10数年前の出来事ですが、筆者は子どもが2歳の時に夕方の満員バスに乗ってしまい、運転手に「ベビーカーは畳んで!」と冷たく言われたことがあります。荷物もあって子どもの体重は10キロ以上、その運転手は乗客から「運転が荒いよ!」と怒られていたくらい揺れがひどく、畳むのはかえって危ない状況でした。結局、到着まで畳みませんでしたが、非常に悲しく肩身が狭かったことを覚えています。
12月9日のキャリコネニュースで紹介した「電車、バスでのべビーカー『折り畳まない』に8割が賛成 中高年よりも若者のほうが理解」という記事が、ネット上で話題になっています。ガールズちゃんねるでは「空いてる時ならいいけどラッシュは邪魔」といった厳しい意見が多数寄せられるなど、13日までにコメント数が3000を超える関心の高さがうかがえました。(文:篠原みつき)
「赤ちゃんはみんなで育てるもの」をきっぱり否定する声も
記事では、国土交通省が発表した意識調査の結果として、公共交通機関でベビーカーを畳まないことに「賛成」「どちらかといえば賛成」が合わせて8割以上という結果を伝えています。年代別に"賛成派"の割合を比較すると、「10~20代」が9割を超え最も高く、「60代以上」(計83.2%)が続いたとのこと。つまり、若年層の理解が一番進んでいるという結果です。
ガールズちゃんねるでは「混み具合による」という意見を皮切りに、
「空いてる時ならいいけどラッシュは邪魔(中略)倒れてきた人に潰されても構わないならいいけど」
「畳む必要あるの!?私、大変なんだけど!!みたいな子育て様様にはお手伝いする気もおきん」
など、冷たい意見が続きました。「畳まなくてもいいけれど」としつつ、混雑時は危険であること、利用する人の態度に問題があると考える人が否定的なコメントを上げています。
また、「昭和の母なら、おんぶと抱っこで移動がデフォだからね」と、令和の時代に「何を言っているかな?」と感じてしまうコメントも。どうやら厳しい声を上げる人は「ベビーカーに足を轢かれた」「電車の揺れに耐え切れずベビーカーにぶつかりそうになったとき、母親に叫ばれニラまれた」など実際に不快な思いを経験した人に多いようでした。
中には「赤ちゃんはみんなで育てるもの」と書く人もいましたが、「なんで人の子供育てなきゃならんのだ。アホか」などと「子持ちや子どもへ配慮する」という考え方に、きっぱりと「NO」を突き付ける人も。仕事でワーキングマザーの分も過重労働していることを匂わせる声もあり、優しい気持ちになれない人が多いことに驚きます。
国土交通省は、相互理解を「お願い」している
ただ、NHKの記事についた「はてなブックマーク」では大半がベビーカーを畳まないことに理解を示して、「ひぇーまだ20%も『畳んで乗れや』って思ってんだ」と驚く人も。コミュニティによって意見の偏りはあるようです。
バリアフリー化が進み、ベビーカーや車椅子の方が外出しやすい環境になってきました。これに伴い、電車やバスでのトラブルが増え、国土交通省は公共交通機関でのベビーカー利用の安全性や利便性を向上させる協議会を設置しています。2014年には、基本的にベビーカーは畳まず利用できるとする指針を公表しました。
この中で同省は、ベビーカー利用者と周囲の意見を双方重視し、
「ルールを一方的に押しつけることをせず、緩やかなものとし、これを『お願い』としてとりまとめることとした」
として数種類の"お願いポスター"を用意しています。こうした取り組みは10数年前にはなかったことで、若い世代の理解も進んでおり、世の中は良い方向に行っているのかもしれません。