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実母も「歩き方までそっくり」と驚き 『リチャード・ジュエル』主演俳優が役作りを明かす

2019年12月25日 15:02  リアルサウンド

リアルサウンド

プレミアで再会したポール・ウォルター・ハウザーと、彼が演じたリチャード・ジュエルの実母ボビ

 クリント・イーストウッド監督最新作『リチャード・ジュエル』で主人公リチャード・ジュエルを演じたポール・ウォルター・ハウザーのインタビューが到着した。


参考:英雄視された男が“メディアリンチ”に クリント・イーストウッド監督作『リチャード・ジュエル』予告編


 本作は、1996年のアトランタ爆破事件で容疑者となったリチャード・ジュエルの実話をもとにした物語。リチャード・ジュエルは、アトランタ爆破事件の第一発見者として数多くの人々を救った英雄として報道される。だが、事件からわずか3日後、事件の第一容疑者として実名報道され状況は一転、爆弾犯の汚名を着せられる。情報は瞬く間に拡散し、メディアによる連日の報道で、彼は名誉だけではなくプライバシーまでをも奪われてしまう。そんな時、潔白を信じる世界一無謀な弁護士ワトソンが立ち上がる。だが、ふたりの前に立ちはだかるのは、国家の威信をかけて爆弾犯の早期逮捕を急ぐFBI、スクープという獲物に容赦なく襲いかかる“メディアリンチ”の罠だった。容疑者リチャードとその潔白を信じるワトソンは、巨大権力に向かって反撃を開始する。


 英雄から一転して“爆弾犯”の汚名を着せられた主人公リチャード・ジュエルを演じたハウザーは、これまでも『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』や『ブラック・クランズマン』で実在の人物を演じてきた。今回、そんなハウザーの心を動かしたのは、『キャプテン・フィリップス』のビリー・レイの脚本に込められたテーマだった。「脚本には、捜査の表と裏、彼が受けた不当な扱い、そしてあの悲劇的な状況によって、全人生が壊されなかったとしても、変わってしまった男に対する贖罪を描いていた点が気に入った」と指摘し、SNSが定着した今、ある日突然被害者にも、加害者にもなり得る現代人にとって他人ごとではない脚本に共感したという。


 「これはある意味で、勝ち目のない男のストーリーだ」と語るハウザーは、「リチャードはずっと警官になりたかった男で、警備員や保安官のもとで働いてきた。だが、彼が法執行機関を尊敬するのと同じようなかたちで敬意を受けたことは一度もなかった。あの瞬間、彼がアトランタの公園で何百人もの人命を救ったときは、彼にとって栄光の瞬間として始まる。ようやくあの敬意を人々から受けられるんだ」と思いを馳せる。「それでも彼は控えめさを失わない。だが、残酷な運命のいたずらか、彼は逃げ場のない状態に追い込まれる。それでもリチャードはFBIが彼の汚名を晴らしてくれはしないということを信じようとしないから、状況はどんどん悪くなっていく」と、容疑者となってもなお、潔白な自分は逮捕されるはずがないと信じるリチャードの複雑な立場を代弁する。


 さらにハウザーは、「役者冥利に尽きるけれど、モノマネにはしたくない。その時代、その場所からにじみでる独特の雰囲気を自分の中から出したい。そのために、リチャードをじっくり観察し、彼の声、魂、“優しい大男”的な雰囲気、そして、彼が信じていた法執行官への憧れをとらえよう」と役作りに励んだ。


 劇中ではキャシー・ベイツが演じているリチャードの実母ボビは、「5月、弁護士のワトソンと私は、イーストウッドのオフィスを見学させてもらった。部屋の壁にリチャードの写真が飾ってあったから、ポールの写真を並べてみたのよ。私は思わずワトソンを小突いたの。彼も私を見て、『まいったな、ポールにそっくりだ』って言った。その後、私とポールはハウザーに会ったんだけど、彼を見たとき、もうゾクゾクしちゃった。彼は明らかにいろいろな映像を見たんだと思う。だって歩き方までリチャードそっくりだったんだもの」と、ハウザーとの初対面がドラマティックだったと振り返る。一方のハウザーは、「ボビに会うことは、クリントに会うことよりも気後れした。だって彼女は僕が演じる人物の母親なんだから。僕を警戒してもおかしくなかったし…。でも彼女はそんなことはまったくなかった」と、実母の後押しが演技への原動力となったことを明かした。


 イーストウッド監督は、「ポールは、まさにこの役を演じるために生まれてきたようなものだ。彼はすばらしい俳優で、物腰をもっと柔らかくして、リチャードを実際そうであったように、勤勉で率直な男として演じていた」と太鼓判を押している。(リアルサウンド編集部)