2019年12月05日 20:32 弁護士ドットコム
フードデリバリー「ウーバーイーツ(Uber Eats)」の配達員でつくる「ウーバーイーツユニオン」が12月5日、東京都内で記者会見を開き、11月29日から実施された東京エリアにおける配送料改定の撤回を求めた。
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ウーバーイーツの報酬システムは、基本料金(×)ブースト(+)不定期の特別キャンペーン。ここからサービス手数料が引かれたものが配達員の手取りとなるが、11月29日から東京エリアで受け渡し料金などからなる基本料金がいずれも引き下げられ、中には6割カットされた項目もある。
ウーバーイーツユニオン執行委員長の前葉富雄さんは「ウーバーによる説明会では、配送料改定について企業秘密としか言われず、合理的な説明はなかった。納得できる理由を説明してもらいたい」と訴えた。
今回の配送料改定は11月20日、ウーバー側が配達員に対して送った一通のメールで知らされた。
メールでは、UberEats事業の日本法人化に伴い、11月29日から、店で商品を受け取った際の「受け取り料金」を300円→265円、注文者に商品を渡す「受け渡し料金」を170円→125円、店から配達先までの距離に応じた「距離報酬」を150円→60円(1キロあたり)に引き下げると説明があった。
ウーバー側はメールで「サービス手数料35%を10%に下げ、インセンティブを引き上げる」と説明しているが、ユニオンが改定前後で報酬を比較したところ、収入が約2割減った配達員もいたという。
11月25日から1週間、配達員を対象とする説明会が開かれたが、参加した前葉さんは「本社の社員は説明会に現れず、パートナーセンターのスタッフが応対し、細かい質問には答えられないと言われた」と話す。
ウーバーイーツユニオンは10月8日、配達員の補償や距離計算の誤りなどについてウーバージャパン株式会社に団体交渉を申し入れた。しかし、ウーバージャパンは10月18日、「配達員はオランダに所在するウーバーポルティエBV社と提携している」、「配達員は労働組合法上の『労働者』に該当しない」として、団体交渉を拒否した。
その後、ウーバーは10月29日、ウーバーポルティエジャパン合同会社を設立。ユニオンは11月25日、同社に対して団体交渉を申し入れたが、「配達員は、労働組合法上『雇用する労働者』に該当しない」として、団体交渉を拒否した。
ユニオン設立当初からユニオンに協力している川上資人弁護士は「団交拒否は不当労働行為だ」と指摘する。
川上弁護士は、判例上、労働組合法の「労働者」に当たるかは、(1)事業組織への組入れ、(2)契約内容の一方的・定型的決定、(3)報酬の労務対価性が認められるか、の3点から判断されるとし、「ウーバーイーツ配達員が労組法上の労働者に当たることは明らかだ」と話した。
東京ユニオンの関口達矢さんも「団体交渉は誠実な話し合いを求めるもの。それすらも拒否したウーバーの姿勢は容認できるものではない」とウーバー側の対応を批判する。
今回なぜこのような報酬改定が行われたのか。
前葉さんは「あくまで推測」としながら、「ウーバー側は説明会で『トライアル』という表現を使っていた。配達員がどういう働き方をするのか見定めながら、ウーバー側に都合のいいシステムを構築しようとしているのではないか」とよむ。
一方で「ウーバー側と敵対したい訳ではない」とも強調。「ウーバーの働き方をいいと思っているが、現場の配達員でないと分からない問題がある。それを経営側に聞いていただきたい。世の中にはプラットフォームワーカーの働き方の良いところと問題点を訴えて行きたい」と話した。
今後ユニオンは、労働委員会に不当労働行為救済の申立てをすることも検討しているという。