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欅坂46、2019年は“痛み”を乗り越えさらなる成長へ 長濱ねる卒業から選抜制度導入までを振り返る

2019年12月25日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

欅坂46『黒い羊』(通常盤)

 年末特番の披露曲をほとんど被らせずに、カップリング曲なども織り交ぜながら独自の路線をひた走る欅坂46。12月27日放送の『MUSIC STATION ウルトラSUPER LIVE 2019』(テレビ朝日系)では「黒い羊」と「角を曲がる」(平手友梨奈ソロ曲)を、大晦日の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)では「不協和音」を歌うことが発表され、選曲からもこの年末にかける意気込みが伝わる。


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 振り返ってみれば今年も色々なことがあった。2都市に分けて開催したアニバーサリーライブや、いまや夏の風物詩となっている『欅共和国』、そして初の東京ドーム公演……など、会場の数も規模も前年より増し、新メンバーが本格的に活動に加わった。2015年のグループ結成から早くも5年目へと突入した2019年。この年が、彼女たちにとってどんな年だったのかを改めて振り返ってみたい。


●”土台作り”の一年
 今年の欅坂46の活動をひと言でまとめるなら、来年以降への”土台作り”に励んだ一年と言えるだろう。リリースを1枚にとどめ、主な活動はライブイベント/ツアーに限定。人気メンバーの卒業によりグループの規模の縮小が不安視された中で、場数を踏むことで着実に成長する道を選んだ。


 新曲を発表しないということは、既存曲の披露が重なることに他ならない。だがそれは、新しく加入した2期生メンバーにとっては有り難い方針である。フォーメーションや振り付けの複雑な楽曲が多く、覚えなければいけないことが膨大だからだ。おかげで既存曲のパフォーマンスにも磨きがかかり、メンバー間の絆も深まった。2月にリリースしたシングル「黒い羊」はグループカラーを象徴するような一曲で、9月には初の東京ドーム公演も開催し、活動を絞った中でもある程度の存在感を示せていただろう。


●長濱ねるの卒業と、2期生の成長
 今年7月に卒業した長濱ねるはテレビ番組にも多く出演し、個人写真集の売り上げもトップクラス。センター平手と対のような存在として、重要な役回りを与えられる人気メンバーのひとりだった。たとえば、「不協和音」には〈僕は嫌だ〉と叫ぶ箇所が3回ある。平手の鬼気迫るシャウトの後に、悲鳴にも似た長濱の鋭い声で繋ぎ、さらにラストの平手で大爆発するという畳み掛ける構成がライブの恒例となっていた。


 彼女の卒業によってぽっかりと空いた大きな穴。その穴を埋めるべく選ばれたのは2期生の田村保乃だった。実は『欅って、書けない?』(テレビ東京)の長濱を送り出す回で号泣していたのがこの田村。2期生を加えた新しい「不協和音」で長濱のバトンを受け取った田村は、殻を破るようにして〈僕は嫌だ〉と強く叫び、東京ドーム5万人の観客に鮮烈な印象を残している。


 2期生の成長著しく、春から夏にかけてのイベントラッシュを完走したことがスキルの向上に繋がった。すべての曲に参加するわけではないので一人ひとりの負担は軽いものの、1期生と比べるとはじめてのことばかりな上に、参加イベントがひとつ多い(『おもてなし会』)。彼女たちの今年の努力は来年以降、確実に数字になって実を結ぶだろう。


●成長のための”劇薬”=選抜制度を導入
 21人でスタートしてこれまで一貫して続けてきたのが全員選抜である。その間に何名かは卒業しているものの、メンバー全員で曲を披露する姿がもはやグループのトレードマークになっていた。そのため、次回の9thシングルで選抜制度が取り入れられることが発表されると、たちまちファンの間に衝撃が走った。欅坂46運営委員会委員長の今野義雄氏は番組内で「これからの欅坂46にとっては必要なステップ」とコメントし、キャプテンの菅井友香も「変わるためにはこれしかない」と発言している(『欅って、書けない?』より)。


 したがって、今後のシングルで毎回何かしらの波乱が起きることは想像に難くない。いわば、選抜制度は”劇薬”だ。しかし同時に、これからグループが成長していくための”布石”でもあることは間違いない。ついに選抜制に踏み切った2019年は、欅坂46史の中でも大きなターニングポイントととして位置付けられるだろう。


 リリースを減らして活動を限定したことでパフォーマンス向上やメンバー間の絆といった”土台作り”に励んだ一年。人気メンバーの卒業の裏で新メンバーの育成に徹した一年。制度を一新したことで今後のさらなる飛躍への”布石”を打った一年――。


 2019年は、ある面では”痛みの年”だった。しかし、今後グループがひと回り大きくなってから振り返ったとき、それが”成長痛”だったと気付くだろう。(荻原 梓)