トップへ

3部作最低のスタートとなった『スカイウォーカーの夜明け』 しかし、ディズニー的には想定内?

2019年12月25日 13:32  リアルサウンド

リアルサウンド

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(c)2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

 先週末の映画動員ランキングは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』が土日2日間で動員67万1000人、興収10億3700万円をあげて初登場1位に。初日から3日間の累計では動員101万9000人、興収15億7000万円。この数字は2019年の実写映画オープニング成績のトップではあるものの、2015年12月に公開された『フォースの覚醒』(最終興収116億3000万)のオープニング成績16億1934万円、『最後のジェダイ』(最終興収75億1000万)のオープニング成績16億1717万円と比べると微減。膨大な数のファンがいる『スター・ウォーズ』シリーズ、しかも今作はサーガ9部作の完結編なので、スタートダッシュは当然の結果だったわけだが、オープニング成績においてもその勢いには陰りが見える。


参考:J・J・エイブラムスの哀しき独り相撲 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』への同情


 同日に公開されたアメリカでのオープニング成績の下落度はさらに顕著で、『フォースの覚醒』の2億4,796万6,675ドル(約273億円)、『最後のジェダイ』の2億2000万9584ドル(約242億円)に比べて、今回の『スカイウォーカーの夜明け』は1億7738万3864ドル(約195億円)という成績。つまり、『フォースの覚醒』の約71%、『最後のジェダイ』の約81%という出足となった。もっとも、製作・配給の米ウォルト・ディズニーが公開前に掲げていたオープニング成績の目標は1億6000万ドルという『スター・ウォーズ』にしては随分と控え目な数字だった。配給会社は興行成績のポジティブな面ばかり切り取り、それを右に倣えで報道している日本のメディア環境(言うまでもなく、これまでも本コラムはその慣習に真っ向から反旗を翻してきた)のぬるま湯に浸かっているとわからないかもしれないが、海外ではメディアはもちろんのこと配給元でさえ、こうしたシビアな数字を公開前から表に出している。


 つまり、今回の『スカイウォーカーの夜明け』は、『スター・ウォーズ』サーガ42年に及ぶ一大フィナーレにあたる作品であるにもかかわらず、もともとあまり大きな期待をされていなかった作品であることがわかる。現時点で『スカイウォーカーの夜明け』の正確な製作費は報道されていないが、作品のスケールダウンはその撮影のフォーマットからも明らか。現行のシークエルトリロジーは1977~1983年のオリジナルトリロジーの質感をできるだけ再現するために基本的に35mmフィルムで撮影されているが、『フォースの覚醒』の各シーンで大々的に導入されていた65mmIMAXカメラでの撮影は、『最後のジェダイ』でそのシーン数が大幅に減り、今回の『スカイウォーカーの夜明け』ではまったくIMAXカメラでの撮影がされていない。また、IMAXでの撮影箇所に限らず、IMAX3Dの劇場で観ると一目瞭然なのは、同じトリロジーとは思えないほど『フォースの覚醒』に比べるとポストプロダクションにおけるコンバージョン(変換)による3D効果が弱いこと。この4年間ですっかり3Dブームが下火になったことを踏まえても、全体的に『フォースの覚醒』ほど周到には手間と時間がかけられていないのだ。


 批評家受けは良かったもののファンからは否定の声も多かった『最後のジェダイ』、批評家受けは悪いもののファンからは支持する声も少なくない『スカイウォーカーの夜明け』、という違いはあるものの、前作に続いて作品の評価がきっぱり割れている今作。興行分析コラムである本稿で個人的な評価を記すことは控えるが、そうした作品の成り立ちや、J・J・エイブラムス監督の再登板にいたるまでのドタバタからして、「熱狂的なファンから嫌われずに、とにかく予定通りにトリロジーを終わらせる」ことがすべてに優先された感もある『スカイウォーカーの夜明け』が、今回のような作品になったのは必然だったのかもしれない。(宇野維正)