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WONKがChara、m-flo、bird、IOら豪華ゲストと共演 『WONK’s Playhouse』から感じたバンドの本質

2019年12月11日 12:32  リアルサウンド

リアルサウンド

『WONK's Playhouse』集合写真(撮影:木原隆裕)

 WONKがホストバンドとなり、豪華ゲストアーティストを迎える『WONK’s Playhouse』。昨年は堀込泰行や唾奇、MONJOE(DATS)、土岐麻子といったアーティストが次々登場し大きな話題を集めたこのスペシャルなイベントが、今年も12月2日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。


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 サポートメンバーの竹之内一彌(Gt)、小川翔(Gt)、真砂陽地(Tp)、そしてレーベルメイトのMELRAWこと安藤康平(Sax/Fl)と共に、ステージに登場した江﨑文武(Key/Pf)、井上幹(Ba/Syn)、荒田洸(Dr)。上手の荒田と、下手の江﨑が向かい合わせになるようなフォーメーションでジャズセッションを始めると、遅れて長塚健斗(Vo)が登場した。


 「みなさん、どうもこんばんは。WONKです。皆さんお寒い中、お越しいただきまして誠にありがとうございます。『WONK’s Playhouse』は1年ぶり? めちゃめちゃ楽しみにしていました」と挨拶すると、会場からは大きな歓声が湧き上がる。まずはこの8人編成で、WONKの楽曲「Orange Mug」と「Sweeter, More Bitter」を披露。ほんのりとサイケデリアが混じったスタイリッシュかつソウルフルな演奏でフロアを温めた。


 この日のゲストアーティスト、トップバッターは福岡出身のシンガーソングライターkiki vivi lily。今年6月にWONKやMELRAWも所属するレーベル<EPISTROPH>からリリースされた彼女のアルバム『vivid』は、プロデューサー陣に冨田恵一やSweet William、安藤康平らが名を連ねているが、その中からWONKがプロデュースを手掛けた楽曲「Brand New」を披露。The Jackson 5や<A&M>ポップスを彷彿とさせる、心躍るようなアレンジに乗ってキュートなウィスパーボイスで歌い始めると、フロアからは自然発生的にハンドクラップが響きわたった。


 続いては、今年デビュー20周年を迎えたbirdが登場。冨田恵一がプロデュースを手掛け、3月にリリースされた彼女の新作『波形』から、江﨑がbirdと共作した楽曲「GO OUT」を演奏した。抑制された幾何学的なボーカリゼーションが、サビで伸びやかに広がっていくそのコントラストは音源以上にダイナミック。この曲で初めて他アーティストへの楽曲提供を行ったという江﨑が、「めちゃくちゃ貴重な経験になりました。この曲、ライブでやるのめっちゃ難しくないですか? なるべく人と違う曲にしたいと思ったんですけど……WONKの良くないところが出ちゃいました」と自嘲気味に言うと、「いやいや、めっちゃカッコ良くて、楽しく歌えました」とbird。「(曲の中に)“Yeah!”がたくさん入るので、長塚さんと視線を離さないように、見つめ合って歌おうと決めてました!」と話すと、会場からはあたたかい笑いが起きた。


 『WONK’s Playhouse』は、ゲストアーティストとの和やかなトークも楽しみの一つ。中盤ではちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)を迎え、彼女がFUKUSHIGE MARI名義で今年10月にリリースした『JAPANESE ONNA』から、切なくも美しい名曲「スプーンの庭」を披露。『JAPANESE ONNA』は井上がミックスを担当しており、その制作エピソードで盛り上がった。「WONKは曲ももちろん好きなんですけど、音がめちゃくちゃいいと思ってて」とちゃんMARI。ちなみにこの日、PAエンジニアを務めていた染野拓はものんくるやodolなどのエンジニアリングも担当しており、『JAPANESE ONNA』のボーカルレコーディングやソロライブのエンジニアリングにも携わったという。「『あのゲス極のちゃんMARIさんから、お仕事が来た、ヤバイ!』って、Messengerのグループメールに幹さん送ってたもんね」と長塚が明かし、会場の笑いを誘った。


 もちろん、WONKのバンドアンサンブルと長塚のボーカルを存分に堪能するセクションも。後半にはJ・ディラのメドレーを披露。コモンの「E=MC²」や「The Light」など、ディラが手掛けた珠玉の名曲が次々と演奏され、タメの効きまくったグルーヴや満を辞してバーストするサックスソロに会場の熱気も最高潮へと達し、最後は全員でハンズアップで一体感に包まれた。


 興奮冷めやらぬまま、m-floのVERBAL(MC)と☆Taku(DJ)をステージに招き入れ、彼らの2001年のヒットシングル曲「come again」を披露。ミラーボールが回り出すとフロアはさらにヒートアップ。サビではウェーブも巻き起こった。続いて長塚が鍵盤の前に立ち、「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」の印象的なイントロのフレーズを弾き始めると、フロアからはどよめきが。そしてステージ脇からCharaが笑顔で現れると、悲鳴にも似た大歓声が巻き起こった。さらに、ライブの翌日にリリースされたCharaと荒田の初コラボ曲「愛する時」を、この日初披露。クリスマスっぽさの溢れる、暖かなアコースティックソウルに全員が酔いしれた。


 本編最後はWONKとサポートメンバーの総勢8名で「Small Things」を演奏。鳴り止まぬ拍手の中、アンコールでは「Apartment」と「Cyberspace Love」を披露し、この日のステージに幕を下ろした。


 楽曲提供やプロデュース、レコーディング&ミックスエンジニアリングなど、様々な形で他アーティストと積極的にコラボレートしながら、自分たちのテリトリーを広げて来たWONK。この日のイベントは、そんな彼らの活動の全貌を網羅する意味でも、そして提供曲だからこそ見えてくる彼らの本質(ソングライティング能力、アレンジ力、そして演奏力)を知る意味でも、そしてゲストアーティストを入口にWONKの世界へと入っていく「WONK入門編」という意味でも、非常に意義の深い内容だった。(黒田隆憲)