2019年12月19日 20:02 弁護士ドットコム
この夏、愛知県内で開催されていた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」(あいトリ)に対し、名古屋市が負担する3330万円の支出が適切かを検証する同市の委員会が12月19日、都内でスタートした。芸術監督の津田大介氏も傍聴した。
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あいトリでは、 従軍慰安婦を象徴する「平和の少女像」や昭和天皇の肖像を扱った作品などが出展された企画「表現の不自由展・その後」が物議をかもし、河村たかし市長が「国民に対するハラスメント」などと批判してきた。
河村市長は、あいトリ実行委員会の会長代行も務めていたが、天皇の肖像を扱った作品の展示を事前に知らされていなかったことや、問題発覚後、運営会議を開くよう求めたものの、対応してもらえなかった経緯を説明。
検証委員会の座長である山本庸幸・前最高裁判事も冒頭、「天皇の映像作品について、名古屋市は本番1週間前に初めて知らされた。本来は運営会議で話し合うものだが、内容を隠して、炎上させたのが実情ではないか。この経緯をどう考えるか」と問題を提起した。
あいトリで、名古屋市が予算執行を停止している負担金は3300万円。名古屋市の負担金交付決定通知書によると、交付の条件の一つに次のような記載がある。
「市長は、負担金の交付決定後、事情の変更により特別の必要が生じたときは、負担金の交付の決定の全部、もしくは一部を取り消し、またはその決定の内容もしくはこれに附した条件を変更する場合があります」
そこで、検証委員会では、この条件に照らし合わせ、表現の不自由展の問題が「事情の変更」などにあたるかが議論されたが、委員の間では意見が分かれている。
「交付を取り消すべき」という委員に対し、「トラブルはあったものの、トリエンナーレの開催という目的は達しているので、取り消しは難しい」とする委員もいた。
検証委員会では今後、表現の不自由展への評価など「表現の自由」については踏み込まず、「実行委員会と名古屋市の意思疎通」など、手続き上の問題がなかったかなどを、議論するという。
検証委員会終了後、河村市長は「負担金を払うのは難しいと思っている。納税者のみなさんが怒りますよ」とコメント。
一方、傍聴していた津田氏は、報道陣の取材に応じて、「前提となる事実に誤認がある。手続き上に問題があったというのであれば、説明するので、ぜひ検証委員会に呼んでほしい」と訴えた。
検証委員会は、「公共事業としての芸術祭のあり方」「負担金支払いに関する法的問題」「次年度以降の芸術祭との関わり方」について意見聴取のために設置。今後は、来年3月まで2回開催し、名古屋市が負担する費用について検討する。