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WANIMAの黄金期はここからだ! 絶好調の『Everybody!!』チャートアクションから紐解く

2019年12月24日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

WANIMA『Everybody!!』

参考:2018年1月29日付の週間CDアルバムランキング(2018年1月15日~2018年1月21日付・ORICON NEWS)


 キタコレ! というのはこういうタイミングで使う言葉なのだろうか。


 「はぁ? ずっと前からキテるよ」と呆れ顔のパンクキッズも相当数いるだろうが、もっと広義で、日本のロックミュージック、ひいてはポップミュージックという視点でも、いよいよWANIMAがキテいる。


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 ……という文章を、1stアルバム『Are You Coming?』の発売によせて書きました。約二年半前、2015年11月のこと。インディーズで出たこの作品は、初週2.3万枚でチャート4位にランクイン。ほぼ無名の新人バンドとしては十分な「快挙」でしたし、その後時間をかけて累計8.8万枚までセールスを伸ばしました。冒頭の原稿を書いた私もおおいに満足したものです。ほらほら、言った通りになったでしょう? と。


 ごめんなさい。見誤っておりました。私のイメージはスケールが小さすぎたし、WANIMAが追いかける夢はもっと途方もないものだった。それを証明する今週のチャート。メジャー1stフルアルバム『Everybody!!』はなんと12.6万枚セールス。発売から一週間のうち、5日間はデイリーチャートのトップを奪取し、当然のように自己最高位の1位に輝いております。


 また、オリコンニュースによると、『Everybody!!』は週間デジタルアルバムランキングでも初週1万5225DLで1位に初登場。CDアルバムとデジタルアルバムで同時に1位を獲得したのは、米津玄師の『BOOTLEG』以来だそうです。


 前回の当コラムでは、音楽動画ランキング(YouTube Rewind発表)1位となったDAOKO×米津玄師の「打上花火」に触れ、いまのオリコンランキングは「どれだけコアファンを抱えているか」の目安であり、若い世代を中心に「広く聴かれていること」とは別の話だ、という記事を書きました(参考:安室奈美恵は“200万枚を売り上げた最後のアーティスト”となるか? 2017年最終週チャート分析)。その流れでいえば、今のWANIMAは「12万人以上のコアファン」を抱えつつ、パッケージを必要としないライトユーザーにも「広く聴かれている」状態。要するに、本当にキテいるし、大ブレイクしている。ここからが黄金期と言ってもいいでしょう。


 ライブハウスで獲得した3万人弱のファンが『Are You Coming?』を初週に買い求めたのだとすれば、今回『Everybody!!』に飛びついた12万人は、主にテレビでWANIMAと出会ったはず。au三太郎シリーズCM曲「やってみよう」を筆頭に、ドラマ『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)の主題歌「ヒューマン」、そして『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)も含めて多くの音楽番組で生演奏された「ともに」など、昨年のWANIMAはテレビメディアを意識的に攻めていきました。その結果がこんなにもわかりやすく出るのかと、なんだか目眩のする思いです。


 「テレビの影響力も昔ほどではない」といった、いかにもわかったふうな論調を、WANIMAはバンドのパワーひとつで壊しました。もちろん、ただ呼ばれるがまま露出していたわけではないのでしょう。NHKで放送されたドキュメンタリー『WANIMA 18祭 1000人のシグナル』が特に秀逸でしたが、WANIMAが何のために歌い、誰に対してエールを送っているのか、なぜあそこまで笑顔でいられるのか、そういうバンドのコアがよくわかる内容でした。「下手にテレビに出ると誤解される」とデメリットで考えず、マスメディアで自分たちの個性を活かすにはどうすればいいか、その可能性のみを熟考したのだと思います。笑顔の裏にある戦略の上手さ。これまたWANIMAの魅力です。


 『Everybody!!』はまだまだ売れるでしょう。それだけの訴求力と即効性を備えた曲ばかり。いったいこのモンスターバンドはどこまで行くのか。引き続き、興奮しながら追いかけていきます。(石井恵梨子)