っている。つまり、“ドレミソラシド”の<こんな好きになると思っていなかった>という歌詞と、“こんなに好きになっちゃっていいの?”の<こんなに ねえこんなに好きになっちゃっていいの?>という歌い出しが呼応して響くように、それぞれ個別の色を持った3つのタイトル曲は同じ「空色」のもとにある世界の出来事として繋がっているのである。

グループカラーの「空色」の多彩さは、バラエティー番組などでも遺憾なく発揮されている日向坂46の多彩さをそのまま表しており、たとえば『こんなに好きになっちゃっていいの?』のアーティスト写真(メイン画像参照)で身につけている山吹色の衣装や、全員が揃うと虹色になる“JOYFUL LOVE”のPVの衣装、メンバー間でそれぞれ微妙に異なる水色とピンク色に分かれた“キツネ”(『ドレミソラシド』に収録)のPVの衣装、同じくメンバー間でマスタード色と明るい黄色に分かれた“ホントの時間”(『こんなに好きになっちゃっていいの?』に収録)のPVの衣装は、「空色」の変奏(variation)として日向坂46の魅力を後押ししている。

■センター・小坂菜緒だけではない。輝く個が寄り添うグループ像

そうした日向坂46の多彩さを、現時点で発表されている全てのタイトル曲のセンターとして、つまりグループの「顔」として制度的に引き受けているのが、けやき坂46の2期生として2017年8月に加入した小坂菜緒であるが、日向坂46の各PVに目を向けてみると、2002年生まれの小坂菜緒を中心としながらも、相対的にメンバーそれぞれの表情や仕草に目が向けられる、つまり大人数の中でも「推しメン」がPVのどこに映っているのかを比較的容易に発見することができるように作られていることがわかる。各メンバーに光が当たるようにPVが構成されているのは、グループの中で個があからさまに埋もれていたら――それは「ハッピー」ではない――「ハッピーオーラ」を発揮することはできないからであり、日向坂46は、それぞれ輝く個が寄り添うことで「ハッピーオーラ」を届けているのである。

■同じく『紅白』初出場のKing Gnu井口理との交流も話題に

ところで、日向坂46の『NHK紅白歌合戦』初出場について、同じく今年メジャーデビューし、『NHK紅白歌合戦』初出場となるKing Gnuの井口理は、自身がパーソナリティーを務める『King Gnu井口理のオールナイトニッポン0(ZERO)』の11月21日放送回で「この番組のアンオフィシャルシスターこと、僕の妹、日向坂46のべみほちゃんも初出場ということでやったね。でも負けないぞ」と意気込みを語っているほか、9月26日放送回では、9月にさいたまスーパーアリーナで行なわれた日向坂46のワンマンライブで「一番笑顔になった曲」として“キツネ”を紹介し、「令和の“LOVEマシーン”」と評している。

自身のブログで同番組のリスナーであることをたびたび公言している「べみほちゃん」こと渡邉美穂は、先のライブを訪れた井口理について「井口さんもおひさまの仲間入りだ~ やった~!!」と記しており、井口理が「ハッピーオーラ」を浴びている場面が見られるかどうかも『NHK紅白歌合戦』の見どころのひとつである。

■ドラマ主演、新シングル、アリーナツアーに初の東京ドーム公演。2020年はさらなる飛躍へ

日向坂46は『NHK紅白歌合戦』に加えて、12月27日の『MUSIC STATION ウルトラSUPERLIVE』(テレビ朝日系)や、12月30日『第61回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)をはじめとする多数の大型年末音楽特番への出演を控えている。さらに1月には夢を叶えるために奮闘する少女たちの姿を描く主演ドラマ『DASADA』の放送、2月19日には4thシングルのリリース、3月から5月にかけては全国5会場を巡る『春のアリーナツアー2020(仮)』、そして12月6日と7日には初となる東京ドームで『ひなくり2020』の開催も決まっている。

日向坂46の快進撃は、かつてけやき坂46時代の楽曲“イマニミテイロ”(欅坂46のシングル『ガラスを割れ!』に収録)で<イマニミテイロ どういう色だ? 唇噛み締めながら頑張って来た色 心の奥で何度も呟いた 言葉は何色? いつの日にかミテイロ>と歌った彼女らがたゆみなく蒔き続けた種が実となり、花となりつつあることの証であり、来年もさらなる飛翔が期待される。

(文/原友昭)