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福士蒼汰はなぜ“死の運命”が見えた?  『4分間のマリーゴールド』最終回で明かされた“命”のテーマ

2019年12月14日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『4分間のマリーゴールド』(c)TBS (c)キリエ/小学館

 沙羅(菜々緒)の運命が明らかになった『4分間のマリーゴールド』(TBS系)最終回。本作が掲げたテーマが美しく描かれた。


 交通事故で心肺停止になってしまった沙羅は、みこと(福士蒼汰)に心臓マッサージをしてもらい、なんとか命を取り留めた。しかし意識が戻らなく、自発呼吸もできないままでいた。沙羅の姿に、廉(桐谷健太)も藍(横浜流星)も落ち込んだまま日々を過ごす。しかし花巻家は、“沙羅だったらどうするか”と互いに声を掛け合い、次第に前を向けるようになっていった。みことは、1カ月休みをもらった後、救命士の仕事に復帰する。しかしその現場で、自殺をしようとした人を止めて私的な思いを話してしまったため、上司からしばらく出勤を控えるように言われてしまった。


【写真】クランクアップ時の花巻家の様子


 沙羅が死んでしまうのではないかという不安と、自分のせいで救えなかったという思いに苛まれるみことは、家でも取り乱してしまう。そんな姿を見かねた広洋(佐藤隆太)は、沙羅から預かっていた手紙をみことに渡す。そこには、救命士の仕事を続けてたくさんの命を救って欲しいと書いてあった。みことはその言葉で再び前を向く。沙羅の誕生日である運命の日のギリギリまで仕事をして、その日を迎えた。そして運命の日、沙羅は目覚める。


 みことの背追い込んだ苦しみや不安が痛いほど伝わってきた最終話。みことの力は、沙羅の運命が変化したことで使えなくなる。この力は、沙羅を救うためだけでなく、みことが救命士としてさらに一歩踏み込むために必要だった。そして花巻家を取り巻く多くの人にとって、命と向き合い、生きることを意識させる重要な役割を果たした。本作にとって“命”は重要なキーワードである。マリーゴールドの花言葉の「生きる」をはじめとし、タイトルの4分間には人の生死を左右する時間という意味が隠されている。そういった伏線が最後にすっきりと回収され、“生”にまつわる不安や苦しみを乗り越える家族の姿を描くことでまとまった。


 最終回で沙羅が救えるか不安になった時には、今までにないほど激しい福士の芝居から、ヒリヒリとした空気と共にみことが切羽詰まった様子が伝わってくる。さらに自殺しようとする人を諭す場面では、みことが抱えている個人的な心情を他者に強くぶつけることで、乗り越えようとする、みことなりの“あがき”を感じさせる。この作品に真摯に向き合った福士の誠実さがはっきりとわかるシーンとなっただろう。


 みことと沙羅の結婚式では、消防に携わる人が結婚式で着る制服姿に身を包んだみことが凛々しい笑顔を見せた。恋人と結ばれた幸せな新郎という姿だけでなく、みことが救命士としての仕事に誇りを持っている様子が伝わってきて、本作を象徴する綺麗なエンディングだっただろう。沙羅を演じる菜々緒のウェディングドレス姿や、新婦入場で廉と腕を組んでいる様子など、1話から花巻家を応援してきた視聴者にとって思わず目が潤んでしまうシーンが満載であった。本作は、みことと沙羅の恋愛を描きながら、家族の絆、命を向き合うことなど、人間が生きることに密接なテーマが描かれた。大切な人を思い出す心温まるストーリーとなった。


(Nana Numoto)