2019年12月26日 12:32 リアルサウンド
喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)の夫婦が子宝にも恵まれ、より賑やかさを増していた川原家。ところがここで、その賑やかさの中心でもあった喜美子の父・常治(北村一輝)がこの世を去った。
連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第76話では、常治の葬儀が安らかに行われた。それからしばらくして、妹の直子(桜庭ななみ)が見知らぬ男を連れて信楽に帰ってくる。
【写真】常治の最期
常治のあのキャラクターがクセになっていただけに、もう会えないのだと思うと寂しく、今日もまた涙がこぼれてきた。信楽のパートでは、つねに彼が盛り上げ役として、物語の中心に立っていたように思う。演じた北村一輝も最後に名演を残し、“ロス状態”を感じている人も多いはずである。
そしていよいよ本当に、喜美子と八郎がこの物語の中心に立っていくこととなる。子も生まれ、経済的にも自立し、いろいろな意味で二人は大人になった。そんな二人は常治の葬儀後、久しぶりにゆっくりと言葉を交わした。喜美子いわく、こんな時間は子どもの武志が生まれて以来なかったのだという。どうやら私たちの知らぬ間に、彼らの間にはすれ違いが起きていたようだ。喜美子はどちらかと言えばガサツな性格で、八郎は絵に描いたようなマジメな男。例えば喜美子が武志のシャツを適当にたたんでタンスにしまうと、それをわざわざ八郎が引っ張り出してはたたみ直したりするらしい。
これを八郎は不満に思っていないようだが、喜美子は不満に思っていたようだ(筆者が喜美子であれば、「ラッキー!」と思って甘えてしまう)。しかしこれは性格の問題なのだからしょうがない。今後も八郎の望むようなシャツのたたみ方を喜美子はできないかもしれないし、どれだけ喜美子が上手くシャツをたたんんでも八郎は納得しないかもしれない。そして二人が出した答えは、それを素直に受け入れ合っていこうということ。彼らにはまだまだ、乗り越えていかなければならない壁があるのだ。
そうして最終的には、八郎が改めて「好き」という言葉を口にし、喜美子も「あんたしかおらん。あんたがおらんと生きていけへん」と仲がより深まる軽いイチャイチャ展開へと進む。常治がいたら「なんやねん! この茶番!」と、ちゃぶ台をひっくり返してくれそうだが、もうそんなことを考えても仕方がない。温かく見守ろうではないか。
それからしばらくした、雪の降りしきる冬のある日。ふいに直子が帰ってくる。それも鮫島(正門良規)という快活な男を引き連れてだ。彼のチャラついた雰囲気も相まって、喜美子の中にはふつふつと込み上げてくるものがある。むろん、父の死に目に会わなかった直子に対する怒りだ。ところが喜美子が問い詰めたところ、常治が「帰ってくるな」と言ったから彼女は帰ってこなかったのだという。これまで直子は、さんざん常治の言うことを聞いてこなかった。だから最後くらいは、言うことを聞いてやろうと思ったのだという。それに彼女には、強がりな父の意地と誇りを大事にしたいという思いもあったようだ。だから直子の中には、鬱陶しくて暑苦しい父の姿しかいないのだ。永遠に。ところで、“部外者”ということで外へとつまみ出されたこの鮫島、さて何者なのか……。
(折田侑駿)