いい高校に入り、いい大学を出て、いい企業に就職すれば一生安泰。終身雇用で雇用が守られ、年功序列で給料もあがり、退職金や年金ももらえる──。一昔前はそんな働き方が理想とされましたが、今は状況がガラッと変わっています。
経団連の中西宏明会長が今年5月、「終身雇用は限界」と発言し物議を醸しました。トヨタ自動車の豊田社長も「終身雇用維持は企業にとってインセンティブがない」「これ以上の最低賃金の引き上げは企業がもたない」と終身雇用について維持が難しいと表明しました。
これまでは正しいとされてきた方法やセオリーが通用しない時代になりつつあります。その中で生きていくためには、どのような自己マネジメントが必要なのでしょうか?(文:ビジネスコーチ 駄田井 一孝)
「何かを手に入れたら安心」という前提を見直してみる
今までは当たり前のように整っていた制度や、こうすればうまくいくという方法が通用しなくなってきている昨今。今後は、今の安心が将来に渡って保証されるわけではない、ということを前提に生きていく必要があります。
いい大学を出たとしてもいい企業に入れるとは限りませんし、いい企業に入ったとしても安泰とは限りません。お金を沢山持っていたとしても失う可能性がありますし、いま健康に過ごせていたとしても、この先健康に過ごせるかどうかは分かりません。結婚すれば幸せになれると考える人もいますが、結婚して幸せになれるかどうかはやってみないと分かりません。結婚して幸せに過ごしてる人とそうではない人がいるのが現実です。
地位や肩書き等、何かを手に入れれば安心できる。こう生きれば幸せになれるといった"正解"を私たちは求めてしまいますが、これまでの価値観を見直してみることが必要です。
つい先日、私は忘年会の幹事を引き受けました。お店を選び、誕生日のメンバーのお祝いの準備をしていましたが、当日2人が体調不良で参加出来なくなりました。私たちは、予定通りの未来を想定して生きていますが、"予定通り"に行えることは当たり前ではありません。
そう考えると、予定通りに人に会えたり話が出来たりするのは本当に幸せなことだと思えます。こうしてコラムを書き、いま目の前のあなたにメッセージを届けることが出来ている。それは本当に光栄で幸せなことです。
目の前のことに対して最善だと思える選択と行動を積み重ねる
未来がいかに不確実なものであるのか、いくつか例を出してお伝えしましたが、決して不安を煽ろうと思っているわけではありません。不確実な未来だからこそやっておきたい自己マネジメントの方法が、目の前のことに対して最善だと思える選択と行動を積み重ねることです。
会社に入ったから一生安泰だと考えるのではなく、「今、目の前の仕事に対して私はどんな貢献が出来るだろうか?」「組織の課題に対してどんな手が打てるだろうか?」「もっと効果的なやり方や方法はないか?」と日々、最善を尽くす。
不平不満を言うのではなく、今いる場所は自分が選んだ最善の選択だと捉え全力を尽くす。どうしても今いる場所で力を発揮できないようであれば、新たな居場所を見つける準備をする。未来は本当に何が起こるのか分からない。だからこそ最善だと思える選択と行動を積み重ねる。
身の回りの状況は刻一刻と変化していきますし、昨日のあなたと今日のあなたはすでに違っています。あなたの世界に起きていることはどの瞬間もかけがえのない瞬間です。過去の選択に対して、ああ、この選択をしなければ良かった。と思うこともあるかもしれません。
それはそれでOKです。人は何も失敗せずに何も間違わずに生きていくことは出来ません。失敗をし、間違えるからこそ、そこから学び、次にどうしていこうか?という発想を持つことが出来ます。
楽しいことも嬉しいことも、辛いことも悲しいことも起きるのが人生です。今まで正しいと思っていたことが今後もそうとは限らない。何かを手に入れたら安心というわけではない。そんな世界を、日々かけがえのない自分という存在と一緒に生きていきましょう。
【プロフィール】
駄田井一孝(だたいいっこう) ProLeader代表/ビジネスコーチ
ビジネスコーチング実践会
https://www.1pro-leader.com/
1977年大阪府堺市生まれ。秋田県立農業短期大学卒業後、モーグルスキー選手として活動。2001年の長野国体に大阪代表選手として出場。選手引退後、豊中市消防本部に入社。消防士在職中に、対話を通して人の行動と能力を引き出すコミュニケーションスキル、コーチングと出会いトレーニングを開始。2004年にビジネスコーチとして独立し、経営者・経営幹部・個人事業主を対象に個人面談を通して目標達成のサポートを行う。個人面談の延べ人数400人以上。「この選択でよし!この自分でよし!」と日々、自分の存在に力づけられながら、望んでいることを実現していくことをサポートしている。