テポドンの脅威を歌った「核攻撃サバイバー」などで知られるシンガー・ソングライターのあべりょうさんのYouTube動画広告がまた物議を醸している。小学生のイジメ問題をポップな曲調で歌ったもので、歌詞中にいきなり学校名やイジメの加害者、被害者の名前が出てくることから「悪趣味」といった批判が相次いでいる。
動画のタイトルは「正義のYouTube広告」。12月20日に投稿され、24日正午現在で900万回以上再生されている。
「同姓同名からしたら、いい迷惑」という指摘も
動画広告は、任意の動画を再生する前にランダムで再生される。有料会員に登録しない限り、最低でも数秒は視聴しなければ次の動画を再生できない仕組みになっている。
曲は小学校と小学生の名前を出し告発する歌詞から始まる。
「日立市立上諏訪小学校5年生の〇〇〇〇が××××をイジメています」
「豊田市立羽布小学校6年生の△△△△が□□□□をイジメています」
同姓同名の人がいる可能性があるのでここでは伏せ字にしたが、未成年どころか小学生の名前をフルネームで出している。コメント欄でも
「個人情報をネットに晒して大人数で叩く事を正義とは言えない」
「同姓同名からしたら、いい迷惑」
と問題視する人が多い。前奏がなく、いきなり歌が始まるため、半強制的に聞かされることにいら立つ声もあった。
ただ、ここで名前を挙げられた小学生は実在していなさそうだ。校名の挙がった小学校2校は2019年現在、存在していない。「日立市立上諏訪小学校」はかつて茨城県にあったが、1962年に別の小学校と統合。「豊田市立羽布小学校」についても、現在の愛知県豊田市にあった旧下山村立羽布小学校が2003年に別の小学校と統合し、閉校となっていた。
いじめ加害者を東京五輪に合わせて「YouTube広告でぶっ飛ばす」と予告
「正義のYouTube広告」は、イジメ加害者、被害者とされる実名を公表した後にこう続く。
「だからボクは東京オリンピックの開会式の朝に 正義のYouTube広告をぶっ放すぜ」
「205カ国の参加国の数だけイジメている奴を 正義のYouTube広告でぶっ飛ばすぜ」
東京五輪の開会式は2020年7月24日に新国立競技場で開かれる予定。字面通りに理解するならば、この日に合わせて、205人のイジメ加害者をYouTube広告によって"ぶっ飛ばす"と予告している。今現在、誰かをいじめている子どもを牽制しているのだろうか。さらに
「イジメられている奴らはあともう少しだけ 耐えておくれ」
「正義のYouTube広告でオマエを必ず 解放してやるぜ」
と力強く宣言して1番が終わった。
真偽不明なのに個人情報を拡散する"正義マン"を皮肉っている?
曲の2番は、イジメ被害者の周りに向けた歌詞から始まる。スウェーデンの教科書の「イジメを見たら、すぐに匿名で公にして助けを求めろ」という文句を紹介するほか
「彼の命を助けられるのは 目撃した君だけだぜ」
と呼び掛ける。
ラストの大サビでは転調し、曲を盛り上げながら「文科省初等中等教育局が対応するまで 正義のYouTube広告をぶっ放すぜ」などと歌い上げ、ようやく2分50秒ほどの曲が終わった。
無音になった後には約10秒にわたり、文科省が設置している「24時間子供SOSダイヤル」の電話番号が画面に表示される。ちなみに、この番号は同省のページで確認したところ、実在する番号と同じだった。
動画広告を見た人からは
「偽善者ですか (中略)やり方間違ってるかと……」
「マジで人権無視した晒しだよね」
と不快に感じた人からの声が多かった。一方で「真偽がわからないのにネットで個人情報を拡散する正義マンを皮肉る歌なのだが」とあえて実在しない校名、児童名を使うことで、ネット民を騙した皮肉と受け取った人も一定数いたようだ。
あべさんの動画広告をめぐっては、2018年にも子どもの性的虐待を歌った歌詞に「直接的すぎる」などと批判が殺到し、物議を醸していた。