トップへ

気分はナポレオン! ランボルギーニで雪のアルプスに挑戦

2019年12月24日 11:32  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ランボルギーニから雪のアルプスでのクリスマスドライブに誘われた。クルマは「アヴェンタドールSVJ」など、同社の最新モデルを中心とする贅沢なラインアップ。ナポレオンが馬(ロバ?)で超えた極寒のアルプスに「ファイティングブル」(暴れ牛)で挑んだ。

「我々のホームグラウンドであるサンターガタへ、ようこそ。そして、ランボルギーニが提供する全てのモデルレンジに乗り、スペシャルルートを走る2日間のメディアトリップ“クリスマスドライブ”に参加していただき、2019年の弊社の成功をお祝いしましょう」

12月初旬、こんな魅力的なエアメールがイタリアから届いた。ボローニャ郊外サンターガタにあるランボルギーニ本社をベースとする国際試乗会の招待状だ。行程は2泊3日。初日の午後からは本社に併設された博物館と工場を見学し、工場内の特設ディナー会場での歓迎会に参加した。翌日からの2日間は、350キロ先にあるイタリア北部のアルプスに向かい、スノーロードの走破に挑んだ。

用意されたクルマは、こういったシチュエーションにぴったりのスーパーSUV「ウルス」(4台)をはじめ、スーパースポーツカーのトップモデルであるV型12気筒(V12)エンジン搭載の「アヴェンタドールSVJ」(1台)、V10エンジン搭載の「ウラカンEVO」(スパイダー含め4台)というランボ最新のモデルたち。参加者は本国イタリアのメディアをはじめ、中国「カー&ドライバー」誌のDavid氏(初日にペアを組んだ)、ロシア「オートパノラマ」誌のワシーリ氏、カナダのTV局女性記者、ドイツの超イケメン記者、そのほかに米国、スペイン、日本からの筆者など、今年の販売台数が良好な上位8カ国からやってきた12名のジャーナリストたちだ。

「ファイティングブル」(暴れ牛)のスーパーカーで雪のアルプスに挑むという今回のイベントは、200年ほど前、軍隊を引き連れて馬(実際はロバだったらしい)でアルプスを越えたナポレオン・ボナパルトの行軍に似て、チャレンジングかつスリル満点だ。
○ウルスで一路、アルプスへ

試乗のスタート地点は、我々の宿舎となったモデナの5つ星ホテル「Rua Frati 48」。また薄暗い午前7時、ホテル前にずらりと並ぶスーパーカーたちの姿は、それだけでスペシャルな見ものだった。

我々“日・中”アジアチームが担当したのは、4.0リッターV8ターボ(最高出力650ps/最大トルク850Nm)を搭載する白のウルスだった。最初のドライバーは、北京から来たDavid氏。あわただしくナビの設定を行い、道路の両側に駐車したクルマのせいでさらに狭くなった路地を抜けたり、朝の通勤ラッシュで大渋滞の市内をノロノロ走行したりして、アウトストラーダ「E22」に合流したころには、各車はてんでバラバラ。コンボイを組み、ハンディトーキーで連絡を取り合いながらの移動が予定されていたのだが、この辺りはさすが、イタリアンな試乗会である。

高速道路上では「ストラーダ」モードにしておけば、静かで快適なドライブが可能になるので、全く問題なしだ。遥か先にシルバーのウルスを認めたとき、ダイちゃん(前出のDavid氏を私はこう呼ぶことにした)はいきなり「スポーツモード」に入れ替え、V8の快音を発しながら一気に追いついた。イタリアの高速道路の制限速度は130キロ。数多くの大型トラックを追い抜いたが、日本のように追い越しレーンに入ってくることは絶対にないので、とても安心できる。

途中のサービスエリアで乗り換えをしながら約300キロ走った後は一般道へ降りて、この日の宿舎であるアルプスの麓ボルツァーノ地方の「Hotel Petrus」に到着。すぐにリフトに乗り換え、標高2,227mのスキーリゾート「Plan de Corones」に登る。360度の見晴らしを誇るヨーロッパアルプスの絶景に見惚れていると、なんとそこにはオレンジに輝く「ウラカンEVO」が待っていた。

3つ星シェフのNorbert Niederkofler氏が経営するレストラン「ALPINN」で料理とワインを楽しんだ後は、夕方から地元ブルニコ市内で開催中のクリスマスマーケットも体験。ドイツ語を話す地元の人たちと、ホットワインで乾杯しながら素敵な夜を楽しんだ。

○アヴェンタドールとウラカンで雪道を走破!

翌朝は、夜明けと共にアルプスのワインディングに挑戦。筆者のクルマはなんと、あの「アヴェンタドールSVJ」だと告げられた。全長4,943mm、全幅2,098mm(!)、全高1,136mmのボディーサイズや、背後に装着された巨大なリアウイングもそうだが、背中で咆哮する最高出力770ps/8,500rpm、最大トルク720Nm/6,750rpmの巨大な6.5リッター自然吸気V12エンジンと7段AMTシングルクラッチトランスミッションを、果たして雪と氷のワインディングで制御できるのか、ちょっと心配になる。

タイヤはピレリのスタッドレス「SOTT ZERO3」で、リアタイヤのサイズは355/25R21。一体、いくらするのだろう。停止状態から時速100キロまでの加速(ゼロヒャク加速)は2.8秒、最高速度は時速350キロ以上。デビュー当時、ニュルブルクリンク北コースで6分44秒台という記録をたたき出し、量産車最速を誇ったこのクルマで、筆者は「ストラーダ」モードに設定し、ATモードで恐る恐るアクセルを踏み込んだ。

アルプスのV字谷の路面は絶えず日陰になっているため、雪というよりもガチガチのアイスロードに近い。トレッドの幅が合わず、左右どちらかのタイヤが轍とズレるので、そのたびに車体が持っていかれる。目線が低いため、眼前に迫る雪の壁やガードレールとキスしてしまわないか、心臓が喉まで上がってくる。しかも、アヴェンタドールは自動変速時に「どっこいしょ」というほどの大きなタイムラグとショックがあり、変速が終了した時の車体の動きに身構えてしまうほどだ。やはり、このクルマはサーキットでしか本領が発揮できないのかもしれない。

オーストリアとの国境に程近い「Riva di Tures」にたどりついたころにはヘトヘトになり、シザースドアを上げてクルマを降りた時は、無傷でここまでやって来れたことにホッとした。でも、こんなファンタスティックな体験を授けてくれたランボルギーニ という会社には、感謝しかない。

午後から乗ったのは、イエローの「ウラカンEVOスパイダー」。背後に搭載する自然吸気V10エンジンは、最高出力640ps、最大トルク600Nmを発生し、ゼロヒャク加速3.1秒、最高速度325キロを実現するオープンモデルだ。すでにさまざまなシチュエーションで何度も乗ったウラカンの高性能バージョンだが、シフト制御やボディーのサイズ感が馴染みやすく、筆者が最も好きなスーパーカーでもある。

アヴェンタドールから乗り換えたという安心感と、走行中でも17秒でオープンにできるイージーさ、体にピタリとフィットするバケットシートとシートヒーターにより、寒さを感じることは全くなく、アルプスの景色を眺めながらのドライブを楽しんだ。

ウラカンEVOには、車両がドライバーの次の動きとニーズを読み取る「LDVI」と呼ばれる四輪操舵システムが組み込まれている。「スポーツ」モードを選択し、広大な雪の広場でステアリングを切ったままアクセルを踏みつけると、四輪ドリフト状態をキープしながら思い通りの定常旋回ができるのだ。ファイティングブルで豪快に雪煙を巻き上げながら、至福の瞬間を味わった。

数時間にわたって雪のアルプスロードをドライブしたあとは、350キロ先にあるサンターガタのランボルギーニ本社へ向け、全車が隊列を組みながら帰路につく。対向車は笑顔やパッシング、クラクションなどで我々の姿を面白がってくれる。

しかし、我々を楽しませてくれたスーパーカーたちが、今後も同じ姿で生き続けられるほど、世界の環境は甘くない。こうした状況に対しては、ランボルギーニも会社としてすでに対応しつつあるという。本社工場や博物館見学では、ランボルギーニのサステナビリティーに関する見解をじっくりと学ぶことができた。その点については別稿で紹介する。

○著者情報:原アキラ(ハラ・アキラ)
1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。(原アキラ)