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年末企画:キャサリンの「2019年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 “適切な話数”での舵取りがより重要に

2019年12月24日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『フリーバッグ』 シーズン1~2、Amazon Prime Videoにて独占配信中

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2019年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優・女優たちも紹介。2018年に日本で放送・配信された作品(シーズン2なども含む)の中から、第7回の選者は、海外テレビシリーズウォッチャーのキャサリン。(編集部)


1.『フリーバッグ シーズン2』(Amazon Prime Video)
2.『チェルノブイリ』(スターチャンネルEX)
3.『ザ・ボーイズ シーズン1』(Amazon Prime Video)
4.『アンビリーバブル たった1つの真実』(Netflix)
5.『ボクらを見る目』(Netflix)
6.『キリング・イヴ シーズン1&2』(WOWOW)
7.『マーベラス・ミセス・メイゼル シーズン3』(Amazon Prime Video)
8.『POSE シーズン1』(FOXチャンネル)
9.『ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン3』(Netflix)
10.『メリー・アン・シングルトンの物語』(Netflix)


 編集部の規定により2019年に日本で放送、配信された作品(アニメーションは除外)、個人のルールとして該当シーズンは全話視聴済みの作品から10選とした。海外ドラマとしては勝負のシーズン2を乗り越え、安定のクオリティを維持している『マーベラス・ミセス・メイゼル シーズン3』や『ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン3』は、今回も当然のようにベスト10に入れてはいるが、その他の作品との差が大きく開いているかというとそうでもない。僅差でランクイン、というのが率直なところ。ベスト20としたいくらい選出に悩んだ年だった。


参考:Netflixはなぜ“クリエイター重視”を実現できたのか? 坂本和隆ディレクターが語る、独自の方法論


 『ゲーム・オブ・スローンズ』の長年の功績は称えつつも、一つのシーズンとして観たときの評価は難しくランク外に。しかしながら、このタイミングで作品を終了させたことについては英断だったように感じる。テレビドラマ製作者にとっては、長年シーズンを重ねることだけが最適ではなく、時代に合わせて(もしくは時代を牽引する側として)、適切な話数でストーリーを世に送り出す舵取りがより重要になっているように思うからだ。


 その中で1位に選んだのが今年手放しで絶賛した唯一の作品『フリーバッグ シーズン2』。クリエーター兼主演のフィービー・ウォーラー=ブリッジは、『キリング・イヴ』含め今年の顔と言ってもいいくらい旬な人物だ。エミー賞にも選ばれ、各方面で絶賛されてもなお、『フリーバッグ』の続編は作らないと明言しており、クリエーターが、クリエーターの思うとおりに作品を終えた好例だ。そして何といっても、シーズン2で登場したアンドリュー・スコット演じるセクシーな神父!


 例年以上にリミテッドシリーズも豊作。中でも実話に基づく作品の力強さが印象的だ。『チェルノブイリ』は、ヒドゥル・グドナドッティルの音楽が素晴らしい。ヘッドホンを付けての視聴がおすすめ。『アンビリーバブル たった1つの真実』は、『トゥルー・ディテクティブ シーズン1』ぶりに痺れる刑事ドラマだった。『ボクらを見る目』は若い俳優たちに活躍の場を与えたエイヴァ・デュヴァーネイ監督の手腕を実感。


 出演者の多様性も広がったのが2019年であるとも言える。『POSE シーズン1』はトランスジェンダー役として、トランスジェンダーの無名の俳優を起用。演技の経験が未熟だからこそ、劇中で目の色を変えて成長していく姿に心を打たれた。『メリー・アン・シングルトンの物語』も同様。60年代のサンフランシスコを舞台にトランスジェンダーを描いた第8話「小さな妥協」は、今年の海外ドラマの中でも屈指の傑作エピソードだ。


 最後にもう一つ言及しておきたいのが、コメディとドラマの境目が更に曖昧になっている点。近年、コメディの範疇で人生のほろ苦さ等、真面目なドラマと同じテーマを描く作品が増える中で、今度は逆にドラマの範疇でコメディ要素を効果的に活かす作品が台頭している。『キリング・イヴ シーズン1&2』、『キング・オブ・メディア(サクセッション)シーズン2』(今回執筆時点で全話放送終了していないためランキングには入れることができなかった)、『ザ・ボーイズ シーズン1』がその最たる例だ。強烈なツイストやクリフハンガーで引き付ける方法が多かった海外ドラマだが、そこに加え、真剣なドラマシーンで人間臭さが滲み出るコメディ要素を入れるなど、目の肥えた視聴者を飽きさせない次の段階に来ているように感じる。とにかく会話劇が巧いと感動しっぱなしであった。 (文=キャサリン)