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2019年チャートを賑わせたアイドル/グループ作品を振り返る 時代の変化をはっきりと確認できた1年に

2019年12月21日 14:32  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド編集部

 基本的にこの連載では1位になったものについて書こうと決めているので、自分の担当週ではその週の週間シングルチャートの首位を記録した作品を取り上げるようにしてます(7月だけ体調不良によりスケジュールが入れ替わった関係で嵐のベストアルバムをピックアップしました)。したがって、自分が見てきたチャートの景色というのは、ほんの”上澄み”でしかないことを最初に記しておいた上で、では、今年筆者が取り上げた12の作品を、大まかに3つのカテゴリに分けて振り返ってみたいと思います。


#ジャニーズ
・亀梨和也『Rain』(5月27日付/https://realsound.jp/2019/05/post-365594.html)
・NEWS『トップガン/Love Story』(6月24日付/https://realsound.jp/2019/06/post-379211.html)
・嵐『5×20 All the BEST!! 1999-2019』(7月29日付/https://realsound.jp/2019/07/post-394626.html)
・関ジャニ∞『友よ』(12月9日付/https://realsound.jp/2019/12/post-457539.html)


 奇しくも元KAT-TUNのメンバー田口淳之介の逮捕報道があった週に発表されたランキングで首位を獲得した亀梨和也のソロ1stシングルや、錦戸亮が脱退した関ジャニ∞の新体制での初シングルなど、激動の年だったジャニーズですが、その中で面白かったのが、すでに活動休止を宣言している嵐が最も野心的な活動に徹していたということです。渦中の、ならぬ、文字通り“嵐の中の”彼らが、サブスク解禁&SNSの積極的な活用を見せ、時代の変化へと適応していく姿勢にようやく山が動いた感のあった年でした。また、別媒体でSHOWROOM代表の前田裕二氏にインタビューさせていただく機会があったのですが、彼のバーチャル・ジャニーズ・プロジェクト(VJP)にかける本気がビシバシと伝わってくる取材でした(参考:https://news.livedoor.com/article/detail/17350640/)。こうした新プロジェクトや、来年デビューを控えているSnow ManやSixTONESといったYouTubeにも力を入れている新世代のジュニアたちを軸に、ジャニーズは今後も、より時代に合った“男性スター”の在り方を模索しながら、さらに勢力を拡大していくのではないでしょうか。


 個人的には、A.B.C-Zのアルバム『Going with Zephyr』をよく聴きました。ダンスチューンで畳み掛ける序盤が素晴らしかったです。また、Prince時代の名曲「You are my Princess」が、King & Princeの1stアルバムにて音源化されたことも個人的に大きなトピックでした。


#秋元康関連
・NMB48『床の間正座娘』(3月4日付/https://realsound.jp/2019/03/post-326880.html)
・ラストアイドル『大人サバイバー』(4月29日付/https://realsound.jp/2019/04/post-354520.html)
・乃木坂46『夜明けまで強がらなくてもいい』(9月16日付/https://realsound.jp/2019/09/post-415845.html)
・日向坂46『こんなに好きになっちゃっていいの?』(10月14日付/https://realsound.jp/2019/10/post-429559.html)
・=LOVE『ズルいよ ズルいね』(11月11日付/https://realsound.jp/2019/11/post-442828.html)


 坂道シリーズへと人気が移り変わった近年の流れにあっても、依然として48グループの売り上げは根強く残っていて、さらにラストアイドルや=LOVE(指原莉乃プロデュース)といった新興のグループも人気上昇中です。デビュー初期の路線を彷彿とさせるNMB48のシングルから、盤石の人気を誇る乃木坂46による世代交代を予感させるシングル、坂道全体としての大きな胎動を感じさせる日向坂46のシングルまで、それぞれのグループにそれぞれのサイクルや文脈があります。諸々の不祥事等でリリースの止まっているNGT48やIZ*ONEが再始動すれば、まだまだ全体としての規模は拡大していくでしょう。


 そんななか、個人的に一番刺さった曲はSTU48の「風を待つ」でした。AKB48の「11月のアンクレット」や「心のプラカード」あたりの系譜を継ぐ48版の大瀧詠一歌謡で、瀬戸内の爽やかな気候を感じ取れる名曲です。〈君〉と離れ離れになり喪失感に苛まれる主人公が桟橋で風を待つというモチーフは、どことなく自分たちの現状を静かに達観しているようで、どうしても惹きつけられてしまう一曲でした。また、今年はシングル1枚のリリースに止まった欅坂46ですが、9月に開催された初の東京ドーム公演には感激しました。衝撃のデビューからここまでの濃密の4年間を、一度ここでひと区切り付けたようで感慨深かったです(参考:https://realsound.jp/2019/09/post-418280.html)。


#第三勢力
・Aquors『僕らの走ってきた道は…/Next SPARKLING!!』(2月4日付/https://realsound.jp/2019/02/post-313600.html)
・祭nine.『有超天シューター』(4月1日付/https://realsound.jp/2019/08/post-403454.html)
・BEYOOOOONDS『眼鏡の男の子/ニッポンノD・N・A!/Go Waist』(8月19日付/https://realsound.jp/2019/08/post-403454.html)


 上記2つのカテゴリに属さないものを第三勢力とすると、その内、アニソン市場は大きな存在感があり、その中でもμ’sの後継であるAquorsはシーンのアイコン的存在と言ってよいでしょう。作品自体も生録音にもこだわっていて印象的なリリースでした。その他、『アイドルマスター』もランキング常連ですし、『あんさんぶるスターズ!』や『アイドリッシュセブン』、『ヒプノシスマイク』といった女性向けコンテンツのキャラソンも上位に食い込むことが珍しくなくなってます。「ようこそジャパリパークへ」以来となる新たなムーブメントを、来年はこのシーンから期待したいところです。


 数多くいるダンスボーカルグループの中でもBOYS AND MENの弟グループ、祭nine.は最も勢いのあるグループのひとつと呼べるでしょう。東海地方を拠点とする地域性を持ちながらも爆発的な人気を獲得できたという、ある種、ご当地アイドルの新しい成功例を作り上げた彼らですが、全国的なレベルの人気とまではまだ至ってない印象です。グループカラー的にも、今後の活動次第ではDA PUMP級のブレイクも可能だと個人的には思っているので、来年以降の彼らのさらなる活躍に期待します。


 ハロー!プロジェクトから今年デビューしたBEYOOOOONDSも注目の存在です。演劇を特徴としたグループで、曲中や曲間に語りや演劇が挟まります。ハロプロなので楽曲のクオリティは折り紙付き。それに加えて、彼女たちらしいセリフを多用した躍動感のあるパフォーマンスが魅力となってます(参考:https://realsound.jp/2019/12/post-458194.html)。先輩グループの築いてきた伝統を下地としつつも、モーニング娘。「LOVEマシーン」を塗り替えるくらいの大きな一発を彼女たちからは見られそうな気がしています。


#時代の変化をはっきりと確認できた1年
 激動のジャニーズから期待の新人グループのデビュー作まで、今年も様々な作品で賑わったチャートでした。ニコニコ動画出身のグループやYouTuberといった時代を象徴する存在も登場し始め、時代の変化を感じます。バーチャルアイドルやVTuberといった従来存在しなかったような新しいタイプのアーティストがどれだけ頭角を現せるのかも要注目です。


 現在のCD売り上げは、たった1週で上位が入れ替わるゆえに、むしろ今人気のアーティストを週替わりで確認できる日めくりカレンダーのような様相を呈してます。今後もこのような傾向は続いていくでしょう。その中でオリコンは、昨年12月よりストリーミングランキングと合算ランキングの発表を開始しています。(参考:https://www.oricon.co.jp/news/2125667/)こうしたチャート側の進化により、アーティスト側の売り方も問われる時代がやってきたのだと思います。


 世の中の変化に伴いチャートも形を変え、そして大御所がそれに対応する姿勢を見せ、さらに時代を象徴するような新しい勢力も続々と現れている――2019年は時代の変化をはっきりと確認できた1年だったと言えると思います。(荻原 梓)