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iPhone 12は5G対応&上位モデルは高速5G対応? Qualcomm社長「Appleとの関係が最優先」と発言

2019年12月06日 07:31  リアルサウンド

リアルサウンド

Qualcomm「Qualcomm Introduces the World’s Most Advanced 5G Mobile Platform」より

 次世代通信規格である5Gの話を耳にすることが多くなった昨今、次期iPhoneの5G対応をめぐる動きが活発化している。かつてはAppleと対立していたあのチップメーカーが、次期iPhoneに言及したのだ。そして、このメーカーが開発したチップの仕様を確かめると、5G時代のライフスタイルを垣間見ることができる。


(参考:徹底比較:Pixel 4 vs iPhone 11 Pro 顔認証とナイトモードは互角も、致命的な欠陥が……


・Qualcommとの蜜月
 テック系メディア『PC Mag』は4日、大手チップメーカーQualcommの社長が次期iPhoneについて発言したことを伝える記事を公開した。同社社長のCristiano Amon氏は、アメリカ・ハワイで開催した最新チップ発表会Snapdragon Tech Summitで「Appleとの関係が最優先事項」と発言し、できるだけ早く次期iPhoneをリリースしたいとも述べた。さらにQualcommとAppleのチップ契約は、1年や2年ではなく「複数年にわたる」ことも強調した。


 以上の発言は、Qualcommの5G対応最新チップ発表会で話されたというコンテクストを考慮すると、ふたつの思惑を含意していることがわかる。ひとつめの思惑は、iPhone 12になるとも噂されている次期iPhoneは、ほぼ確実に5G対応になるということだ。というのも、QualcommにとってAppleこそが同社製5G対応チップの最大の顧客だからだ。もうひとつの思惑は、QualcommはAppleとの関係を完全に修復して蜜月関係に築くことにしたことだ。実のところ、この2社は特許契約をめぐって対立していたので、一時は2020年の5G対応iPhoneリリースが危ぶまれていたのだった。しかし、今年4月に電撃的に和解が成立し、一気に状況が好転した。


 ちなみに、AppleはQualcommとの関係が悪化していた頃、スマホ用チップを大手チップメーカーIntelから調達していた。そして、Qualcommとの和解成立後の今年7月、AppleはIntelからスマホ用チップ部門の買収を発表した。それゆえ、Appleは5G対応チップに関しては死角のない盤石の体制を構築したと言えよう。


・4モデルをカメラと通信規格で差別化
 iPhone 12に関しては、5G対応を含めて様々な情報が飛び交っている。Apple製品専門ニュースメディア『appleinsider』は2日、iPhone 12に関する最新情報をまとめた記事を公開した。その記事によると、iPhone 12シリーズは現行の3モデル体制よりさらに1モデル多い4モデル体制になる。それらのモデルの画面サイズは6.7インチ、6.1インチモデルが2つ、そして5.4インチの3種類であり、そのすべてにOLEDディスプレイが実装される。4モデルはさらにカメラと通信規格によって差別化される。


 6.7インチモデルと6.1インチモデルのひとつは上位モデルと位置づけられ、iPhone 11Proのようなトリプルカメラに加えて被写体を3次元的に演算処理できるToFカメラを実装して、クアッドカメラを実現する。通信規格は5Gで広く採用されるsub 6GHz帯に加えて、大容量かつ高速な通信を可能とするミリ波にも対応する。もっとも、ミリ波は減衰しやすいという性質があるため都市部のみで利用可能となると見られている。


 もう一方の6.1インチモデルと5.4インチモデルは、iPhone 11のようなデュアルカメラを実装し、通信規格はsub 6GHz帯のみに対応する。


 なお2020年前半には、iPhone 12とは別にiPhone SE 2のリリースが予想されている。同モデルは4.7インチのLCDディスプレイを実装した現在のiPhone 8に近い仕様になるようで、廉価ながら恐らくは5G非対応となる。


・5G時代のチップ「Snapdragon 865 5G」
 ところで、iPhoneの5G対応を可能とするQualcomm社の最新チップ「Snapdragon 865 5G」とはどんなものなのだろうか。この疑問は、同社が4日に公開したプレスリリース記事を読めば解決する(トップ画像も参照)。2020年第1四半期から販売される同チップの最大の特徴は、圧倒的なグラフィック描画能力だ。その描画能力は、例えば照明表現に関してモバイルゲームであってもデスクトップPCゲームに匹敵する、とのこと。さらに2億ピクセルの画像や8K画質の動画の撮影と画像処理にも対応している。


 Snapdragon 865 5Gは、AI演算処理も実行できるように設計されている。近年話題になった被写体の顔を老けさせたり若返らせたりできる画像加工アプリには、GANと呼ばれるAIによる画像処理が活用されている。こうしたAI処理は非常に負荷の大きい演算処理のため、通常は画像データをサーバに送信して処理してもらった後、その結果だけを受け取るようにしている。こうしたなか、同チップはサーバを使わずにチップだけでAI処理が可能なのだ。こうした仕様により、音声や文字の翻訳のようなAI処理をサーバとの通信を介さずにリアルタイムで実行できるようになった。


 以上のような高性能を実現しながらも、Snapdragon 865 5Gは1日間の連続稼働時間に耐えうると言われている。


 5G時代には4K動画やゲームサブスクの利用が当たり前になると考えられる。そんな時代の普及は、Snapdragon 865 5Gを実装したiPhone 12シリーズが推進するのではないだろうか。


(吉本幸記)