トップへ

強すぎる将棋YouTuber“アゲアゲさん”こと折田翔吾氏、本日運命の対局 新たな“キャリアの積み方”に迫る

2019年12月23日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

YouTubeチャンネル「アゲアゲ将棋実況」

 “将棋が強すぎるYouTuber”として人気を博すアマチュア棋士・折田翔吾氏が現在、プロ編入試験に挑戦している。3勝で合格が決まる5番勝負で、すでに1勝をあげている折田氏は本日12月23日、出口若武四段と対局。棋士編入に王手をかけられるか、注目が集まるところだ。


(参考:羽生善治vs藤井聡太の対局も再び!? AbemaTVで羽生の着想から作られた番組


 折田氏はチャンネル登録者3万5,700人(12月20日現在)の将棋系YouTubeチャンネル「アゲアゲ将棋実況」を運営するアマチュア棋士兼YouTuber。まずは、折田氏の経歴から簡単に紹介していきたい。


 ネット上で「アゲアゲさん」として親しまれている折田氏は、1989年生まれで現在30歳。小学6年生の時にネット将棋にハマり、中学3年生の秋にはプロ棋士になるべく「新進棋士奨励会」(以下、奨励会)に入会した。


 日本将棋連盟のプロ棋士養成機関であり、プロの将棋棋士になるための正規ルートである「奨励会」には、全国から選りすぐりの天才将棋少年が集結している。そこでプロ棋士(四段)になるには、三段昇段後、半年に1度、毎回30人ほどで争う「三段リーグ」を勝ち抜き、上位2名に入らなければならない。つまり、年間で4人しかプロ棋士になれないのだ。


 しかも、奨励会には「在籍できるのは原則26歳まで」という厳しいルールが設けられている。折田氏は、21歳の春に三段へ昇段し、それから「三段リーグ」で戦い続けていたのだが、ついにプロの壁を超えることができず、2016年3月、26歳の春に奨励会を退会した。


 奨励会退会後、折田氏はすぐに「アゲアゲ将棋実況」を開設。将棋連盟公認の将棋アプリケーションソフト「将棋ウォーズ」の実況プレイ動画や、歌いながら難解な詰将棋を解く動画など、その抜群の腕前と飾らない人柄を押し出したコンテンツを次々とアップロードし、将棋ファンから人気を集めていた。


 その一方で、アマチュアの大会に出場するなど、選手としても精力的に活動していた折田氏。アマチュアの大会で好成績を収めれば、プロが出場する公式戦に挑戦できる。その公式戦でプロ棋士と対局し、「勝率6割5分以上、10勝以上」の成績を残せばプロ編入試験の受験資格が得られるのだが、折田氏は今年8月に受験資格を獲得。その時にはYouTube上に「プロ編入試験の資格を満たしたお」という動画を投稿し「皆さんに応援をいただいて、このような状況を得られることができました。いつもありがとうございます」と、視聴者に向けて感謝の気持ちを伝えていた。


 企画、出演から編集までを一貫して手がける、YouTuberとしての活動は決して楽ではないが、常に将棋に触れながらファンとのコミュニケーションの中で発見を重ね、収益を得つつプロを目指すというのは、新たなキャリアの築き方だと言えそうだ。


 本当は競技に注力したいが、生活のために働かざるを得ない、という実力者もいるだろうし、あるいは、その競技の中では超一流だが、マイナーズポーツでマネタイズが難しいため継続するのが難しい、というケースもあるだろう。そのなかで、折田氏の活動は、そんななかでも本人の実力とタレント性で、その競技から離れず、動画活動で生活の基盤を整えることができる、という可能性を示しているのかもしれない。


(こじへい)