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ITZY、チョンハ、MAMAMOO……新たなガールクラッシュコンセプトに挑んだK-POPアーティスト

2019年12月16日 11:42  リアルサウンド

リアルサウンド

ITZY『IT'z ICY』

 2019年、K-POPシーンでは様々な女性グループがガールクラッシュのコンセプトに挑んでいた。昨今の日本でもフェミニズムが台頭する中で、ガールクラッシュなK-POPグループに注目が集まるようになってきている。彼女たちのクールなパフォーマンスはどれも自己肯定感が高く、リスナーにとっても憧れの的のようになることが多いが、 同時にその中でも様々な“私らしさ”が存在することも証明してくれたように感じる。そこで今回は、ガールクラッシュコンセプトの中でも特に今年目立っていたアーティスト3組を取り上げたい。


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 2019年にガールクラッシュの新しいムーブメントを築いたのは、TWICEの妹グループとして今年2月にデビューしたITZYだ。デビュー曲「DALLA DALLA」のインパクトはたちまち話題になり、YouTubeのMV再生回数も1億回を超えている。彼女たちがガールクラッシュとして新しかった点は、非常にポジティブであったことだ。それまでのガールクラッシュは男性に対する感情を歌うものが多く、クールさだけでなく攻撃的なイメージも強くあった。ITZYは自分の意見ははっきりと述べながらも、常に笑顔であり、キュートさも感じられる。7月のカムバックステージで披露した「ICY」でもITZYのメッセージは変わらず“私は私”でいることであった。ITZYの個性は、“私は私”でいることは普通であり、等身大のティーンとしてブランディングされているところである。そのためメンバー5人全員が、無垢で底抜けに明るく、芯のしっかりある女性という印象を受けるのだ。「こんな友達欲しかった」と思わせるような親近感も兼ね備える大型新人グループは、年末の各授賞式では新人賞を総なめする勢いだ。


 元I.O.Iメンバーのチョンハは、ソロデビュー3年目となる今年も独自の道を歩いた。2019年の初めに発売した「Gotta go」や、音楽番組で6冠を達成した「Snapping」の他にも様々なアーティストとコラボし、精力的に活動。大人数のアイドルグループが群雄割拠する中、ソロアーティストとして多くの人気を得ている理由は、小柄な身体から繰り出す歌やダンスのレベルが高く、その上セクシーさも溢れているからだろう。ガールクラッシュの中でもいわば“王道”をいくチョンハだが、ギラギラしたパフォーマンスの中でも歌では”あなた”を蔑むことはせず、自身もネガティブな姿を見せないのが印象的である。チョンハ 自身が大人しく謙虚であるといったイメージがあるように、パフォーマンスからも感じられるその上品さは、彼女の個性の一つとして輝いている。また、複雑な世界観を持つ楽曲も多いが、常にパフォーマンスを楽しむその様子は、独立した1人の女性という余裕を感じさせる。女性の細部にわたる心情や、”あなた”との情景を表現できるスキルを持つソロアーティストは稀少だ。バックダンサーを従える迫力のあるパフォーマンスも、他のアイドルグループに劣らない存在感を見せつけている。


 2019年は6組のガールズグループによるサバイバル番組『Queendom』への出演や最年少メンバーのファサのソロデビューなど、活動の目玉が例年より多くあったように感じたMAMAMOO。以前から実力派ガールズグループとしての立ち位置を確立していたが、女性ファンが多いこともあってか、今年発売した新曲「gogobebe」や「HIP」を通して女性のアイコン的な役割を果たし、人気をさらに集めた。今年のMAMAMOOがこれまでとは違う点として、一つは楽曲が比較的クラシカルなイメージの曲からダンスミュージック的なサウンド寄りになったことだ。特に「HIP」はMAMAMOO史上最もダンスが激しく、そこに高い歌唱力が加わったパフォーマンスは、自己表現することへの説得力が増している。もう一つは、去年までの情熱的なイメージではなく、大人としてのクールさや貫禄がアピールされるようになったことだ。デビューから5年が経ち、様々な苦難を乗り越え“私らしさ”を築いたであろうMAMAMOOが、メンバー各々の自由な表現方法を通して、リスナーが“自分らしさ”を見つけることを後押ししてくれているように感じた。また、最近印象的だったのは『MMA (Melon Music Awards) 2019』でのパフォーマンスだ。僅か7分ほどの持ち時間の中で、ファサのソロ曲「TWIT」とMAMAMOOのパフォーマンスとの間に「Ain’t no love in this party(このパーティ=授賞式に愛がない)」という文字がスクリーンに映し出された。これには様々な憶測が飛び交ったが、授賞式について自分たちの意見を示したと思われるMAMAMOOを支持する声はかなり多くあった。堂々としたその立ち振る舞いは、これからもさらなる影響力を持つかもしれない。


 このように、2019年はガールクラッシュコンセプトがより多様化し、“私らしさ”を考える選択肢が明示された非常に画期的な1年だった。また、ガールクラッシュが恋愛に必ずしも結びつかないテーマであるからこそ、女性だけのものではなく人類共通に強いメッセージ性を与えることも深く理解できた。その点で、来年はさらなる進化や革命が起こるかもしれない。それだけでなく、男性アイドルが表現する“自分らしさ”も着目していきたいところだ。(momotoxic)