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病気で休職中に「ヨガ、パチンコ、お買い物」、外出はどこまで許される?

2019年12月05日 08:21  弁護士ドットコム

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先日まで、適応障害のため休職(傷病)していた女性が、「休職中、出かけていいかどうかが問題でした」と、弁護士ドットコムニュース編集部に相談を寄せた。女性は医師から「適度な運動は体調の回復のために必要」と指導されており、近所のヨガスタジオに行ったり、気分のよい日には電車やバスで出かけることもあったという。


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しかし「休職中の過ごし方については会社から指示がありませんでしたが、会社の同僚に会ったらどう言い訳しようかとビクビクしていました」と話す。



弁護士ドットコムにも、休職中の過ごし方をめぐって「体調のいい日は行動的になり、パチンコへ行ったり、買い物に出かけたりします。(うつが)しんどい時の反動なのか、行きたいのを抑えることができない」という相談も寄せられていた。



休職中の活動は、どの程度、制限されるのだろうか。原則、平日の日中など本来の勤務時間については自宅で過ごさなければいけないのだろうか。労働問題に詳しい佐々木一夫弁護士に聞いた。



●自宅療養中であっても「私生活の自由はある」

ーー休職中の活動はどこまで制限されるか



「休職とは、労働者に就労させることが適切でない場合に、労働契約を存続させつつ労働義務を免除することをいいます。休職には様々な制度が存在しますが、ここでは傷病休職の場合についてご説明します。



傷病休職は、使用者側が労働者の生活に配慮して、解雇を猶予し療養を支援することを目的とした制度です。



そのため労働者には休職期間中、療養に専念すべき義務があると考えられ、これを就業規則に明記している会社もあります。しかし一方で、療養中の労働者には、当然私生活の自由もあるので療養目的に明らかに反するといった事情のない限り、厳しい制約を課すことはできません」



●パチンコ、ヨガ「原則として問題はない」

パチンコやヨガなどに行くことは控えるべきでしょうか。



「買い物、パチンコ、飲み会、ヨガなどの適度な運動などは、健康な人でも日常生活上も行うことです。また、これらが療養に資することもあると一般的に考えられているので、体調に応じて休職期間中に行っても原則として問題ありません。



海外旅行等に関しても、度を超えたものでなければ問題はないと思われます。また、休職の性質上、労働義務は免除されていますから、勤務時間にあたる日中などであってもこのような行為を行うことができます」



会社側からの懲戒処分や損害賠償請求などの可能性はないのでしょうか。



「療養目的に明らかに反するような行動をした場合には、服務規律違反ということで懲戒処分や損害賠償請求等がなされる可能性はあります。



ただ、前述したように、原則として療養専念義務は私生活上の自由を厳しく制約することはできず、限られた場合にしか同義務違反とはなりません。ですから、会社が懲戒処分等を行ったとしても、その懲戒処分等が有効になるのも、相当限られた場面のみでしょう」




【取材協力弁護士】
佐々木 一夫(ささき・かずお)弁護士
弁護士法人アクロピース代表弁護士。東京都の神田と赤羽にオフィスを有し、主に企業法務、労働案件、交通事故、離婚、相続を扱っている。任意交渉のみならず訴訟案件を多く取り扱っており、法廷での訴訟活動に強みを持つ。

事務所名:弁護士法人アクロピース
事務所URL:https://acropiece-lawfirm.com/