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Little Glee Monster、CHEMISTRY、コブクロ……それぞれ異なるコーラスワークの特性 『CDTV』SPを機に考察

2019年12月23日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

Little Glee Monster『I Feel The Light』(通常盤)

 12月23日に放送される『CDTVスペシャル!クリスマス音楽祭2019』(TBS系)に、高い歌唱力とハーモニーが武器のアーティスト、Little Glee Monster、CHEMISTRY、コブクロが出演する。そこで本稿では、この3組のコーラスワークの魅力を考えていきたい。


(関連:Little Glee Monster「I Feel The Light featuring Earth, Wind & Fire」MV Short Ver.はこちら


●Little Glee Monster
 2人でハモる時とは違い、5人という大所帯でコーラスをするとなると本当に些細なズレや声質の違いで心地良さがなくなる。しかも彼女たちのような複雑なコーラスワークであればなおさらだ。一方で、ぴったりハマった時の“キタ!”という気持ち良さは何ものにも代えられない。Little Glee Monsterの楽曲には、この“キタ!”がずっと続くような感覚がある。R&B/ファンクのレジェントであるEarth, Wind & FireとコラボレーションしたEP表題曲「I Feel The Light featuring Earth,Wind & Fire」を例に取ってみよう。まずイントロ。後ろのシンセサイザーと溶け込むようなコーラスは人間の声もまた楽器の一つであることを改めて感じる。曲が始まって気付くのは、聴かせる部分と曲の盛り上げの部分の緩急だ。日本語歌詞の部分は全てメンバーたちのソロパート。短いパートではあるが、それぞれの声質の良さや表現力がわかる。一方で英詞の部分はLittle Glee Monsterの様々なコーラスが盛り込まれている。例えば、サビの〈I feel the light〉は、Little Glee Monsterらしいパンッと張った高音のメインと、それを支えながらも際立たせている細かなコーラスやユニゾンが楽しめる。さらに、ラストのサビ部分に入っている〈Tu tu tu tu feel alright〉〈tu tu tu tu hot tonight〉は、字ハモで厚みを出しつつ休符やリズムのとり方が完璧に揃っており、グルーヴを感じられる。以前、「みんなで目をつぶって、呼吸だけを手掛かりに声を合わせるという練習方法はよくやっていました」(参考:Little Glee Monsterが語る、信頼から生まれるアカペラの秘密とメンバー全員で描く未来の形)と語ったことがある彼女たち。練習を重ね、ひとつ上の境地へ達した彼女たちだからこそ、レジェンドとのコラボレーションが実現したのだろう。


●CHEMISTRY
 30代~40代の人であれば、彼らの2001年デビュー当時のことを鮮明に覚えているだろう。2012年に活動を休止し、ソロ活動に専念していた彼らだが、2017年に再始動。ライブを中心に精力的に活動を行ない、2019年9月25日には7年ぶりとなる8thアルバム『CHEMISTRY』を発売した。この作品を拝聴すると、あの頃感じた「一人ひとりの特徴は違うのに、2人が奏でるハーモニーは極上」というCHEMISTRYのオリジナリティが一切色褪せていないのがわかる。ブラックミュージックを引き立たせるそれぞれの歌声はもちろんだが、コーラスが絶妙なのである。CHEMISTRYらしいコーラスワークといえば、Aメロはそれぞれのソロ、Bメロは掛け合い、サビにハモリというスタイルだろう。曲の盛り上がりに合わせて彼らの歌声が重なっていき、リスナーの気持ちを盛り上げていくコーラスワークだ。とはいえ、ことCHEMISTRYの魅力は、構成の精巧さというよりも、堂珍嘉邦と川畑要という“楽器”が重なり合って生まれる音色にあるのではないだろうか。彼らのハーモニーは、聴き手の感情を揺さぶるものがある。そして、CHEMISTRYがハモりの美しさや楽しさを世間に広めた一組と言って間違いないだろう。


●コブクロ
 コンスタントに楽曲を発表しながら、新しい取り組みも精力的に行なっているコブクロ。2018年に結成20周年を迎えてもなお色褪せない2人の歌声は、多くの人々を魅了している。楽曲のほとんどを自分たちで制作しているとあり、コブクロのコーラスワークは曲の世界像を際立たせている役割があると感じる。例えば、2019年12月4日に配信された「大阪SOUL」。大阪マラソンの新公式テーマソングとなっている同曲は、爽やかかつ元気な雰囲気が特徴だ。その雰囲気を活かすためか、曲の大部分でやや高めで清々しい声質の小渕健太郎がメインを歌い、黒田俊介がハモリを担当。2人の声質が大きく違うコブクロにとって、コーラスはメインにとっての“味付け”的存在だ。コーラスは声量を極力小さくして厚みを出すことに徹底しているし、曲が進むに連れてコーラスが入っている割合が高くなっていき、勢いを感じることができる。ランナーの背中を押すようなメッセージが込められている同曲にピッタリの“味付け”がされているのだ。単にパフォーマンスとしてではなく、曲の表情を際立たせるためのコーラスワークを組む手法はコブクロならではだろう。


 リスペクトを感じざるを得ないのは、いずれのアーティストもそのハーモニーを聴けば一発で誰のものかわかること。『CDTVスペシャル!クリスマス音楽祭2019』では、そのオリジナリティ溢れるハーモニーにも注目して視聴したい。(高橋梓)